ブログ

#40 ウォーミングアップにおける3つのポイントが選手を大きく育てる!!

最近、指導の流れからウォーミングアップはどうしたら良いですか?とよく聞かれることがあります。

そして、私達も何がベストな方法だろうかと日々、模索しながら活動しているのですが、ウォーミングアップ対しての考え方をまとめてみたのでご紹介させて頂きます。

すばり、ウォーミングアップにおける3つのポイントとは!!

⇒ ルーチン(ルーティン)化に伴うリスクを頭にいれておく

⇒ 個に合わせて組み立てる

⇒ 適度にこだわる

ルーチン化に伴うリスクを頭にいれておく

冒頭で書いた通り、指導先でウォーミングアップを作成して頂けますか?と相談を受けることがあります。勿論、教育及び、情報共有として一通りのウォーミングアップをお伝えさせて頂きますが、あくまでも各エクササイズは方法論であって、必ず実施しなければならないものではありません。とお話をさせて頂きます。具体的には、“ワールズグレーティストストレッチ” https://youtu.be/TVItENA9mEAを紹介したからといって、その選手がその時に必要がないと判断した場合は行う必要はないですよと話します。勿論、ルーチン化することでうっかり忘れを未然に防いだり、エクササイズを学習している段階では覚えるのに効果的かもしれませんが、それと同時にウォーミングアップ本来の目的を忘れてしまうリスクがあることにも目を向ける必要があります。つまり、ウォーミングアップをすることが目的になってしまわないようにパフォーマンス向上の為に今何が必要なのかを常に考えて内容を組み立てる必要があるという考え方です。

個に合わせて組み立てる

これは文字通りの意味で、各選手の年齢・性別・性格・ポジション・可動域・柔軟性・スピード・パワー・筋力 etcは様々でそれぞれに合ったウォーミングアップがあるという発想です。チームスポーツの場合には、フォーメーションのすり合わせ等で全員一緒に行う方が良い内容もありますが、全員で行うことで逆に効率を下げてしまっている可能性もあるます。今現在なんとなく行っている(昔から実施している。それが良いと思い込んでいる。Etc)ものについて再度考え直してみると新しい発想が生まれるかもしれませんね!

適度にこだわる

これについては、ルーチンの話と関連があるのですが、ルーチンを決めてしまった時点で、ウォーミングアップに要する時間も決まってしまいます。しかしながら、現実はどうでしょう、前の試合時間や天候の影響で開始時刻が延びたり、ウォームアップエリアの混雑や渋滞の影響で予定よりも悪い環境下で準備をしなければならなかったり、想定外のことが起こり得る可能性があります。予定のルーチンを実行できなかったことでイライラが募ると試合に集中できる確率も下がります。すべてのことを完璧にこなすことよりも、与えられた環境の中で最低限必要なことに優先順位をつけ、それ以外に関しては適度にこだわるというスタンスも必要かもしれません。

理想のウォーミングアップとは?

その日の体調、天候、試合スケジュール(時間)等、与えられた環境は目まぐるしく変化します。

そんな中、自身の状態(コンディション)に合った最適なウォーミングアップについて自問自答し、実行できる選手は成長し続け、最終的に成功する確率が高まると思います。結局のところ理想のウォーミングアップは存在せず、その日のパフォーマンスが良ければ、それが結果的に良いウォーミングアップだったということになり、そのウォーミンアップが明日も使えるかどうかはわからないということです。

まとめ

ウォーミングアップには様々な考え方があって良いと思います。但し、それ自体が目的にならないことが重要で、教育や情報提供として様々な引き出しを与えつつも、方法論に囚われずに自分自身の目標や目的から逆算して、今やるべきことを明確にし、それを実行できる選手が育つ環境を整えることが指導者/コーチの果たすべき役割の一つだと感じる今日この頃です。

PS

今日は何々をしま~す。前回は15分、今回は10分あげるから自分でアップしてみて!(動けなかったら自己責任で。。)というアプローチを使ったりします。

勿論、色々な方法論は伝えた上でですが(^^;

#39 ビーチで速く走ろう! とりあえず最終回!!

