#57 サッカーとジュニア Vol.2【持久力編】

 前回のブログでサッカー選手に特に必要な4つの体力的要素について説明しました。今回のブログでは、その体力的要素の測定方法とプロサッカー選手の基準値について紹介します。

①持久的パフォーマンス

 持久的パフォーマンスを発揮する能力を最も精度高く評価できる指標は、最大酸素摂取量です。最大酸素摂取量とは、1分間あたりで摂取される酸素摂取量の最大値のことで、この値が高い程持久的能力が高いと評価することができます。プロサッカー選手の最大酸素摂取量の平均値は、50~75ml/kg/minであり、あるJリーグチームの平均値は57.3 ml/kg/minであると報告されています。しかしながら、最大酸素摂取量の測定は、高額な機器が必要であり、また専門的な知識をもった測定者が必要です。最大酸素摂取量を測定したい人は、一度スポーツおきなわのスタッフに問い合わせてみてください。

 このように最大酸素摂取量を直接測定するためには、さまざまなコストがかかるため、一般的には、サッカー選手の持久的能力は、フィールドテストを行い、その結果から最大酸素摂取量を推定する方法が用いられます。代表的な測定としては、文部科学省の新体力テスト項目である20mシャトルランニングです。サッカーでは、YO-YO Endurance Testの結果から最大酸素摂取量を推定する方法を用いることもあります。YO-YO Testの詳細は下記から調べることができます。

http://sandcplanning.com/solution/category/detail/?cd=10

②高強度運動パフォーマンス

 高強度運動パフォーマンスを発揮する能力の測定には、YO-YO Intermittent Recovery Test(YOYOIR)が良く用いられます。YOYOIRの結果と、試合中の高強度ランニング距離との間には、有意な高い正の相関関係があると報告されています(図1)。

   

図1:YOYOIR level1の結果と試合中の高強度ランニング距離との関係

表1に、アンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手のYOYOIR level2の結果を示します。ポジションやその選手のプレーの特徴にもよりますが、プロサッカー選手(GKを除く)の基準値としては、男子であればYOYOIR level2の記録が1000m以上、女子であればYOYOIR level1の記録が1520m以上であると考えられえています。

表1:アンダーカテゴリー男子日本代表選手のスプリントテストおよびYOYOIR level2の結果

③スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。表1にアンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手の20mスプリントテスト時の結果を示します。このデータは、光電管システム(図2)を用いて測定しています。スタートは音や光刺激に反応するのではなく、選手の任意のタイミングで行ったデータです。スタートから10mと20m位置に光電管を設置し、スタートから10mと20mまでの記録が表1に示してあります。同じ測定方法で、ある年の男子日本代表サッカー選手(A代表)のスタートから10mまでのスプリントに要した時間の平均は1.73秒(GK除く)でした。競技レベルが高い程、10mのような短い距離を素早く走る能力に優れている傾向があります。

図2:アンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手のスプリント測定で使用した光電管

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。サッカーでは主にスクワットジャンプ(SJ)、カウンタームーブメントジャンプ腕ふりなし(CMJ腕なし)、カウンタームーブメントジャンプ腕ふりあり(CMJ腕ふりあり)の3種類の測定項目が用いられます。ジャンプの測定方法は、ヤードスティックなどを用いたタッチ式、腰に専用ベルトを巻いてひもの伸びた長さによって測定するひも式、専用のマットスイッチ(図3)を用いて滞空時間からジャンプ高を推定する滞空時間式があります。その中でもサッカーでは滞空時間式でCMJの腕ふりなしの測定値を下肢のパワー発揮能力の指標として用いることが多いです。表2にエリートサッカー選手(プロサッカー選手)の滞空時間式で測定したCMJ腕ふりなしの基準値を示します。プロサッカー選手の基準値としては、男子であれば40~45cm、女子であれば30~35cmであると考えられています。

         

表2:エリートサッカー選手の基準値(マットスイッチを用いたCMJ腕ふりなし)

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素を向上させるトレーニングについて紹介したいと思います。

 

引用文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・ヤン・バングスボ,マグニ・モア(2015)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手の体力測定と評価.大修館書店・東京.

