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#64 思春期に起こる心理的問題

 今回は、思春期に起こりやすい心理的問題について紹介します。“心理的問題”という言葉から、治療が必要な病気の問題が想像されるかもしれません。しかし、今回はそういった問題ではなく、競技現場でしばしば“問題”とされる事柄について取り上げ、心理的側面から解説します。

・心理的問題の考え方

次のような選手達は、指導者の目にはどのように映るでしょうか。

「選手Aは、ちょっとしたミスを気にして、いつも硬い表情で練習している。完璧を求めすぎて神経質になっているように見える。“あまり考えすぎるな”と声を掛けると、泣いてしまうので困っている。」

「選手B の怪我は回復していて、主治医からも競技復帰のOKをもらっている。しかし、本人はずっと痛みや違和感を訴えている。念の為、再検査をしたが、やはり主治医からは“怪我は完治している”と言われ、無理にでも練習をさせるべきか悩んでいる。」

「選手Cは、サボるわけではないが、積極的に練習しようとしないと言うか、勝ちたいという強い気持ちが感じられない。身体能力が高いので、努力すれば日本代表として戦える選手になれる可能性は十分にあるだけに、もどかしい。」

競技現場において選手A、B、Cのようなアスリートは、“問題を抱えているアスリート”と言えるでしょう。こういったアスリートに対し、周囲の大人は解決策や対処法を考える前に「なぜ、このような“問題”が生じているのか」という視点で関わることが大切です。

 アスリートに限らず、子どもは心に問題を抱えた時、それが身体の症状や普段と違う行動となって現れやすいと言われています。山登(2011)を参考に、心理的問題が背景にあると考えられる症状を表1に示しました。

表1

大人であれば、自分自身の心身の状態を把握することや、言葉を使って、自分の経験や感情を整理し、それを周囲に説明することができます。しかし、発達途中の子どもは、大人のように言葉を使うことが上手ではありません。言葉で把握したり、伝えたりできないぶん、心に問題を抱えた時「涙」「身体の痛み」「練習に身が入らない」といった、身体の症状や行動で問題が表現されやすいのです。

 

・心理的問題が成長の契機(きっかけ)になる

 子どもが、言葉を使って、自分の経験や感情を整理し、それを周囲に説明することができるようになるためには、身近に優れた聞き手が必要であると言われています(岩宮,2009)。優れているというのは、カウンセリングの技術や知識を有するといった意味ではなく、なんとか自分の気持ちを表現しようとする子どもの言葉を、理解しようという姿勢を持って聞いてくれることです。この時無理に悩みを聞き出そうとする必要はなく「話したい時はいつでも話を聞くよ。」と言うスタンスを大切にしてください。また、話を聞く際も、良いアドバイスをしなければ、と構える必要はありません。「そうか。そうなんだね。」と聞いてくれるだけでも、子どもは自分自身の気持ちと向き合うことができます。このような体験を通じて、自己理解やコミュニケーション能力が育っていきます。

 中込(2015)は、あるカウンセラーの表現を引用し、心理相談室に来談したアスリートが心理的問題に向き合うことの意味を“4C”で説明しています。「競技生活の中で何らかの悩みを抱えたことが来談行動となり、それは心理的危機(Crisis)にあると言える。悩みの多くは、それまでのようなやり方、考え方ではこれからはやっていけないと、何らかの変化を迫られている状況との見方ができる。良い方向に変化(Change)させるために相談は好機(Chance)となり、それに挑戦(Challenge)することが今必要とされているのではないか(以後省略)。」思春期年代のアスリートを支える周囲の大人は、彼らが心理的問題を抱えないように働きかけるのではなく、心理的問題が成長の契機となるように関わることが重要であると言えます。

 次回のブログでは、思春期年代のアスリートのストレスについて紹介する予定です。

 

参考文献

  • 山登敬之(2011)どこまで健康?どこから病気?.山登敬之・斉藤環(編),こころの科学 入門 子どもの精神疾患−悩みと病気の境界線.日本評論社:東京,2-7.
  • 岩宮恵子(2009)フツーの子の思春期−心理療法の現場から.岩波書店:東京.
  • 中込四郎(2015)アスリートがカウンセリングルームを訪れるとき.中込四郎・鈴木壯(編著),スポーツカウンセリングの現場から−アスリートがカウンセリングを受けるとき.道和書院:東京,18-32.