前回のブログから何だかんだ時間が経ってしまいました(;’∀’)

あれから色々と考えてみた結果、これがテッパンの走り方です!という答えはでず。。(スイマセン)

ただ、いくつか考えを整理してみたので前回からの内容も踏まえてご紹介させて頂けたらと思います。

前回のおさらいを踏まえて考えてみる

おさらい①

ビーチ(砂の上)では与えられた力が吸収された分、受け取れる力が少なくなり結果として平均速度が減少する。

上記から平均速度の減少を抑えるためには

ポイント①

吸収される力を出来る限り少なくすることで、受け取れる力が減少するのを抑える。

ポイント②

現状より大きな力を与えることで、結果的に受け取れる力を大きくする。

と考えることもできます。

おさらい②

ビーチ(砂の上)での接地は陸上に比べて、体幹の前傾と膝の角度が減少することで重心が低くなる。各接地のポジションにおける足関節の可動域は陸上に比べて大きい。

上記の現象がなぜ起こっているのか、可能性を考えてみました。(かなり主観的な考えではありますが。。)

なぜ、体幹の前傾が起こっているのか?

⇒足が砂に接地した後、重心移動と共に少しずつ足が沈み込む現象が起こり、最終的に力を伝えるポジションでは、砂面が斜め(スターティングブロックのようなイメージ)になっている=伝える力の方向が後ろ斜め下方向となり、

ポイント③

前傾ポジションをとった方が効率良く地面からの反力を受けとれる可能性が高いと考えられる。

注意:画像はイメージが伝わりやすいようにかなり前傾姿勢となっていますが、実際はそこまで前傾にはなっていません。

なぜ、しゃがみ込むような動きで(膝の角度が減少)重心が低くなっているのか?

⇒砂に足が接地した後、体全体が地面に沈み込む(外乱を受ける:制御系の状態を乱そうとする外的作用を受ける)ことでバランスが崩れることを想定し、

ポイント④

重心を下げることで外乱に対応してバランスをとるという体の姿勢制御が関係している可能性が考えられます。

バランスをとる際に腰を落とイメージ

なぜ、他各接地のポジションにおける足関節の可動域が陸上に比べて大きいのか?

ポイント⑤

重心移動と共に接地面が常に動くことから陸上よりも足関節が大きく動く必要があると考えられます。

まとめ

  結局のところ、ビーチ(砂の上)で速く走る為にこれがベストな方法です!という結論には達していませんが、各ポイントからいくつかのヒントを得ることが出来たのでは?と感じています。

ポイント①より

接地の際に足の指で砂をギュッと掴んだり、足を突き刺したりすることで砂地盤の密度を高める与えた力を受け取りやすくなる)ことが平均速度の減少を抑制できる可能性があると考えられます。

ポイント②より

お尻(臀部)、股関節屈曲筋群(主に腸腰筋)、膝を伸ばす筋(大腿四頭)、膝を曲げる筋(ハムストリング)の筋力強化により股・膝関節の屈曲/伸展パワーを上げることで、現状よりも受け取れる力を大きくすることで平均速度の減少を抑制できる可能性があると考えられます。

ポイント③より

体幹強化により前傾姿勢を保つ(体の重心を地面から力を受け取りやすい位置に置く)ことで地面から反力を効率よく前方向の推進力へと繋げることが出来そうです。

ポイント④より

接地の際に意識的に重心を下げることは安定した力発揮(不必要な重心の動揺を避ける)に必要不可欠なテクニックだと考えられます。但し、重心を下げることで余分にエネルギーを使う可能性がある為、ポイント②同様に筋力を強化する必要がありそうですね。

ポイント⑤より

重心移動と共に接地面が常に変化する為、陸上とは異なるテクニックで走る必要がありそうです。

PS

今後も何か現場で気づいたことやアップデートがあればご紹介させて頂きますね!