中京大学スポーツ科学部 准教授 大家 利之

#56 サッカーとジュニア vol.1【1試合でどれだけ走る?】

 サッカーは、ルールが分かりやすく、用具をあまり必要としないことから世界的にも人気の高いスポーツです。老若男女問わず、レクリーエーションとして、競技スポーツとして、誰もが楽しめるスポーツです。その中でも本ブログでは、プロサッカー選手に必要な体力的要素やトレーニングについて3回にわたって紹介します。

 

  • サッカー選手は1試合(90分間)でどれくらい走るのか?

 最近では、測定機器が小型・軽量化したことや、競技規則の改正によりサッカー選手の試合中の動きをほぼリアルタイムで数値化することができるようになりした。サッカー選手の試合中の動きを測定するのに良く用いられるのは、GPS(Global Positioning System)を利用したパフォーマンス分析装置です(図1)。

図1 GPSパフォーマンス分析装置(https://archivetips.com/gpexe)

GPSパフォーマンス分析装置を使用したデータから、サッカー選手は、1試合で9km~12km走ると言われています(GKは4kmくらい)。ただし、ほぼ一定のペースで前向きに走る陸上の長距離走種目とは違い、サッカー選手はスプリント、ジャンプ、ターン、シュートやタックルなどさまざまな動き繰り返しながら90分間動き続ける体力が必要です。特に時速15km以上の高強度の動きを繰り返す能力は、シュートチャンスを生み出したり、防いだりする決定的な場面で必要です。高強度な動きを繰り返す能力は、現代サッカーでは特に選手に求められます。

 

  • サッカー選手に必要な体力的要素とは?

 サッカー選手の試合中のパフォーマンス発揮に影響する主な要素は、①心理的・社会的要素、②技術的要素、③戦術的要素、④体力的要素、の4つです。ここではサッカー選手が試合中に高いパフォーマンスを発揮するための体力的要素について説明します。

 サッカー選手に特に求められる体力的要素は、次に示す4つです。1)持久的パフォーマンス、2)高強度運動パフォーマンス、3)スプリントパフォーマンス、そして4)筋発揮パフォーマンスです。

1)持久的パフォーマンス

 先程も書きましたが、サッカー選手は試合中にさまざまな動きを行いながら、90分間走り続けます。したがって、サッカー選手に特に求められるのは、2)で示す高強度運動パフォーマンスを繰り返す能力です。しかしながら、一定強度の運動を持続的に行う基礎的な持久力が全く必要ないわけではありません。高強度運動と高強度運動のリカバリー時(回復時)の素早い回復と、この基礎的な持久力の高さは密接に関係しています。基礎的な持久力もサッカー選手には必要な体力的要素です。

 

2)高強度運動パフォーマンス

 スプリント、ジャンプやシュートなど試合中に高強度な運動を繰り返すことができる能力は現代のサッカー選手に特に求められます。イタリアのトップレベルの選手を対象にしたMohrらの研究によると、時速15km以上の高強度運動は1試合あたり平均2.43kmで、競技レベルが高い選手は低い選手と比較してその距離が長いことを報告しています。

 

3)スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。20m以下の短い距離を素早く走る能力は、試合における決定的な場面で大変重要な体力要素です。試合の中で発揮されるスプリント能力とは、疾走能力だけでなく、認知能力や予測する能力も含まれます。

 

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。

 

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手になるためにはどれくらいの能力が必要かについて紹介したいと思います。

 

参考文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・Mohr et al.(2003)Match performance of high-standard soccer players with special reference to development of fatigue. J Sports Sci; 21: 519-528.

プロフィール

大家利之【おおや としゆき】先生

中京大学スポーツ科学部 准教授

 

 

#54 テニスのサーブが速くなる秘策は回転と〇〇の前方への移動!

