#56 サッカーとジュニア vol.1【1試合でどれだけ走る?】

 サッカーは、ルールが分かりやすく、用具をあまり必要としないことから世界的にも人気の高いスポーツです。老若男女問わず、レクリーエーションとして、競技スポーツとして、誰もが楽しめるスポーツです。その中でも本ブログでは、プロサッカー選手に必要な体力的要素やトレーニングについて3回にわたって紹介します。

 

  • サッカー選手は1試合(90分間)でどれくらい走るのか?

 最近では、測定機器が小型・軽量化したことや、競技規則の改正によりサッカー選手の試合中の動きをほぼリアルタイムで数値化することができるようになりした。サッカー選手の試合中の動きを測定するのに良く用いられるのは、GPS(Global Positioning System)を利用したパフォーマンス分析装置です(図1)。

図1 GPSパフォーマンス分析装置(https://archivetips.com/gpexe)

GPSパフォーマンス分析装置を使用したデータから、サッカー選手は、1試合で9km~12km走ると言われています(GKは4kmくらい)。ただし、ほぼ一定のペースで前向きに走る陸上の長距離走種目とは違い、サッカー選手はスプリント、ジャンプ、ターン、シュートやタックルなどさまざまな動き繰り返しながら90分間動き続ける体力が必要です。特に時速15km以上の高強度の動きを繰り返す能力は、シュートチャンスを生み出したり、防いだりする決定的な場面で必要です。高強度な動きを繰り返す能力は、現代サッカーでは特に選手に求められます。

 

  • サッカー選手に必要な体力的要素とは?

 サッカー選手の試合中のパフォーマンス発揮に影響する主な要素は、①心理的・社会的要素、②技術的要素、③戦術的要素、④体力的要素、の4つです。ここではサッカー選手が試合中に高いパフォーマンスを発揮するための体力的要素について説明します。

 サッカー選手に特に求められる体力的要素は、次に示す4つです。1)持久的パフォーマンス、2)高強度運動パフォーマンス、3)スプリントパフォーマンス、そして4)筋発揮パフォーマンスです。

1)持久的パフォーマンス

 先程も書きましたが、サッカー選手は試合中にさまざまな動きを行いながら、90分間走り続けます。したがって、サッカー選手に特に求められるのは、2)で示す高強度運動パフォーマンスを繰り返す能力です。しかしながら、一定強度の運動を持続的に行う基礎的な持久力が全く必要ないわけではありません。高強度運動と高強度運動のリカバリー時(回復時)の素早い回復と、この基礎的な持久力の高さは密接に関係しています。基礎的な持久力もサッカー選手には必要な体力的要素です。

 

2)高強度運動パフォーマンス

 スプリント、ジャンプやシュートなど試合中に高強度な運動を繰り返すことができる能力は現代のサッカー選手に特に求められます。イタリアのトップレベルの選手を対象にしたMohrらの研究によると、時速15km以上の高強度運動は1試合あたり平均2.43kmで、競技レベルが高い選手は低い選手と比較してその距離が長いことを報告しています。

 

3)スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。20m以下の短い距離を素早く走る能力は、試合における決定的な場面で大変重要な体力要素です。試合の中で発揮されるスプリント能力とは、疾走能力だけでなく、認知能力や予測する能力も含まれます。

 

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。

 

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手になるためにはどれくらいの能力が必要かについて紹介したいと思います。

 

参考文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・Mohr et al.(2003)Match performance of high-standard soccer players with special reference to development of fatigue. J Sports Sci; 21: 519-528.

プロフィール

大家利之【おおや としゆき】先生

中京大学スポーツ科学部 准教授

 

 

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