#52 テニスのサーブが速くなる秘策は回転と〇〇の前方への移動!

今回のテーマのヒントになる論文はこちら↓

“Professional tennis players’ serve: correlation between segmental angular momentums and ball velocity” 

タイトルをそのまま、訳してみると、”プロテニス選手のサーブ時の体の各部位における角運動量とボール速度との関係について。” となります。なにやら、難しいタイトルですね(;’∀’)。

現代のテニス競技は男女問わずサーブ時のスピードがより重要視されています。勝つための秘訣はサーブのスピードにあり!! ということで、今回はサーブのスピードをアップさせるためのヒントについてご紹介させて頂きます。

 

さっそく、今回の内容をまとめてみると、

テニスのサーブが速くなる秘訣は、体の回転動作【回旋】& 体幹の押し出し【側屈】を大きく素早く行うこと!

体の回転動作【回旋】①体幹➾②上半身➾③腕➾④ラケットへと体の連動【順番】を抑える。

特に、肘が最大限に曲がったポジション (MEF) からボールインパクト (BI) までの”体の各部位の回転動作”と、インパクト(BI)時に力発揮を高める”体幹の前方への移動【側屈】”が重要なポイントとなります。

MEF, BI に関しては下記の図を参照。

また、押し出し【体幹を前方に倒す】をうまく行う為には、ボールを真上ではなく斜め上方向へ投げるのもサーブ速度を上げる為のテクニックの一つと考えられます。

その他にも、インパクト前の肘伸びきるスピード、肩関節の内旋動作、手首使い方などもサーブの球速に影響しているようなのでそちらに関しては、また別の機会にご紹介できたらと思います。

以下は、今回の論文の詳細となりますが、、

如何せん、バイオメカニクスは専門でない為 うまくまとめることができず(;’∀’)。

とりあえず、まとめてみたのでご興味のある方は参考程度に確認してみて下さい💦

 

〇対象選手

プロテニス選手 10名 【年齢25.1±5, 身長187cm±6cm, 体重79.4kg±7.4kg】シングルス ATP  ランキング 【 17th, 88th, 118th, 147th, 287th, 522nd, and 921st】  ダブルス ATP ランキング 【35th, 48th,and 210th】

〇測定方法

フラットサーブをターゲットエリア【1.5m×1.5m】に打ち込んだ際の”体の各部位の角運動量”と”サーブの球速”との関係を測定。

サーブの動きを5つのポジションに分類。

BT: ボールトス(ball toss)

MEF: 肘が最大に曲がったポジション(maximal elbow flexion)

RLP: ラケットが最大に下がったポジション (racket lowest point)

MER: 肩が最大に外旋したポジション (maximal shoulder external rotation)

BI: ボールインパクト(ball impact).

〇結果

  1. ①肘が大きく曲がる (MEF) ②ラケットが下がっている (RLP) ③肘が外旋している (MER) ポジションにおいて、体幹のx軸における角運動量がサーブの速度に大きく関わっている。
  2. ②ラケットがさがっている (RLP) ③肘が外旋している (MER) ポジションにおいて、上半身のx軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  3. ③肘が外旋している (MER) ④ボールインパクト (BI) のポジションにおいて、腕のx軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  4. ①肘が大きく曲がる (MEF) ④ボールインパクト (BI)のポジションにおいて、体幹をy軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  5. その他、省略。

まとめ

 ①”体の各部位”と”サーブ速度”とのポジションごとにおける相関関係の変化、②体の中心【体幹】から末端【手首やラケット】への力の連動、③体幹の前方移動など、今後のトレーニング指導のヒントになりそうです。

P.S.

バイメカは基礎知識がないと難しい。。今後は、色々な先生方にも情報配信をお願いしてみよう!と改めて感じさせられた今日この頃です。

参考文献

Caroline Martin a, Richard Kulpa a, Paul Delamarche a& Benoit, Bideau. Professional tennis players’ serve: correlation between segmental angular momentums and ball velocity. Sports Biomechanics, iFirst article, 1–13, 2013.

#ゴルフは、手足が長いと有利?!

今回のお題のヒントになる論文がこちら↓

“PHYSIOLOGICAL CORRELATES OF GOLF PERFORMANCE”

ざっくりと説明すると、生理学的指標とゴルフのパフォーマンスとの関係について調べた論文で、下記の項目がそれぞれの指標として用いられていました。

〇人体測定

➾年齢 体重 身長 BMI【Body mass index】 座高 手足の長さ

〇フィットネステスト

➾柔軟性 バランス パワー 筋力 筋持久力 有酸素性能力【推定】

〇ゴルフパフォーマンス

➾ドライバーのボールスピード&飛距離 5番アイアンのボールスピード&飛距離 スコア パーオン チップショット後のパターの平均距離 サンドショット後のパターの平均距離 パット数

対象:カナダのナショナルチームメンバー24名【男子15名女子9名】

 

手足が長いとゴルフは有利?! 結果は、

手が長いと飛距離アップという点では有利!!!