今回のテーマのヒントになる論文はこちら↓

“Professional tennis players’ serve: correlation between segmental angular momentums and ball velocity” 

タイトルをそのまま、訳してみると、”プロテニス選手のサーブ時の体の各部位における角運動量とボール速度との関係について。” となります。なにやら、難しいタイトルですね(;’∀’)。

現代のテニス競技は男女問わずサーブ時のスピードがより重要視されています。勝つための秘訣はサーブのスピードにあり!! ということで、今回はサーブのスピードをアップさせるためのヒントについてご紹介させて頂きます。

 

さっそく、今回の内容をまとめてみると、

テニスのサーブが速くなる秘訣は、体の回転動作【回旋】& 体幹の押し出し【側屈】を大きく素早く行うこと!

体の回転動作【回旋】①体幹➾②上半身➾③腕➾④ラケットへと体の連動【順番】を抑える。

特に、肘が最大限に曲がったポジション (MEF) からボールインパクト (BI) までの”体の各部位の回転動作”と、インパクト(BI)時に力発揮を高める”体幹の前方への移動【側屈】”が重要なポイントとなります。

MEF, BI に関しては下記の図を参照。

また、押し出し【体幹を前方に倒す】をうまく行う為には、ボールを真上ではなく斜め上方向へ投げるのもサーブ速度を上げる為のテクニックの一つと考えられます。

その他にも、インパクト前の肘伸びきるスピード、肩関節の内旋動作、手首使い方などもサーブの球速に影響しているようなのでそちらに関しては、また別の機会にご紹介できたらと思います。

以下は、今回の論文の詳細となりますが、、

如何せん、バイオメカニクスは専門でない為 うまくまとめることができず(;’∀’)。

とりあえず、まとめてみたのでご興味のある方は参考程度に確認してみて下さい💦

 

〇対象選手

プロテニス選手 10名 【年齢25.1±5, 身長187cm±6cm, 体重79.4kg±7.4kg】シングルス ATP  ランキング 【 17th, 88th, 118th, 147th, 287th, 522nd, and 921st】  ダブルス ATP ランキング 【35th, 48th,and 210th】

〇測定方法

フラットサーブをターゲットエリア【1.5m×1.5m】に打ち込んだ際の”体の各部位の角運動量”と”サーブの球速”との関係を測定。

サーブの動きを5つのポジションに分類。

BT: ボールトス(ball toss)

MEF: 肘が最大に曲がったポジション(maximal elbow flexion)

RLP: ラケットが最大に下がったポジション (racket lowest point)

MER: 肩が最大に外旋したポジション (maximal shoulder external rotation)

BI: ボールインパクト(ball impact).

〇結果

  1. ①肘が大きく曲がる (MEF) ②ラケットが下がっている (RLP) ③肘が外旋している (MER) ポジションにおいて、体幹のx軸における角運動量がサーブの速度に大きく関わっている。
  2. ②ラケットがさがっている (RLP) ③肘が外旋している (MER) ポジションにおいて、上半身のx軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  3. ③肘が外旋している (MER) ④ボールインパクト (BI) のポジションにおいて、腕のx軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  4. ①肘が大きく曲がる (MEF) ④ボールインパクト (BI)のポジションにおいて、体幹をy軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  5. その他、省略。

まとめ

 ①”体の各部位”と”サーブ速度”とのポジションごとにおける相関関係の変化、②体の中心【体幹】から末端【手首やラケット】への力の連動、③体幹の前方移動など、今後のトレーニング指導のヒントになりそうです。

P.S.

バイメカは基礎知識がないと難しい。。今後は、色々な先生方にも情報配信をお願いしてみよう!と改めて感じさせられた今日この頃です。

参考文献

Caroline Martin a, Richard Kulpa a, Paul Delamarche a& Benoit, Bideau. Professional tennis players’ serve: correlation between segmental angular momentums and ball velocity. Sports Biomechanics, iFirst article, 1–13, 2013.

#53 ゴルフは、手足が長いと有利?!