#38 ビーチで速く走る為のコツってなに!?その①

前回のブログでは、ビーチ(砂の上)で走るとなぜ足が遅くなるのか?について考えてみましたが、今回からビーチ(砂の上)で速く走る為にはどうしたらよいのか?について考えてみようとます。

前回のおさらい

ビーチ(砂の上)で足が遅くなる理由として下記2つの可能性が挙げられました。

*砂の上ではストライドの長さが短くなる。

*ビーチ(砂の上)では与えた力が吸収された分、受けとれる力が少なくなる。

ビーチ(砂の上)と陸上での動きの違い

実際にビーチ(砂の上)を走っている時の動きと陸上での動きを比べてみたところ、接地局面においてビーチ(砂の上)では陸上に比べ重心が低く、体幹が前に傾き(Figure 2)、足が離れる局面においては股関節の伸び(伸展)が少ない傾向にあるようです。(Figure 3) また、 中間位(Tmid)における股関節の角速度の減少が走速度の減少と関係があったようです。(Figure 4)

*点線が陸上、直線が砂の上

*(B)砂の上では膝の角度が減少する(よりしゃがみ込むような動き)ことから重心が低くなっていると推測。

さらに細かい動きの違いについて確認してみようと思います。

  • 股関節と膝関節の角度関係

足が着いた瞬間(Tdouwn)、中間位(Tmid)、足が離れる瞬間(Toff)ともにビーチ(砂の上)の方が股関節と膝関節がより曲がって(角度が小さい)います。

  • 足関節の角度

足が着いた瞬間(Tdouwn)、中間位(Tmid)、足が離れる瞬間(Toff)ともにビーチ(砂の上)の方が足が跳ねて(足関節の角度が大きい)います。

*こちらに関しては、ビーチサッカーの監督さんが足を刺すような感じで走っているとおっしゃっていたので実際の感覚と現象が一致しています!

最後に前回と今回の内容をまとめてみました。

ポイント①

ビーチ(砂の上)では与えた力が吸収された分、受けとれる力が少なくなることで、

流れ① 中間位(Tmid)における股関節のスイングのスピード(角速度)が遅くなる

流れ② 砂の上ではストライドの長さが短くなる(ピッチは変化しない)

流れ③ 結果として平均走速度が減少する。

※股関節の角速度の5–34% の減少は水平方向への速度の7-22%減少と一致。

ポイント②

ビーチ(砂の上)では接地の際の体のポジションが陸上とは異なる

 現象① 体幹が前に傾く

 現象② しゃがみ込むような動き(膝の角度が減少)で重心が低くなる

 現象③ 接地時の各ポジションの足関節の可動域が大きい(足首が跳ねる)

次回は、ポイント①とポイント②を踏まえた上でビーチ(砂の上)で速く走る方法について引き続き考えていきたいと思います。

PS

結局、次回につづくになっていましましたね(;’∀’)

参考文献

Alcaraz P. E.1, Palao J. M.1, Elvira J. L. L.1, Linthorne N. P.2. Effects of a sand running surface on the kinematics of sprinting at maximum velocity. Biology of Sports・February 2011

#37 ビーチ(砂の上)で走ると足が遅くなるのはなぜ?

ここ最近、全国のお天気ニュースでは桜の開花情報と共に暖かい日々が増えてきましたね。沖縄は全国で一番桜の開花時期が早い為、残っている桜はほんのわずかで、 春をすっ飛ばしていよいよ夏本番!といったところです。実際に沖縄県内のいくつかのビーチでは海開きがスタートしています。

今回はビーチ環境に恵まれた沖縄ならではの疑問、ずばり “ビーチ(砂の上)で走ると足が遅くなるのはなぜ?”について考えてみました。

陸上に比べて足が遅くなるのはなぜ?