 

#63 身体だけでなく“こころ”も成長する競技体験を目指して

 人間の心の発達について、精神分析学者・臨床医のE.H.エリクソンは「人間の8つの発達段階」と題する人間生涯全般にわたる発達論を提唱しています。そこでは、人間の心は常に生涯を通じて成長・発達していくものであるという展望が示されています。「人間の8つの発達段階」では、人の一生を「乳児期」「幼児前期」「幼児後期」「児童期」「思春期・青年期」「成人初期」「中年期」「老年期」の8つに分け、それぞれの時期に特に目立って成長・発達する段階があると説明されています。今回は、その中でも「思春期・青年期(小学校高学年頃〜大学生頃)」の心の成長とアスリートの競技体験について、読者の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

・思春期(小学校高学年〜高校生頃)の特徴

思春期における心の成長の代表的特徴として、大人(例えば、保護者や指導者)から心理的に自立しようとする動きが現れます。具体的には、それまで無条件に受け入れていた大人の物の考え方や価値観に対し、疑問を持つようになります。それが反抗的な態度として表れる場合もあれば、あからさまな態度としては表れない場合もあり、個人差があります。しかし、大人と子どもが、お互いを個として尊重し合う新たな関係性構築の時期であることは共通しています。思春期は、その後の青年期に「“自分とはどんな人間か”を考え、“人生をどう生きていきたいか”を見つける(アイデンティティの確立)」ための大切な準備期間です。

・青年期(高校生後半〜大学生頃)の特徴

先に述べたように、青年期は「アイデンティティの確立」が心の発達課題としてあげられます。この時期は、人生の分岐点として重要な選択を迫られます。その代表的な出来事が、進路選択です。複数の進路から一つを選択することは、同時に他の可能性を捨てることでもあり、そういった選択にはとても勇気が必要であるため、「先生が勧めてくれるから」や「親が望んでいるから」など、選択の意思決定を他者に委ねてしまいたくなるかもしれません。しかし、その先の人生において困難に直面したり挫折を経験した際、それを先生や親のせいにしても、過去の選択を変えることはできません。そのため、主体的に選択することがとても大切であり、思春期に自分なりの価値観を模索し、心理的自立を目指した取り組みが、ここで生きてくるのです。

・心を成長させる競技体験

心理相談でお会いする大学生アスリートが、次の様な戸惑いを話すことがあります。「大学に入学したら、先生から“自分の課題は何なのか、自分でよく考えて練習するように”と言われたけど、自分で考えたことが正しいのか不安。今までは、先生が課題を指摘してくれて、それを克服するために練習する感じだったから。」このアスリートの戸惑いの背景について考えてみたいと思います。

スポーツ(競技)への取り組みによって心の成長を促進させるためには、押さえておくべきポイントがあります。その一つに、アスリートは競技の中で身体を通して、自分自身を振り返る態度を身に付けておくことが必要であると言われています(江田ほか,2012)。この態度を育む指導者の関わりとして、アスリートのパフォーマンスを共感的に理解することが大切です(坂入,2018)。動作解析結果や測定記録などをもとに選手のパフォーマンスを理解することを客観的理解と呼ぶのに対し、選手自身がどう感じているか、どう考えているか、から選手のパフォーマンスを理解することを共感的理解と呼びます。

指導者が共感的な理解を持って関わってくれた経験は、アスリートが自身の身体感覚や特徴を把握する助けとなります。そして、それが競技場面での気づきや洞察を深めることに繋がると言われています。

次回のブログでは、思春期に起きる心理的問題について紹介する予定です。

奥野 真由 (OKUNO Mayu)
  久留米大学
  人間健康学部 スポーツ医科学科 助教

参考文献

  • 江田香織・中込四郎(2012)アスリートの自己形成における競技体験の内在化を促進する対話的競技体験.スポーツ心理学研究,39(2):111-127.
  • 坂入洋右(2018)体育・スポーツ・健康の指導における自己と他者の関係性の変革−トップダウンからボトムアップへのパラダイムシフト−.体育の科学,68(5):348-352.

#61 足を速くする方法とは!?【発育発達編】 Vol.2

発育発達とスプリント能力

 人は2歳ごろから走ることができるようになり、6、7歳ごろまでに成人と同じような走動作を獲得するとされています(宮丸,2002)。1歳から成人までの疾走能力の発達を追っていくと、下記のようなポイントにまとめられます(加藤,2004)。

【疾走速度】

男子:加齢に伴って17歳頃まで増大するが、その後停滞傾向を示す

女子:13歳頃まで増大し、以降停滞する

 

【ストライド】

男子:14〜15歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

女子:13〜14歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

 

【ピッチ】

男子:2〜14歳頃まで明確な変化はないが、15~17歳にかけて増大する

女子:2歳から成人まで明確な変化なし

 

以上の結果から、1歳半〜12歳までの疾走速度の増大は、男女ともにピッチよりもストライドの増大によるものであるが、男子の15歳〜17歳における疾走速度の増大は、ストライドよりもピッチによるものであるとし、思春期における疾走能力の発達に明確な男女差があることが分かっています。(加藤,2004)。また、横山ほか(2012)の報告によると、身長が一番伸びる時期は、女子は12歳頃、男子は14歳頃であり、身長の増加が停滞してくるのが女子は14歳頃、男子は16歳頃からであるとされています。よって、思春期前後までにおいては、身長が伸びて、筋量も増えていくことでストライドが増大し、その結果として疾走速度が増大していることが推察されます。以上より、発育発達に伴って疾走速度が自然とある程度増大していきますが、身長が伸びることでのネガティブな影響や、身長が伸びなくなってからのトレーニングで気をつけるべきポイントがあります。

