#61 足を速くする方法とは!?【発育発達編】 Vol.2

発育発達とスプリント能力

 人は2歳ごろから走ることができるようになり、6、7歳ごろまでに成人と同じような走動作を獲得するとされています(宮丸,2002)。1歳から成人までの疾走能力の発達を追っていくと、下記のようなポイントにまとめられます(加藤,2004)。

【疾走速度】

男子:加齢に伴って17歳頃まで増大するが、その後停滞傾向を示す

女子:13歳頃まで増大し、以降停滞する

 

【ストライド】

男子:14〜15歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

女子:13〜14歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

 

【ピッチ】

男子:2〜14歳頃まで明確な変化はないが、15~17歳にかけて増大する

女子:2歳から成人まで明確な変化なし

 

以上の結果から、1歳半〜12歳までの疾走速度の増大は、男女ともにピッチよりもストライドの増大によるものであるが、男子の15歳〜17歳における疾走速度の増大は、ストライドよりもピッチによるものであるとし、思春期における疾走能力の発達に明確な男女差があることが分かっています。(加藤,2004)。また、横山ほか(2012)の報告によると、身長が一番伸びる時期は、女子は12歳頃、男子は14歳頃であり、身長の増加が停滞してくるのが女子は14歳頃、男子は16歳頃からであるとされています。よって、思春期前後までにおいては、身長が伸びて、筋量も増えていくことでストライドが増大し、その結果として疾走速度が増大していることが推察されます。以上より、発育発達に伴って疾走速度が自然とある程度増大していきますが、身長が伸びることでのネガティブな影響や、身長が伸びなくなってからのトレーニングで気をつけるべきポイントがあります。

まず、身長が伸びると、四肢が長くなっていくためモーメントアームが長くなり、高速で四肢を動かすためにはより高い筋力や神経系機能が必要になります。そのため、身長が急激に伸びると俊敏に動くクイックネスが低下する可能性があります。また、身長が伸びると骨と筋腱の成育に不均衡が生じ、筋腱の緊張が一時的に高くなることがあり、いわゆる身体の柔軟性が低下する可能性があります。よって、動的可動域の確保とケガ予防のために、柔軟性を維持する必要があります。以上のことを踏まえ、発育発達に応じたスプリントトレーニングを行う際の注意点は以下のようになります。

 

 ①クイックネスの維持・向上、ひいてはピッチの維持・向上のため、神経系機能トレーニング(SAQトレーニングなど)をしっかりと行う

 ②動的可動域の確保とケガ予防のために、ストレッチング(スタティック、ダイナミックともに)をしっかりと行う

 

 これらの内容に留意しながら、トレーニングで足を速くすることの楽しさを存分に味わってください!

図1 年齢にともなう疾走速度、ストライド、ストライド/身長、ピッチの変化

※宮丸(2002)より引用

 

関西福祉大学 講師 熊野陽人

 

[資料]

・加藤謙一(2004)走能力の発育発達. 金子公有・福永哲夫編, バイオメカニクス-身体運動の科学的基礎-. 杏林書院:東京, pp.179-180.

・宮丸凱史 (2002) 疾走能力の発達: 走り始めから成人まで. 体育学研究, 47: 607-614.

・横山徹爾, 加藤則子, 瀧本秀美, 多田裕, 増谷進, 田中敏章, 板橋家頭夫, 田中政信, 松田義雄, 山縣然太朗(2012)乳幼児身体発育評価マニュアル. 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業, 「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」, pp. 67.

 

 

 

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