100m,200m競技に参加レベルの選手(平均年齢21±6/男性5名/11.0±0.4秒、19±2/女性5名/12.6±0.3秒)が砂の上と陸上の上でそれぞれ30m走を走った際のデータがあるのでご紹介させて頂きます。

男女共に30m走の平均速度が砂の上では陸上に比べて男性で15.8%,・女性で12.4%減少という結果になりました。この結果に関してはみなさんの経験上容易に想像ができたと思います。

走速度=ストライド×ピッチとなりまずが、興味深かったことは、砂の上ではストライドの長さは短くなるもののピッチは陸上と大きく変わらなかったという点です。(個人的にはどちらも陸上に比べてパフォーマンスが下がっていると思っていました)

もし、ビーチ(砂の上)で陸上と同じパフォーマンスを保つ為にはピッチをあげないといけないということになります。

イメージとしては、陸上と同じように足を動かしているはずなのに前に進むことができないといったところでしょうか。
↓こんな感じ!?

砂の上ではストライドの長さが短くなることでゴールまでの歩数が増え、陸上に比べて余分にエネルギーを使うこととなります。発想を変えてみると、体に負担(負荷)がかかるという点では良いトレーニングになるということが言えるでしょう。シーズンど真ん中のトレーニングとしては、負担が大きくなる為、オフシーズンなどに取り入れると良いかもしれませんね。

なぜビーチ(砂の上)では前に進めないの?

少し物理の授業の復習になりますが、運動の第三法則で作用反作用の法則というものがあります。かなりざっくりと説明すると、ある物体に10の力を伝えると同時にその物体から同じ10の力を受けるという法則です。但し、物体が外力による移動なく、かつ歪まないことがポイントで、力を伝える場所が砂のように軟らかい場合は与えた力が吸収される分、受けとれる力が少なくなります。その為にビーチ(砂の上)では与えた力をそのまま受けることが出来ずに前に進めず(ストライドの長さが短くなる)に足が遅くなる(走速度の減少)という状況に陥ってしまいます。また、MID-STANCEにおける股関節の角速度の減少が走速度の減少と関係があったようです。(Figure 4) 与えた力をうまく受け取れなかったことで股関節の角速度が減少した可能性もありそうですね。

今回は、ビーチ(砂の上)で走るとなぜ足が遅くなるのか?について考えてみましたが、次回はいよいよどうしたらビーチ(砂の上)で速く走ることができるのか!?という点について考えてみようと思います。

PS

沖縄にはビーチ(砂の上)を走りまくっているチームがあります!

不定期ではありますが、選手と一緒にビーチでボールを蹴れるチャンスもあるので要チェックです☆

ビーチ(砂の上)を走るのがどれだけ大変なことか体感することができますよ(;’∀’)

http://www.solmarpraia.com/

参考文献

Alcaraz P. E.1, Palao J. M.1, Elvira J. L. L.1, Linthorne N. P.2. Effects of a sand running surface on the kinematics of sprinting at maximum velocity. Biology of Sports・February 2011

#36 筋の硬さを観測できる近未来の“ひみつ道具”とは??

今月から映画ドラえもんシリーズ「のび太の月面探査記」が公開されています。

ドラえもんに欠かせないのは、「こんなこといいな、できたらいいな~♪」を叶えてくれる未来の“ひみつ道具”ですよね。

今回はトレーニングの「こんなこといいな、できたらいいな~♪」を叶えてくれる超音波エラストグラフィという“ひみつ道具”をご紹介したいと思います。

超音波エラストグラフィは、

ストレッチ中に狙った筋が伸びてるか知りたいな~♪

トレーニング動作中に狙った筋が活動してるか知りたいな~♪

そんな夢を叶えてくれる“ひみつ道具”です。

 

ストレッチ中に狙った筋が伸びてるか知りたいな~♪

リラックスした状態の筋は伸ばされると硬くなります。

よって、ストレッチによって筋が硬くなっていれば、その筋が伸びていることになります。

超音波エラストグラフィは組織の弾性(硬さ)を観測する画像診断技術です。

産婦人科で使用するような超音波診断装置に内蔵され、皮膚上にプローブを置くだけで筋の硬さを観測することができます。

下の図は足関節を底屈位から背屈位へと動かしたときに、腓腹筋内側頭の超音波画像を取得したものです。

足関節の背屈に伴って筋が伸びていることがBモード画像から、筋が硬くなっていることがエラストグラフィ画像から分かります。

 