まず、身長が伸びると、四肢が長くなっていくためモーメントアームが長くなり、高速で四肢を動かすためにはより高い筋力や神経系機能が必要になります。そのため、身長が急激に伸びると俊敏に動くクイックネスが低下する可能性があります。また、身長が伸びると骨と筋腱の成育に不均衡が生じ、筋腱の緊張が一時的に高くなることがあり、いわゆる身体の柔軟性が低下する可能性があります。よって、動的可動域の確保とケガ予防のために、柔軟性を維持する必要があります。以上のことを踏まえ、発育発達に応じたスプリントトレーニングを行う際の注意点は以下のようになります。

 

 ①クイックネスの維持・向上、ひいてはピッチの維持・向上のため、神経系機能トレーニング(SAQトレーニングなど)をしっかりと行う

 ②動的可動域の確保とケガ予防のために、ストレッチング(スタティック、ダイナミックともに)をしっかりと行う

 

 これらの内容に留意しながら、トレーニングで足を速くすることの楽しさを存分に味わってください!

図1 年齢にともなう疾走速度、ストライド、ストライド/身長、ピッチの変化

※宮丸(2002)より引用

 

関西福祉大学 講師 熊野陽人

 

[資料]

・加藤謙一(2004)走能力の発育発達. 金子公有・福永哲夫編, バイオメカニクス-身体運動の科学的基礎-. 杏林書院:東京, pp.179-180.

・宮丸凱史 (2002) 疾走能力の発達: 走り始めから成人まで. 体育学研究, 47: 607-614.

・横山徹爾, 加藤則子, 瀧本秀美, 多田裕, 増谷進, 田中敏章, 板橋家頭夫, 田中政信, 松田義雄, 山縣然太朗(2012)乳幼児身体発育評価マニュアル. 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業, 「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」, pp. 67.

 

 

 

#60 足を速くする方法とは!? Vol.1

 “速く走る”ことは様々なスポーツ種目において必要なことであり、パフォーマンスレベルにも大きくかかわる要素のひとつです。足を速くするためにはどんなことが必要なのか、本コラムで3回にわたって科学的知見を交えながら紹介していきます。

 

ピッチかストライドか

 陸上競技だけでなく、球技などの様々なスポーツにおいて、速く走る能力、つまりスプリント能力がパフォーマンスに強く関わってきます。スプリント能力は疾走速度によって評価されますが、疾走速度は「疾走速度(m/秒)=ピッチ(歩/秒)×ストライド(m)」という式で表されます。ピッチは、いわば脚の回転する速さのことで、一定時間内の歩数を表します。ストライドは、1歩の歩幅を表します。なお、ピッチとストライドという用語が一般的に用いられますが、「ストライド」という用語は,本来は「2歩(ある足の接地からもう一度同じ足が接地するまで)の歩幅」を表します。1歩(ある足の接地から逆側の足の接地まで)を意味する正しい用語は「ステップ」です。したがって、厳密に言うと「ピッチ」は1ステップの頻度である「ステップ頻度」、「ストライド」は1ステップの長さである「ステップ長」と表すのが正確です。しかし、理解しやすくするために、本コラムでは、一般的な用語であるピッチとストライドという表現に統一します。

 上述した式にあるように、疾走速度はピッチとストライドの積で決まるとすると、疾走速度を高めるには以下の5つの選択肢が考えられます。

 

 ①ピッチとストライドの両方を増加させる

 ②ピッチを維持して、ストライドを増加させる

 ③ピッチを犠牲にして、それ以上にストライドを増加させる

 ④ストライドを維持して、ピッチを増加させる

 ⑤ストライドを犠牲にして、それ以上にピッチを増加させる

 

 果たして、疾走速度を高めるためには、ピッチとストライドのどちらが重要なのでしょうか?結論から言うと、ピッチのほうが重要であるとする説とストライドの方が重要であるとする説の両者が存在し、結論が出ていないのが現状です。また、トップアスリートの中でも、ピッチが特に高い者もいれば、ストライドが特に大きい者もいます。アスリート個人の中でのパフォーマンス変動をみても、パフォーマンスがピッチに依存する者もいればストライドに依存する者もいます(Salo et al., 2011)。つまり、ピッチが重要かストライドが重要か、個人の特性に大きく依存するため、ケースバイケースということになります。また、ピッチとストライドは、疾走速度がほぼ同じの場合、一方を高めればもう一方が低下するトレード・オフ関係にあるため (Hunter et al., 2004) 、どちらか一方のみを重要視することはあまり得策ではありません。以上のことを考えると、①・②・④の選択肢がベターであると言えます。