今回のお題のヒントになる論文がこちら↓

“PHYSIOLOGICAL CORRELATES OF GOLF PERFORMANCE”

ざっくりと説明すると、生理学的指標とゴルフのパフォーマンスとの関係について調べた論文で、下記の項目がそれぞれの指標として用いられていました。

〇人体測定

➾年齢 体重 身長 BMI【Body mass index】 座高 手足の長さ

〇フィットネステスト

➾柔軟性 バランス パワー 筋力 筋持久力 有酸素性能力【推定】

〇ゴルフパフォーマンス

➾ドライバーのボールスピード&飛距離 5番アイアンのボールスピード&飛距離 スコア パーオン チップショット後のパターの平均距離 サンドショット後のパターの平均距離 パット数

対象:カナダのナショナルチームメンバー24名【男子15名女子9名】

 

手足が長いとゴルフは有利?! 結果は、

手が長いと飛距離アップという点では有利!!!

【足の長さはパフォーマンスとの関係に相関なし】

これに関しては、手が長い【レバーが長い】選手はスイングが大きくなる分、よりボールに力を与えることができます。勿論、長い手をコントロールする筋力が備わっていることも条件ではありますが。

しかしながら、スコア、サンドショット後のパターの平均距離、パット数など手の長さと負の相関があることから、より正確性が求められるショットにおいては手の長さがデメリットとなる可能性があることもわかりました。

座高に関しても、手の長さと同じ傾向がみられました。

また、筋力という点では腹筋と懸垂の方がパフォーマンスとの相関が高いという点も触れておく必要がありそうです。体前面においては腹筋、後面は背中、ゴルフ特有の回旋動作を考えるとパフォーマンスに影響することは勿論、これらの筋力のバランス【表と裏のバランス】をとることも障害予防の点から考えると非常に重要な要素だと考えられます。

その他にも、興味深いと感じたのが有酸素性能力とゴルフのパフォーマンスとの関係には相関があるということです。パワフルなショットを打つ為には筋力強化が必要ですが、有酸素運動は時に筋力強化の妨げとなることや、マラソンランナーのように持続的に力発揮を行うことがないことから、必要性を見いだせないというのが多くの方が意見ではないでしょうか。

可能性として、ゴルフの競技は1日で10km程度も移動することから、有酸素性能力の低い選手はリカバリー効率が悪く、気づかないうちにショットの精度が落ちているのかもしれません。いずれにせよ、有酸素性能力が高い選手が、ゴルフのパフォーマンスが高いという結果になったことを踏まえると、他の選手に比べ明らかにその能力が低い選手は持久力を高める為のトレーニングを取り入れる必要がありそうです。

まとめ

手の長さがパフォーマンスとの間に相関があると同時に、メリットとデメリットについてもゴルフ特有の飛距離&正確性という点から考えると収穫だったのではないでしょうか。今回の論文から、”心拍数とゴルフのパフォーマンスとの間に相関はあるのか?”というまたべつの疑問が浮かび上がってきたので実際に調べてみようと思います(^^♪。

 

参考文献

GREG D. WELLS, MARYAM ELMI, AND SCOTT THOMAS. PHYSIOLOGICAL CORRELATES OF GOLF PERFORMANCE. Journal of Strength and Conditioning Research. VOLUME 23, NUMBER 3, MAY 2009.

#52 重たいボールでトレーニングをしたら、球速はアップするが、ケガのリスクも増える?!