以下の図は足関節を背屈位で固定し、腓腹筋内側頭の硬さがどのように変化するかを超音波エラストグラフィで調べたものです。

腓腹筋内側頭は100秒までどんどん軟らかくなり、それ以降も緩やかに軟らかくなっていることが分かります。

このことから、ストレッチで筋を伸ばした状態を維持すると、筋が徐々に伸びやすくなってストレッチ感が軽減することが示されました。

 

超音波エラストグラフィを用いて棘上筋が伸びやすいストッレチポジションを検討した結果が下記の図です。

棘上筋がより硬くなる、すなわち棘上筋がより伸ばされるのは、

・肩関節挙上45°、肩関節最大水平外転、肘関節90°(Ele45HAb)

・肩関節挙上90°、肩関節最大水平外転、肘関節90°(Ele90HAb)

・肩関節最大伸展、肩関節最大内転、肘関節90°(Ext)

で肩関節を最大内旋させたときであることが分かりました。

 

このように、超音波エラストグラフィは、

・ストレッチ中に狙った筋が伸びてるかを知りたい。

・どのくらいのストレッチ時間が必要かを知りたい。

・効果的なストレッチポジションを知りたい。

そんな夢を叶えてくれる“ひみつ道具”です。

 

トレーニング動作中に狙った筋が活動してるか知りたいな~♪

筋は活動して力を発揮すると硬くなります。

よって、トレーニング動作中に筋が硬くなっていれば、その筋が活動して力を発揮していることになります。

下の図は安静状態および全力の45%の肘関節屈曲筋力(45%MVC)を発揮したときに取得した上腕二頭筋の超音波エラストグラフィ画像です。

安静状態に比べて屈曲筋力を発揮した時の方が上腕二頭筋が硬くなっているのが分かります。

15, 30, 45, 60%の筋力を発揮させたときの上腕二頭筋の硬さを測定すると下記のようになります。

上腕二頭筋は肘関節屈曲筋力の増加に伴って硬くなったことから、肘関節を屈曲させる際に活動して力を発揮する筋であることが確認できました。

 

超音波エラストグラフィを用いて、腹横筋が様々なトレーニング動作中にどの程度活動しているかを調べたものが下記の図です。

安静時に比べてトレーニング動作中の方が腹横筋は硬くなりましたが、特にブレーシング(2)やデッドリフト(3)の際に硬くなっていました。

このことから、腹横筋はブレーシングやデッドリフトの際に特に大きく活動し、力を発揮することが示されました。

 

以上のように、超音波エラストグラフィは、

・トレーニング動作中に狙った筋が活動しているかを知りたい。

・鍛えたい筋がどのトレーニング動作で大きく活動するかを知りたい。

そんな夢を叶えてくれる“ひみつ道具”です。

 

おわりに

現段階では超音波エラストグラフィをスポーツ現場で見かけることはないと思われます。

しかし、医療や研究の分野では超音波エラストグラフィの普及が進んでおり、それに伴って観測技術も進化しています。

たったらたった たーったたー♪ 超音波エラストグラフィ―!!

筋の硬さを観測できる“ひみつ道具”として超音波エラストグラフィがスポーツ現場に登場する未来がそう遠くないと期待しています。

 

参考資料

・Chino K, Takahashi H. Association of Gastrocnemius Muscle Stiffness With Passive Ankle Joint Stiffness and Sex-Related Difference in the Joint Stiffness. J Appl Biomech. 2018; 34: 169-174.

・Freitas SR, Andrade RJ, Larcoupaille L, Mil-homens P, Nordez A. Muscle and joint responses during and after static stretching performed at different intensities. Eur J Appl Physiol. 2015; 115: 1263-1272.