 では、ピッチやストライドに影響を与えるのはどんな要因でしょうか?Hunter et al. (2004) は,両者に大きく影響を及ぼすのは滞空時間であり、滞空時間が短いとピッチが高くなり、滞空時間が長いと滞空距離が大きくなることでストライドが大きくなる傾向にあると報告しています。高いピッチを獲得するためには、滞空時間を短くすることが重要になり、素早く脚を回復し接地しなければなりません。そのためには、脚の動作範囲を小さくすることや(阿江, 2001)、脚を素早く動かすために、股関節の屈曲伸展に関わる筋群(大殿筋、ハムストリングス、内転筋など)が大きな力を発揮することが必要になります。また、大きなストライドを獲得するためには、接地中に地面により大きな力を加えることで、滞空時間を長くすることが重要になります(山元, 2014)。そのためには、接地中に下肢の各関節が大きな力を発揮することが重要であると考えられます。以上のことから、ピッチを高めるにしてもストライドを高めるにしても、下肢で発揮できる力を大きくする必要があるため、下肢の筋力を高める必要があるでしょう。さらに、ピッチを高める場合には、脚をコンパクトに動かす、素早く動かすために神経系機能(神経-筋の協調性)も向上させる必要があると言えます。この辺りを意識してトレーニングを行うことが、疾走速度の向上には必要になってきます。

関西福祉大学 講師 熊野陽人

 

[資料]

・阿江通良 (2001) スプリントに関するバイオメカニクス的研究から得られるいくつかの示唆. スプリント研究, 11: 15-26.

・Hunter, J. P., R. N. Marshall, P. J. Mcnair. (2004) Interaction of step length and step rate during sprint running. Med. Sci. Sports Exerc., 36 (2) : 261-271.

・Salo, A. I. T., Bezodis, I. N., Batterham, A. M., and Kerwin D. G. (2011) Elite Sprinting: are athletes individually step-frequency or step-length reliant?. Med. Sci. Sports Exerc., 43(6): 1055-1062.

・山元康平 (2014) スプリント走におけるピッチとストライドに関係する要因. RIKUPEDIA 陸上競技の理論と実際: http://rikujo.taiiku.tsukuba.ac.jp/column/2014/14.html.

 

 

#59 サッカーとジュニア【無酸素トレーニング編】 Vol.4

4:無酸素性トレーニング

 無酸素性のトレーニングは、スピードトレーニングとスピード持久力トレーニングに大別されます。さらに、スピード持久力トレーニングは、メンテナンストレーニングとプロダクショントレーニングに分けられます。

 4-1:スピードトレーニング

 スピードトレーニングは、瞬時に動作を起こす必要性のあるゲーム状況を認知する能力の向上、瞬時に動作を起こす能力の向上および高強度運動の中で素早く力を発揮する能力の向上を目的として行われます。スピードトレーニングの原則を表4に示します。スピードトレーニングを実施する際は、短い時間で全力を出し切ることが重要です。スピードトレーニングの例を図9に示します。

表4:スピードトレーニングの原則

    

図9:スピードトレーニング例(キャッチ)

 

4-2:スピード持久力トレーニング

 スピード持久力トレーニングは、無酸素性のエネルギー供給によって、瞬時にパワーとエネルギーを発生する能力を高めたり、パワーとエネルギーを持続的に発生し続ける能力を高めたりすることを目的として行われます。スピード持久力トレーニングの原則を表5に示します。スピード持久力トレーニングもスピードトレーニングと同様に主運動中は、極めて高い強度で実施する必要があります。メンテナンストレーニングの例を図10に、プロダクショントレーニングの例を図11に示します。

表5:スピード持久力トレーニングの原則

図10:スピード持久力メンテナンストレーニング例(アタッキング)

図11:スピード持久力プロダクショントレーニング例(ハンティング)

 スプリントパフォーマンスは、スピードトレーニングを実施することで向上することが期待できます。高強度運動パフォーマンスは、スピード持久力トレーニングや有酸素性高強度トレーニングを実施することで向上することが期待できます。

 

5:サッカーにおけるパワートレーニングの考え方

 サッカーでは、パワートレーニングを①基礎パワートレーニング②変換パワートレーニング③サッカーパワートレーニングの3つに分類して考えることができます(図12)。

図12:サッカーのパフォーマンスと3つに分類したパワートレーニングとの関連

 5-1:基礎パワートレーニング

 基礎パワートレーニングは、フリーウェイトや各種トレーニング機器を用いて高い外的負荷に対して動作を行います。スクワットやレッグプレスなどがトレーニング例です。

5-2:変換パワートレーニング

 変換パワートレーニングは、トレーニングを通して、ジャンプや急激な加速・減速、方向転換のように基礎的な筋力をサッカーに関連した動きの中で発揮する能力を高める内容です。ボックスジャンプやハードルジャンプなどがトレーニング例です。

