#33 MLBアナリストも注目する「ピッチトンネル」を活かした投球術とは??

プロ野球のキャンプが始まっておよそ3週間、広島カープの沖縄キャンプも先週の金曜日から始まりました。

カープには注目の選手がたくさんいますが、主力投手である野村祐輔選手もその一人でしょう。

神事(2018)によると、野村投手の凄さは「ピッチトンネル」を活かした投球術にあるようです。

「ピッチトンネル」?? みなさんは「ピッチトンネル」を知っているでしょうか??

「ピッチトンネル」という考え方は、メジャーリーグのトップアナリストも注目しているようです。

https://www.baseballgeeks.jp/?p=5466

そこで今回は、「ピッチトンネル」を活かした投球術について話題提供したいと思います。

 

「ピッチトンネル」とは??

140キロ前後の球速のボールは約0.45秒で打者の手元に届きます。

一方、バットが投球にコンタクトする位置に到達するのは、スイング動作を開始してから約0.16秒後です。

また、打者が「振る!」と決めてからスイング動作の開始までには、約0.1秒のタイムロスがあります。

よって、打者は0.45-0.16-0.1=約0.19秒で「振る!」と決断しなければなりません。

バットの軌道はスイング開始後に大きく変えることはできません。

したがって、打者は投球後のわずかな時間で球種やコース、タイミングを予測してスイング動作を開始しなければなりません。

 

「ピッチトンネル」とは打者が球種やコース、タイミングを判断するギリギリのポイントに設定される仮想の空間です(下図のA)。

「ピッチトンネルが狭い」とは異なる球種であってもピッチトンネルまでの軌道の差が小さく、打者が球種やコース、タイミングを判断するための情報が少ないことを表します。

また、ピッチトンネルが狭く、ピッチトンネルを通過した後の軌道の差が大きい、すなわちホームプレート上に設定されたトンネル(B)が広いと、打者は「ボールが手元で動いた」と感じるようです。

 

一方、他の球種とピッチトンネルを構築できない球種は、打者にとって班別のつきやすい球種となります。

よって、球速や変化量が平均値から大きく外れる特殊な球種でない限り、その球種の効果は限定的なものとなるでしょう。

 

フォークやチェンジアップなどの落ちる球種は、ストライクゾーンにくるフォーシームと同じ「ピッチトンネル」を通すことで、自然と低めにコントロールされます。

それらの球種が高めに浮くと危険とされるのは、「ピッチトンネル」から外れたボールは打者にとって球種の判別が容易なためです。

 

「ピッチトンネル」を活かした投球術とは??

神事(2018)は広島カープの野村祐輔投手がどのように「ピッチトンネル」を活かしているかを報告しています。

 

下記の表は野村投手の球種と平均球速、投球の割合をまとめたものです。

 

野村投手のフォーシーム、ツーシーム、カットボールは球速だけでなく変化量も類似しているため、これらはピッチトンネルの狭い球種となります。

また、ツーシームは主に右打者のインコース、カットボールはアウトコースに投げ込まれますので、この3つの球種は途中から軌道が変わると感じさせるボールになるでしょう。

 

ツーシームとチェンジアップ、カットボールとスライダーは、球速が異なるものの、変化量が類似している組み合わせです。

これらの組み合わせは、類似した軌道でスピード感の違うボールになるでしょう。

 

カーブは他の球種と球速や変化量が大きく異なり、ピッチトンネルを敢えて外しているようです。

このような球種は打者の目線をずらし、配球のアクセントとして使えるでしょう。

 

野村投手は6つの球種をバランス良く投げており(上図参照)、そうすることで打者の対応をさらに難しくさせているようです。

 

このように、「ピッチトンネル」を利用して手元で動くボールと緩急によって前後の奥行きを持たせたボールを駆使することで、突出した球種がない投手であっても第一線で活躍できる可能性があります。

 

「ピッチトンネル」を活かした投球術を身につけるには、まず自分の球種の変化量を把握する必要があります。

その上で、「ピッチトンネル」を構築できる球種の組み合わせを考えます。

例えば、変化方向が左右で異なるスライダーとシュートは、バットの芯をとらえにくくさせる組み合わせと考えます。

類似した変化量で球速の異なるツーシームとチェンジアップは、打者に緩急を感じさせる組み合わせと考えられるでしょう。

このように、自身の球種の変化量を把握して「ピッチトンネル」を構築できる組み合わせを考えてみて下さい。

また、新しい球種を習得しようとする際には、他の球種との関係性を考慮する「ピッチトンネル」の考え方から球種を選択するのも良いでしょう。

 

おわりに

「ピッチトンネル」の概念は今シーズンからメジャーリーグに挑戦する菊池雄星投手(シアトルマリナーズ)も取り入れているようです。

https://www.baseballgeeks.jp/?p=7089

「ピッチトンネル」を活かした投球術を駆使する「沖縄の野村祐輔」や「沖縄の菊池雄星」と呼ばれる投手が現れることを期待しています。

 

参考資料

神事努、最先端の野球 科学的データが導く野球の新常識 球種を生かすピッチトンネルの概念、Baseball Clinic 2018年11月号 28~29ページ

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