・Nishishita S, Hasegawa S, Nakamura M, Umegaki H, Kobayashi T, Ichihashi N. Effective stretching position for the supraspinatus muscle evaluated by shear wave elastography in vivo. J Shoulder Elbow Surg. 2018; 27: 2242-2248.

・Yoshitake Y, Takai Y, Kanehisa H, Shinohara M. Muscle shear modulus measured with ultrasound shear-wave elastography across a wide range of contraction intensity. Muscle Nerve. 2014; 50: 103-113.

・Hirayama K, Akagi R, Moniwa Y, Okada J, Takahashi H. TRANSVERSUS ABDOMINIS ELASTICITY DURING VARIOUS EXERCISES: A SHEAR WAVE ULTRASOUND ELASTOGRAPHY STUDY. Int J Sports Phys Ther. 2017; 12: 601-606.

#35 ランニングウォッチがどうやってVO2maxを推定してるか、わかるよねぇ~??

先週の日曜日、東京マラソンが冷たい雨の降る中、開催されました。

日本記録保持者の大迫傑選手が出場しましたが、残念ながら途中棄権でしたね。

東京マラソンにはトップランナーだけでなく、市民ランナーもたくさん出場します。

最近では光学式心拍計やGPSが内蔵されたランニングウォッチが安価で購入できるようになり、市民ランナーの多くがランニングウィッチを着用しています。

ランニングウォッチは心拍数や距離、速度を測定できるだけでなく、最大酸素摂取量(VO2max)を推定することもできます。すごいですね~ w(゚o゚*)w

VO2max??(;・∀・)??

VO2maxって何か、わかるよねぇ~??

忘れてしまった方は過去のブログを確認して下さい。

https://sports-okinawa.org/top-soccer-players-vo2max/

 

実験室でVO2maxを測定する場合には、トレッドミルで速度を規定してランニングを行い、その際の呼気ガスを分析します。

一方、ランニングウォッチを用いてVO2maxを推定する場合には、速度を規定せずに屋外でランニングを行います。

ランニングウォッチがどうやってVO2maxを推定してるか、わかるよねぇ~??

そこで今回は、

「マラソン わかるよねぇ~?? シリーズ第3章・ランニングウォッチを用いたVO2maxの推定」

をご紹介します。

 

【手順1】ランニング中の心拍数や走速度のデータを取得する。

速度を規定せずに屋外で行ったランニングから信頼性の高いデータを得るには、

– 信号待ちをしているとき

– 急坂や軟らかい地面を走っているとき

– 長時間のランニングによって心拍数が高まっているとき

などの状況を判別し、それらの状況で取得したデータを除く必要があります。

GARMINやSUUNTOにアルゴリズムを提供しているFirstbeatでは、そのような状況を判別する特許技術を有しています。

 

 

【手順2】最大心拍数(HRmax)時の走速度を推定する。

手順1で取得した走速度[m/s]と心拍数[bpm]は下記の図のような直線関係を示します。

信頼性の高い走速度と心拍数の関係を得るため、平坦で硬いところを15分以上かけて走り、心拍数をHRmaxの75%以上まで上げて行くことが推奨されています。

 

HRmaxは220-年齢や210-(年齢×0.65)などから算出でき、その値を走速度-心拍数関係に当てはめることでHRmax時の走速度を推定することができます。

 

【手順3】HRmax時の走速度からVO2maxを推定する。

手順2で推定したHRmax時の走速度[m/s]を下記の式に当てはめることで、VO2max[ml/kg/min]を推定することができます。

VO2max=11.1×HRmax時の走速度+5.3333

 

ランニング中の瞬間的なVO2maxを連続的に表示するランニングウォッチでは、下記の式を用いてVO2max推定しています。

V02max=[-c1×HR/HRmax+(1+c1)]×[11.1×(c2×Angle+1)×走速度+5.3333)]

c1やc2は定数ですが、具体的な数値は公開されていません。

推定式にAngle[rad]を含めることによって、道の傾斜の影響を考慮しています。

 