5-3:サッカーパワートレーニング

 サッカーパワートレーニングは、基礎や変換パワートレーニングで養った能力をシュート、加速・減速、スプリントなどの強度の高い試合中の動きに還元できるようにする内容です。サッカーのパワートレーニングの例を図13に示します。

図13:サッカーパワートレーニング例(加速・減速・シュート)

 筋発揮パフォーマンスは、これらのパワートレーニングを参考に実施することで向上することが期待できます。

 

  4回にわたり、ブログを書きました。現代のエリートサッカー選手にはどのような能力が求められているのか、その能力はどのように客観的に評価することができるのか、そしてその能力はどのようなトレーニングで向上することができるのか、について誰かの参考になれば幸いです。

 

引用文献

・ヤン・バングスボ(2008)ゲーム形式で鍛えるサッカーの体力トレーニング.大修館書店・東京.

・ヤン・バングスボ,イェスペル・L・アナセン(2018)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手のパワートレーニング.大修館書店・東京.

・広瀬統一,菅澤大我(2016)サッカーボールを使ったフィジカルトレーニング.ベースボール・マガジン社・東京.

中京大学スポーツ科学部 准教授 大家 利之

#58 サッカーとジュニア Vol.3【体力をあげる!】

 前回のブログでサッカー選手に特に必要な4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手の基準値について紹介しました。今回のブログでは、その体力的要素を向上させるトレーニング方法について紹介します。

 現代のサッカーでは、持久的パフォーマンス、高強度運動パフォーマンス、スプリントパフォーマンスおよび筋発揮パフォーマンスを高く発揮する能力がエリート選手には、特に重要であることを以前のブログで説明しました。これらの能力を向上させるためには、ウェイトトレーニングなどで基礎的な筋力を向上させたり、パワー発揮能力を向上させたりすることは大変重要なことです。

 基礎的なトレーニングについての詳細が知りたい方は、スポーツおきなわのスタッフにお問い合わせ頂くとして、本ブログでは持久的パフォーマンス、高強度運動パフォーマンスおよびスプリントパフォーマンス向上のために、サッカーボールを用いたトレーニング方法の原則およびトレーニング例について紹介します。また、筋発揮パフォーマンスのトレーニングについては、サッカーでどのように考えるべきかについての例を簡単に紹介します。

1:サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素

 ボールを用いたサッカーのトレーニング方法は無限に考えることができます。トレーニング内容を決定する上で重要なことは、サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素について理解することです。サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素は主に8つです(表1)。例えば、4対4のスモールサイドゲームを実施する場合、②のルール要素において、1回に触ることができる回数(タッチ数)に制限を設けることでフリータッチと比較して運動強度が上がり、⑦のストレス要素においてコーチの激励(コーチング)があることによってない場合と比較して運動強度が上がると報告されています(図1)。トレーニングの目的に応じて、これらの要素を変更し、トレーニング強度を決定することが重要です。

表1:サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素

要素

変更例

①ボール

数、サイズ、形、重さ

②ルール

禁止事項、条件設定

③ゴール

数、大きさ、設置する位置

④フィールド

面積、形(縦と横の比率など)

⑤選手(味方、相手)

それぞれの数、GKの有無

⑥トレーニング時間

長さ、反復回数

⑦ストレス

コーチからのコーチング、プレッシャー

⑧配球

どこから始めるか、どういうボールを出すか

図1:サッカーのトレーニング強度とトレーニング要素の変更との関係(ストレングス&コンディショニングジャーナル,Vol25,No.2,2018)

        

2:サッカーボールを用いた体力トレーニング

 サッカーの体力トレーニングについて、ここでは日本サッカー協会の指導者講習会で用いられている考え方を紹介します。日本サッカー協会の指導者講習会では、図2のように体力トレーニングを分類しています。ここでは、有酸素性および無酸素性トレーニングのことについて説明します。

図2:サッカーの体力トレーニングの分類

 

3:有酸素性トレーニング

 有酸素性トレーニングは、互いに重なりあった3つの領域に分類されます。低強度、中強度、高強度の3種です。有酸素性トレーニングの原則を表2に示します(最大心拍数を200拍/分と仮定した場合)。

表2:有酸素性トレーニングの原則

 3-1:有酸素性低強度トレーニング

 有酸素低強度トレーニングは、試合やトレーニング後の素早い回復を促すことを目的として行われます。図3は、ある有酸素性低強度トレーニングを40分間行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性低強度トレーニングは、持続的な運動または間欠的な運動のいずれで実施しても問題ありませんが、間欠的な運動として行う場合は、主運動の時間が5分以上になるようにトレーニング時間を設定する必要があります。

図3:有酸素性低強度トレーニング中の心拍数の変化例

 3-2:有酸素性中強度トレーニング

 有酸素性中強度トレーニングは、長時間にわたって運動を行う能力を向上させることを目的として行われます。図4はゲーム形式のスコアリングコーン(図5)を行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性中強度トレーニングも低強度トレーニングと同様に、持続的な運動または間欠的な運動のいずれで実施しても問題ありませんが、間欠的な運動として行う場合は、主運動の時間が5分以上になるようにトレーニング時間を設定する必要があります。

