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“Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates”
簡単に説明すると、”通常より重たいボールを用いて6週間ピッチング練習を行うと球速、ピッチング時の腕のバイオメカニクス、可動域、ケガのリスクにどのような影響を及ぼすのか?”という内容です。
結論は、、
何名かの選手にとっては、球速があがるという点では効果があるかもしれないが、それと同時にケガのリスクも増える可能性がある。また、球速が上がった理由として肩の受動的外旋可動域の動きが関係している可能性がある。
〇背景
ここ最近のメジャーリーグ平均球速が、2008年に90.9マイルだったのが、2017年には93.2マイルにまであがってきており、アマチュア野球においても同じような傾向【球速アップ】がみられる。インターネット上での”投手向け球速向上プログラム(投球動作、腕の筋力&スピードを向上させることで5マイル、もしくはそれ以上の球速アップを目指す)”などのマーケット拡大も大きく影響していると考えられる。いくつかの研究においても、重たいボールを用いたトレーニングプログラムが球速アップに効果があると示している。
球速アップと関連して、肘のストレスやケガの割合が増えることが示唆されており、近年はプロアマ問わず、尺骨側副靭帯の再建手術の数が増えてきているのが現状である。【ニューヨーク州においては、2002年から2011年にかけてユースの野球選手における尺骨側副靭帯再建手術の件数が193%に膨れ上がってきている】しかしながら、球速アッププログラムがケガに及ぼす影響について直接調べた報告は少ない。
〇実験方法
対象:38名【13歳~18歳】/過去12カ月以内にケガがなし。
コントロール群/19名【通常練習】、トレーニング群/19名【重たいボールを用いた練習】
測定項目:*他動的可動域(肩/ 肘)*筋力(肩) *球速(通常5オンスボールを使用)*投球動作(肘の内反トルク&肩内旋速度)
時期 & 頻度:オフシーズン【1~2月中の6週間】。 トレーニング頻度・週3日
トレーニング内容
両群ともオフシーズンの通常ストレングス&コンディショニングトレーニングは実施。
トレーニング群は、週3回、下記のトレーニングを実施。【*各トレーニングポジションで5つの異なるウエイトボール➾2,4,6,16,32オンスを使用。】
〇結果
*38名中トレーニング群の4人が離脱【2人が肘、残りの2人下肢のケガ】
*トレーニング群【80% ➾球速アップ / 8%➾変化なし / 12%➾球速ダウン】。
*コントロール群 【67%➾球速アップ / 19%➾変化なし / 14%➾球速ダウン】
*トレーニング介入後の腕の角速度と肘のストレスに対しては変化なし。
*コントロール群 【13%➾利き手の外旋動作の筋力向上。トレーニング群は変化なし。】
*トレーニング群【肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大。コントロール群は変化なし。】
*トレーニング群【24%の選手がトレーニング中、もしくはシーズン中にケガと継続的に付き合う結果となった。トレーニング期間中ケガで離脱した2選手の肩関節の受動的外旋可動域拡大は非常に大きかった。(10° & 11°向上)コントロール群はケガなし。】
〇論文の内容を踏まえた上でのまとめ
近年、ウエイトボールを利用することで球速アップが期待されるといった内容のプログラムが注目されている。①腕振りのスピードアップと、②腕の筋力向上が球速アップを後押しすると考えられているものの、この研究では、トレーニング群では球速アップしたにも関わらず、①と②の両方とも変化しなかったということは興味深い。また、コントロール群は肩の筋力が向上したという点からも、現在期待されている理論(筋力アップが球速アップに影響を及ぼす)に反する結果となった。肩関節の受動的外旋可動域と球速との間には関連性が【トレーニング群➾肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大】あることから、今後も注目していく必要があると感じた。それと同時に、短期間(6週間)の急激な関節可動域の拡大がケガを誘発してしまう可能性については注視しておく必要がある。特に今回の被験者【13~18歳】のような発育段階においてまだ各関節の動的柔軟性がコントロールできていないカテゴリーにおいては、ウエイトボールを用いたトレーニング介入に関して慎重に考えていく必要があるのではないだろうか。
参考文献
Michael M. Reinold, PT, DPT, SCS, ATC, CSCS,*† Leonard C. Macrina, MSPT, SCS, CSCS,† Glenn S. Fleisig, PhD,‡ Kyle Aune, MPH,‡ and James R. Andrews, MD§‖. Author information Copyright and License information Disclaimer. Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates. Sports Health. 2018 Jul-Aug; 10(4): 327–333.