おわりに

ウェアラブル端末の技術が発展したおかげで、ランニングウォッチを使って容易にVO2maxを推定できるようになりました。

下図のようにVO2maxが高いほどマラソンのタイムが良いという関係が見られます。

 

VO2max[ml/kg/min]からマラソンの記録を予測する式がいくつか報告されています。

マラソンのタイム[秒]=13967-70.44×VO2max (山地ら 1990)

マラソンのタイム[分]=435.58-3.85×VO2max (Foster 1983)

マラソンのタイム[分]=370.9-2.65×VO2max (Haganら 1981)

平均走速度[km/h]=(VO2max-26.4)/2.686【男性】 (MaughanとLeiper 1983)

平均走速度[km/h]=(VO2max-32.3)/1.819【女性】 (MaughanとLeiper 1983)

それぞれの式から自身の推定タイムを求め、マラソンの目標タイムを決める際の参考にしてみてはいかがでしょうか??

 

参考資料

・ Automated Fitness Level (VO2max) Estimation with Heart Rate and Speed Data (Firstbeat社のWhite Paper)

https://assets.firstbeat.com/firstbeat/uploads/2017/06/white_paper_VO2max_30.6.2017.pdf

・METHOD AND SYSTEM FOR DETERMINING THE FITNESS INDEX OF A PERSON (Firstbeat社のPatent)

https://fi.espacenet.com/publicationDetails/description?CC=WO&NR=2012140322A1&KC=A1&FT=D&ND=4&date=20121018&DB=&locale=fi_FI#

・山地啓司、池田岳子、横山泰行、松井秀治.最大酸素摂取量から陸上中長距離、マラソンレースの競技記録を占うことが可能か.ランニング学研究 1990, 1, 7-14

・Foster C. VO2max and training indices as determinants of competitive running performance. J Sports Sci 1983, 1, 13-22

・Hagan RD, Smith MG, Gettman LR. Marathon performance in relation to maximal aerobic power and training indices. Med Sci Sports Exerc 1981, 13, 185-189

・Maughan RJ, Leiper JB. Aerobic capacity and fractional utilisation of aerobic capacity in elite and non-elite male and female marathon runners. Eur J Appl Physiol Occup Physiol 1983, 52, 80-87

#34 大坂なおみ選手の強さの秘密は強い1stサービス??

大坂なおみ選手の昨年からの躍進は目覚ましく、今年の1月にはついに女子テニス協会(Women’s Tennis Association: WTA)のランキング1位に立ちました。

大坂選手と言えばインタビューでの「なおみ節」もチャーミングですが、最大の魅力は試合での強烈なサービスではないでしょうか??

そこで今回は、WTAランキングトップ100の女子テニス選手のサービスの傾向を検討した村田(2018)の概要をご紹介します。

 

サービスに関するスタッツ

女子テニス協会(Women’s Tennis Association: WTA)ランキング100位内の選手を対象に、公式ホームページから下記のスタッツを取得しました。

・サービスエース数(エース数)

・ダブルフォルト数

サービス時の総ポイント取得率(総ポイント取得率)

・1stサービスが入った確率(1st成功率)

・1stサービスが入った際のポイント取得率(1st取得率)

・2ndサービスが入った際のポイント取得率(2nd取得率)

 

また、取得したスタッツから下記のスタッツを算出しました。

・1stサービスでポイントを取得した確率 = 1st成功率 × 1st取得率

・2ndサービスでポイントを取得した確率 = (1-1st成功率) × 2nd取得率

尚、1stサービスでのポイント取得率と2ndサービスでのポイント取得率の和が、上述の総ポイント取得率となります。

 

ランキングとキープ率の関係

ランキングが高い選手ほどキープ率が高く、トップ20の選手では70%程度、100位付近の選手では60%程度でした。

 