 

図4:有酸素性中強度トレーニング(スコアリングコーン)中の心拍数の変化例

図5:有酸素性中強度トレーニング例(スコアリングコーン)

3-3:有酸素性高強度トレーニング

 有酸素性高強度トレーニングは、長時間にわたって、高強度運動を行う能力を向上させることを目的として行われます。有酸素性高強度トレーニングは、間欠的な運動(インターバル方式)で行います。運動時間と休息時間の比率は表3の通りです。図7は、運動時間2分、休息時間1分の有酸素性高強度トレーニングを行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性高強度トレーニングの例を図8に示します。

表3:有酸素性高強度トレーニングの運動時間と休息時間の組み合わせ例

図7:有酸素性高強度トレーニング中の心拍数の変化例

図8:有酸素性高強度トレーニング例(5対5 マンツーマンボールキープ)

 持久的パフォーマンスは、有酸素性の中強度、高強度トレーニングを実施することで向上することが期待できます。表2および表3の原則を参考にして、トレーニングを実施して下さい。

 

最終vol.4へ続く。

 

 

引用文献

・ヤン・バングスボ(2008)ゲーム形式で鍛えるサッカーの体力トレーニング.大修館書店・東京.

・ヤン・バングスボ,イェスペル・L・アナセン(2018)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手のパワートレーニング.大修館書店・東京.

・広瀬統一,菅澤大我(2016)サッカーボールを使ったフィジカルトレーニング.ベースボール・マガジン社・東京.

#57 サッカーとジュニア Vol.2【持久力編】

 前回のブログでサッカー選手に特に必要な4つの体力的要素について説明しました。今回のブログでは、その体力的要素の測定方法とプロサッカー選手の基準値について紹介します。

①持久的パフォーマンス

 持久的パフォーマンスを発揮する能力を最も精度高く評価できる指標は、最大酸素摂取量です。最大酸素摂取量とは、1分間あたりで摂取される酸素摂取量の最大値のことで、この値が高い程持久的能力が高いと評価することができます。プロサッカー選手の最大酸素摂取量の平均値は、50~75ml/kg/minであり、あるJリーグチームの平均値は57.3 ml/kg/minであると報告されています。しかしながら、最大酸素摂取量の測定は、高額な機器が必要であり、また専門的な知識をもった測定者が必要です。最大酸素摂取量を測定したい人は、一度スポーツおきなわのスタッフに問い合わせてみてください。

 このように最大酸素摂取量を直接測定するためには、さまざまなコストがかかるため、一般的には、サッカー選手の持久的能力は、フィールドテストを行い、その結果から最大酸素摂取量を推定する方法が用いられます。代表的な測定としては、文部科学省の新体力テスト項目である20mシャトルランニングです。サッカーでは、YO-YO Endurance Testの結果から最大酸素摂取量を推定する方法を用いることもあります。YO-YO Testの詳細は下記から調べることができます。

http://sandcplanning.com/solution/category/detail/?cd=10

②高強度運動パフォーマンス

 高強度運動パフォーマンスを発揮する能力の測定には、YO-YO Intermittent Recovery Test(YOYOIR)が良く用いられます。YOYOIRの結果と、試合中の高強度ランニング距離との間には、有意な高い正の相関関係があると報告されています(図1)。

   

図1:YOYOIR level1の結果と試合中の高強度ランニング距離との関係

表1に、アンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手のYOYOIR level2の結果を示します。ポジションやその選手のプレーの特徴にもよりますが、プロサッカー選手(GKを除く)の基準値としては、男子であればYOYOIR level2の記録が1000m以上、女子であればYOYOIR level1の記録が1520m以上であると考えられえています。

表1:アンダーカテゴリー男子日本代表選手のスプリントテストおよびYOYOIR level2の結果

③スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。表1にアンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手の20mスプリントテスト時の結果を示します。このデータは、光電管システム(図2)を用いて測定しています。スタートは音や光刺激に反応するのではなく、選手の任意のタイミングで行ったデータです。スタートから10mと20m位置に光電管を設置し、スタートから10mと20mまでの記録が表1に示してあります。同じ測定方法で、ある年の男子日本代表サッカー選手(A代表)のスタートから10mまでのスプリントに要した時間の平均は1.73秒(GK除く)でした。競技レベルが高い程、10mのような短い距離を素早く走る能力に優れている傾向があります。