今回ご紹介する文献はこちら↓            

“Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates” 

簡単に説明すると、”通常より重たいボールを用いて6週間ピッチング練習を行うと球速、ピッチング時の腕のバイオメカニクス、可動域、ケガのリスクにどのような影響を及ぼすのか?”という内容です。

結論は、、

何名かの選手にとっては、球速があがるという点では効果があるかもしれないが、それと同時にケガのリスクも増える可能性がある。また、球速が上がった理由として肩の受動的外旋可動域の動きが関係している可能性がある。

〇背景

 ここ最近のメジャーリーグ平均球速が、2008年に90.9マイルだったのが、2017年には93.2マイルにまであがってきており、アマチュア野球においても同じような傾向【球速アップ】がみられる。インターネット上での”投手向け球速向上プログラム(投球動作、腕の筋力&スピードを向上させることで5マイル、もしくはそれ以上の球速アップを目指す)”などのマーケット拡大も大きく影響していると考えられる。いくつかの研究においても、重たいボールを用いたトレーニングプログラムが球速アップに効果があると示している。

球速アップと関連して、肘のストレスやケガの割合が増えることが示唆されており、近年はプロアマ問わず、尺骨側副靭帯の再建手術の数が増えてきているのが現状である。【ニューヨーク州においては、2002年から2011年にかけてユースの野球選手における尺骨側副靭帯再建手術の件数が193%に膨れ上がってきている】しかしながら、球速アッププログラムがケガに及ぼす影響について直接調べた報告は少ない。

〇実験方法

対象:38名【13歳~18歳】/過去12カ月以内にケガがなし。

コントロール群/19名【通常練習】、トレーニング群/19名【重たいボールを用いた練習】

測定項目:*他動的可動域(肩/ 肘)*筋力(肩) *球速(通常5オンスボールを使用)*投球動作(肘の内反トルク&肩内旋速度)

時期 & 頻度:オフシーズン【1~2月中の6週間】。 トレーニング頻度・週3日

トレーニング内容

両群ともオフシーズンの通常ストレングス&コンディショニングトレーニングは実施。

トレーニング群は、週3回、下記のトレーニングを実施。【*各トレーニングポジションで5つの異なるウエイトボール➾2,4,6,16,32オンスを使用。】

〇結果

*38名中トレーニング群の4人が離脱【2人が肘、残りの2人下肢のケガ】

*トレーニング群【80% ➾球速アップ / 8%➾変化なし / 12%➾球速ダウン】。

*コントロール群 【67%➾球速アップ / 19%➾変化なし / 14%➾球速ダウン】

*トレーニング介入後の腕の角速度と肘のストレスに対しては変化なし。

*コントロール群 【13%➾利き手の外旋動作の筋力向上。トレーニング群は変化なし。】

*トレーニング群【肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大。コントロール群は変化なし。】

*トレーニング群【24%の選手がトレーニング中、もしくはシーズン中にケガと継続的に付き合う結果となった。トレーニング期間中ケガで離脱した2選手の肩関節の受動的外旋可動域拡大は非常に大きかった。(10° & 11°向上)コントロール群はケガなし。】

〇論文の内容を踏まえた上でのまとめ

近年、ウエイトボールを利用することで球速アップが期待されるといった内容のプログラムが注目されている。①腕振りのスピードアップと、②腕の筋力向上が球速アップを後押しすると考えられているものの、この研究では、トレーニング群では球速アップしたにも関わらず、①と②の両方とも変化しなかったということは興味深い。また、コントロール群は肩の筋力が向上したという点からも、現在期待されている理論(筋力アップが球速アップに影響を及ぼす)に反する結果となった。肩関節の受動的外旋可動域と球速との間には関連性が【トレーニング群➾肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大】あることから、今後も注目していく必要があると感じた。それと同時に、短期間(6週間)の急激な関節可動域の拡大がケガを誘発してしまう可能性については注視しておく必要がある。特に今回の被験者【13~18歳】のような発育段階においてまだ各関節の動的柔軟性がコントロールできていないカテゴリーにおいては、ウエイトボールを用いたトレーニング介入に関して慎重に考えていく必要があるのではないだろうか。

 

参考文献

Michael M. Reinold, PT, DPT, SCS, ATC, CSCS,*† Leonard C. Macrina, MSPT, SCS, CSCS, Glenn S. Fleisig, PhD, Kyle Aune, MPH, and James R. Andrews, MD§‖. Author information Copyright and License information Disclaimer Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates. Sports Health. 2018 Jul-Aug; 10(4): 327–333.