総ポイント取得率と1st/2ndサービスでのポイント取得率の関係

サービス時の総ポイント取得率が高い選手は、どちらのサービスでも高い確率でポイントを取得しており、特に1stサービスでのポイント取得率が高いことが分かりました。

 

総ポイント取得率と1st/2ndサービスが入った際のポイント取得率の関係

サービス時の総ポイント取得率が高い選手は、どちらのサービスが入っても高い確率でポイントを取得していましたが、1stサービスが入った際のポイント取得率が特に高いことが明らかになりました。

女子選手の場合、1stサービスが入った際のポイント取得率は60%程度、2ndサービスが入った際のポイント取得率は40~55%程度と報告されていますが、この研究の取得率も同様でした。

尚、男子選手の場合、1stサービスが入った際は70~80%程度、2ndサービスが入った際は40~60%程度の確率でポイントを取得することが報告されています。

 

総ポイント取得率と1stサービスの成功率の関係

1stサービスの成功率は50~70%程度でしたが、サービス時の総ポイント取得率とは関係がないことが分かりました。

上図のように2ndサービスが入った際には40~50%の確率でポイントを取得できることから、1stサービスが入らなくても総ポイント数には影響しなかったようです。

 

ダブルフォルト数とキープ率の関係

1試合あたりのダブルフォルト数は、キープ率にほとんど影響しないことが分かりました。

よって、ダブルフォルトを犯すことよりも、ダブルフォルトを恐れて1stサービスの成功率を低下させたり、弱いサービスを打って1st/2ndサービスが入った際のポイント取得率を低下させたりする方がキープ率を低下させると考えられます。

 

エース数とキープ率の関係

1試合あたりのエース数が多い選手ほどキープ率が高いことが分かりました。

ただし、ほとんどの選手のエース数が6本以下でした。

ストレートで勝った場合のサービスゲームは6回ですから、女子選手が各ゲームで1本以上のエースを取る確率はかなり低いようです。

 

エース数と1st/2ndサービスが入った際のポイント取得率の関係

1試合あたりのエース数が多い選手は、1stサービスが入った際にポイントを取得する確率が高いことが分かりました。

「エース数の多い選手」とは「強いサービスを打てる選手」と考えられます。

よって、エース数が多かった選手は強い1stサービスでラリーの主導権を握り、3球目以降の攻撃でポイントを取得する確率を高めていたと推察されます。

一方、2ndサービスが入った際のポイント取得率は、エース数によらず概ね一定でした。

 

まとめ

・1試合あたりのダブルフォルト数はキープ率にほとんど影響しませんでした。

・サービス時の総ポイント取得率が高い選手は、1stサービスが入った際のポイント取得率が特に高いことが分かりました。

・1試合あたりのエース数が多い選手は、1stサービスが入った際にポイントを取得する確率が高いことが明らかになりました。

これらの結果から、近年のWTAランキングトップ100の選手では1stサービスでのポイント取得率が重要なため、ある程度のリスクを許容して強い1stサービスを打っていると推察されます。

強いサービスを打ってもエースを取れる確率は低いようですが、ラリーの主導権を握ることができると思われます。

今後大坂選手の試合を見る際には、そのような観点から1stサービスとその後のラリーを見てはいかがでしょうか??

 

おわりに

この研究はランキング100位以内のすべての選手の1試合あたりのスタッツをまとめて分析し、WTAランキングトップ100位以内の選手の全体的なサービスの傾向を明らかにしたものです。

よって、選手ごとやセット/ゲームごとのスタッツを分析すると、この研究とは異なるサービスの傾向が見られる可能性があります。

この研究で用いられている方法で、ご自身や担当する選手のサービスの傾向を明らかにするのはいかがでしょうか??

サービスの戦略を再構築する良いきっかけになるかも知れません。

 

参考資料

WTA トーナメントにおけるトップ100 位選手の2018 年サービスの傾向.村田宗紀.スポーツパフォーマンス研究, 10巻, 354-363ページ, 2018年

http://sports-performance.jp/paper/1844/1844.pdf