図2:アンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手のスプリント測定で使用した光電管

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。サッカーでは主にスクワットジャンプ(SJ)、カウンタームーブメントジャンプ腕ふりなし(CMJ腕なし)、カウンタームーブメントジャンプ腕ふりあり(CMJ腕ふりあり)の3種類の測定項目が用いられます。ジャンプの測定方法は、ヤードスティックなどを用いたタッチ式、腰に専用ベルトを巻いてひもの伸びた長さによって測定するひも式、専用のマットスイッチ(図3)を用いて滞空時間からジャンプ高を推定する滞空時間式があります。その中でもサッカーでは滞空時間式でCMJの腕ふりなしの測定値を下肢のパワー発揮能力の指標として用いることが多いです。表2にエリートサッカー選手(プロサッカー選手)の滞空時間式で測定したCMJ腕ふりなしの基準値を示します。プロサッカー選手の基準値としては、男子であれば40~45cm、女子であれば30~35cmであると考えられています。

         

表2:エリートサッカー選手の基準値(マットスイッチを用いたCMJ腕ふりなし)

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素を向上させるトレーニングについて紹介したいと思います。

 

引用文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・ヤン・バングスボ,マグニ・モア(2015)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手の体力測定と評価.大修館書店・東京.

中京大学スポーツ科学部 准教授 大家 利之

#56 サッカーとジュニア vol.1【1試合でどれだけ走る?】

 サッカーは、ルールが分かりやすく、用具をあまり必要としないことから世界的にも人気の高いスポーツです。老若男女問わず、レクリーエーションとして、競技スポーツとして、誰もが楽しめるスポーツです。その中でも本ブログでは、プロサッカー選手に必要な体力的要素やトレーニングについて3回にわたって紹介します。

 

  • サッカー選手は1試合(90分間)でどれくらい走るのか?

 最近では、測定機器が小型・軽量化したことや、競技規則の改正によりサッカー選手の試合中の動きをほぼリアルタイムで数値化することができるようになりした。サッカー選手の試合中の動きを測定するのに良く用いられるのは、GPS(Global Positioning System)を利用したパフォーマンス分析装置です(図1)。

図1 GPSパフォーマンス分析装置(https://archivetips.com/gpexe)

GPSパフォーマンス分析装置を使用したデータから、サッカー選手は、1試合で9km~12km走ると言われています(GKは4kmくらい)。ただし、ほぼ一定のペースで前向きに走る陸上の長距離走種目とは違い、サッカー選手はスプリント、ジャンプ、ターン、シュートやタックルなどさまざまな動き繰り返しながら90分間動き続ける体力が必要です。特に時速15km以上の高強度の動きを繰り返す能力は、シュートチャンスを生み出したり、防いだりする決定的な場面で必要です。高強度な動きを繰り返す能力は、現代サッカーでは特に選手に求められます。

 

  • サッカー選手に必要な体力的要素とは?

 サッカー選手の試合中のパフォーマンス発揮に影響する主な要素は、①心理的・社会的要素、②技術的要素、③戦術的要素、④体力的要素、の4つです。ここではサッカー選手が試合中に高いパフォーマンスを発揮するための体力的要素について説明します。

 サッカー選手に特に求められる体力的要素は、次に示す4つです。1)持久的パフォーマンス、2)高強度運動パフォーマンス、3)スプリントパフォーマンス、そして4)筋発揮パフォーマンスです。

1)持久的パフォーマンス

 先程も書きましたが、サッカー選手は試合中にさまざまな動きを行いながら、90分間走り続けます。したがって、サッカー選手に特に求められるのは、2)で示す高強度運動パフォーマンスを繰り返す能力です。しかしながら、一定強度の運動を持続的に行う基礎的な持久力が全く必要ないわけではありません。高強度運動と高強度運動のリカバリー時(回復時)の素早い回復と、この基礎的な持久力の高さは密接に関係しています。基礎的な持久力もサッカー選手には必要な体力的要素です。

 

2)高強度運動パフォーマンス

 スプリント、ジャンプやシュートなど試合中に高強度な運動を繰り返すことができる能力は現代のサッカー選手に特に求められます。イタリアのトップレベルの選手を対象にしたMohrらの研究によると、時速15km以上の高強度運動は1試合あたり平均2.43kmで、競技レベルが高い選手は低い選手と比較してその距離が長いことを報告しています。

 

3)スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。20m以下の短い距離を素早く走る能力は、試合における決定的な場面で大変重要な体力要素です。試合の中で発揮されるスプリント能力とは、疾走能力だけでなく、認知能力や予測する能力も含まれます。

 

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。

 

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手になるためにはどれくらいの能力が必要かについて紹介したいと思います。

 

参考文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・Mohr et al.(2003)Match performance of high-standard soccer players with special reference to development of fatigue. J Sports Sci; 21: 519-528.

プロフィール

大家利之【おおや としゆき】先生

中京大学スポーツ科学部 准教授

 

 

#55 心拍数でゴルフのスコアを伸ばす!

今回のタイトルのヒントとなる論文はこちら↓

Heart Rate Variability Biofeedback as a Strategy for Dealing with Competitive Anxiety: A Case Study.

今回の論文内容を簡単に説明すると、

”心拍変動と呼吸について理解し、Heart Rate Variability (HRV)  Biofeedback (BFB) トレーニングを実施することで、競技中の不安やストレスが軽減され、それが競技のパフォーマンスにも影響するのかどうか?を調べたケーススタディとなります。

*Heart Rate Variability(HRV)  Biofeedback (BFB) とは、かなりざっくりですが、自分の心拍変動を確認【モニターなどを確認】しながら、複式呼吸を実施したり、心拍変動と呼吸を合わせていくなどのトレーニング方法。【さらに詳しく知りたい方は、参考文献をご参考下さい。】

今回、この内容を調べようと考えた経緯として、#53 ゴルフは、手足が長いと有利?! の内容の中で、有酸素性能力とゴルフのスコアには相関があるという内容をご紹介させて頂いたのですが、”有酸素性能力が高い➾息があがりずらい➾パフォーマンスに心拍数が関係しているのでは?”という素朴な疑問から今回の論文に辿り着くこととなりました。

個人的に期待していたのは、有酸素性能力が高いことで疲れづらくショットが安定しパフォーマンスがあがるのでは?という点だったのですが、今回の内容は少し違う視点でとらえられていたので、みなさんも宜しければご参考下さい。

〇心拍変動と呼吸との関係を知る。

みなさんもご存じの通り、心拍変動には自律神経が関係しており、交感神経が優位になると心拍数は上がり、副交感神経が優位になると心拍数は下がります。心拍変動に影響を及ぼす要因としては、呼吸や感情、体や行動の変化などが挙げられます。また、心拍数は体の内部【神経、内分泌、免疫 etc】を正常且つ一定に保つための恒常性にも影響を及ぼします。

 

〇ケーススタディ内容

 対象:14歳/高校1年生のゴルフ選手【競技歴:7歳~】

    HRV BFBトレーニング前のスコア:平均スコア91【試合】平均スコア70【練習】

〇試合と練習とのスコアにギャップが、、

 本人曰く、競技中のストレスや不安をマネジメントすることが出来ず、パニックになることがある。体の反応としては、呼吸が浅くなる、心拍が速くなる、汗をかく。などが上げられる。これらが原因で、練習通りのスコアが試合で出せないと考えられる。

〇実際のトレーニング

10週間、HRV BFB トレーニングを実施。【合計10セッション, 45-60分/回】

➾1,4,7,10セッションは情報を記録【気分、不安、生理学的指標(ECG,呼吸)etc】/ 2,3,5,6,9 セッションは記録せず。セッション中の呼吸は深すぎないゆっくりとお腹を意識した呼吸を実践。その他にも、毎日20分”ストレスイレイザー”というディバイスを用いて呼吸練習を実施。毎週の試合のスコアを記録。その他にも、心理学的指標として、”The Profile of Mood States (POMS)”や “The Competitive State Anxiety Inventory (CSAI-2) “を用いて、怒り・混乱・落ち込み・疲れ・テンション・活力など6つの気分、自信や冷静さなどを数値化。

”ストレスイレイザー”イメージ写真

 

〇結果

試合時の平均スコアが91から75に向上【-15】

 

合計10セッションのトレーニング終了時には、落ち込みや疲れ等、気分的にマイナスとなるような数値が改善。自信を示す数値に関しては、4ポイント から 26ポイントへと大幅に向上【高校男子アスリートの平均24.5, SD = 5.52】 。

 

まとめ

日頃、無意識に行っている呼吸に意識を向けトレーニングを積むことで効率よくストレスを軽減でき、自信やパフォーマンス向上にも繋がる可能性があるのは面白い視点だと感じました。特に今回のように精神的に未成熟なジュニア選手に対しての取り組みは貴重な情報となる為、今後の指導にも活かしていこうと思います。

また、n=1【被験者】ではあったものの、今回の論文以外にも、HRV BFBトレーニングをおこなうことでレスリングの選手のリアクションタイムやリカバリー時間の短縮、野球のバッティングのパフォーマンスがあがったなどの報告があるようなので、今後も注視していこうと考えています。

P.S. 

タイガーウッズがガムを噛んでいるのは心拍数を落ち着かせる為かな?! 複式呼吸で、吐く息を長く&ガムを噛みながらプレーすると、、

ゴルフのスコアが伸びるかも?!!

Leah Lagos, Evgeny Vaschillo, Bronya Vaschillo, Paul Lehrer, Marsha Bates, and Robert Pandina. Heart Rate Variability Biofeedback as a Strategy for
Dealing with Competitive Anxiety: A Case Study. Applied Psychophysiology & Biofeedback. Volume 36, Issue 3, pp. 109–115, 2008.

Heart Rate Variability(HRV)  Biofeedback (BFB)トレーニング詳細⇩

Lehrer, Vaschillo, and Vaschillo. Resonant Frequency Biofeedback Training to Increase Cardiac Variability: Rationale and Manual for Training. Applied Psychophysiology and Biofeedback 25(3):177-91, 2000.