【足の長さはパフォーマンスとの関係に相関なし】

これに関しては、手が長い【レバーが長い】選手はスイングが大きくなる分、よりボールに力を与えることができます。勿論、長い手をコントロールする筋力が備わっていることも条件ではありますが。

しかしながら、スコア、サンドショット後のパターの平均距離、パット数など手の長さと負の相関があることから、より正確性が求められるショットにおいては手の長さがデメリットとなる可能性があることもわかりました。

座高に関しても、手の長さと同じ傾向がみられました。

また、筋力という点では腹筋と懸垂の方がパフォーマンスとの相関が高いという点も触れておく必要がありそうです。体前面においては腹筋、後面は背中、ゴルフ特有の回旋動作を考えるとパフォーマンスに影響することは勿論、これらの筋力のバランス【表と裏のバランス】をとることも障害予防の点から考えると非常に重要な要素だと考えられます。

その他にも、興味深いと感じたのが有酸素性能力とゴルフのパフォーマンスとの関係には相関があるということです。パワフルなショットを打つ為には筋力強化が必要ですが、有酸素運動は時に筋力強化の妨げとなることや、マラソンランナーのように持続的に力発揮を行うことがないことから、必要性を見いだせないというのが多くの方が意見ではないでしょうか。

可能性として、ゴルフの競技は1日で10km程度も移動することから、有酸素性能力の低い選手はリカバリー効率が悪く、気づかないうちにショットの精度が落ちているのかもしれません。いずれにせよ、有酸素性能力が高い選手が、ゴルフのパフォーマンスが高いという結果になったことを踏まえると、他の選手に比べ明らかにその能力が低い選手は持久力を高める為のトレーニングを取り入れる必要がありそうです。

まとめ

手の長さがパフォーマンスとの間に相関があると同時に、メリットとデメリットについてもゴルフ特有の飛距離&正確性という点から考えると収穫だったのではないでしょうか。今回の論文から、”心拍数とゴルフのパフォーマンスとの間に相関はあるのか?”というまたべつの疑問が浮かび上がってきたので実際に調べてみようと思います(^^♪。

 

参考文献

GREG D. WELLS, MARYAM ELMI, AND SCOTT THOMAS. PHYSIOLOGICAL CORRELATES OF GOLF PERFORMANCE. Journal of Strength and Conditioning Research. VOLUME 23, NUMBER 3, MAY 2009.

#52 重たいボールでトレーニングをしたら、球速はアップするが、ケガのリスクも増える?!

今回ご紹介する文献はこちら↓            

“Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates” 

簡単に説明すると、”通常より重たいボールを用いて6週間ピッチング練習を行うと球速、ピッチング時の腕のバイオメカニクス、可動域、ケガのリスクにどのような影響を及ぼすのか?”という内容です。

結論は、、

何名かの選手にとっては、球速があがるという点では効果があるかもしれないが、それと同時にケガのリスクも増える可能性がある。また、球速が上がった理由として肩の受動的外旋可動域の動きが関係している可能性がある。

〇背景

 ここ最近のメジャーリーグ平均球速が、2008年に90.9マイルだったのが、2017年には93.2マイルにまであがってきており、アマチュア野球においても同じような傾向【球速アップ】がみられる。インターネット上での”投手向け球速向上プログラム(投球動作、腕の筋力&スピードを向上させることで5マイル、もしくはそれ以上の球速アップを目指す)”などのマーケット拡大も大きく影響していると考えられる。いくつかの研究においても、重たいボールを用いたトレーニングプログラムが球速アップに効果があると示している。

球速アップと関連して、肘のストレスやケガの割合が増えることが示唆されており、近年はプロアマ問わず、尺骨側副靭帯の再建手術の数が増えてきているのが現状である。【ニューヨーク州においては、2002年から2011年にかけてユースの野球選手における尺骨側副靭帯再建手術の件数が193%に膨れ上がってきている】しかしながら、球速アッププログラムがケガに及ぼす影響について直接調べた報告は少ない。

〇実験方法

対象:38名【13歳~18歳】/過去12カ月以内にケガがなし。

コントロール群/19名【通常練習】、トレーニング群/19名【重たいボールを用いた練習】

測定項目:*他動的可動域(肩/ 肘)*筋力(肩) *球速(通常5オンスボールを使用)*投球動作(肘の内反トルク&肩内旋速度)

時期 & 頻度:オフシーズン【1~2月中の6週間】。 トレーニング頻度・週3日

トレーニング内容

両群ともオフシーズンの通常ストレングス&コンディショニングトレーニングは実施。

トレーニング群は、週3回、下記のトレーニングを実施。【*各トレーニングポジションで5つの異なるウエイトボール➾2,4,6,16,32オンスを使用。】

〇結果

*38名中トレーニング群の4人が離脱【2人が肘、残りの2人下肢のケガ】

*トレーニング群【80% ➾球速アップ / 8%➾変化なし / 12%➾球速ダウン】。

*コントロール群 【67%➾球速アップ / 19%➾変化なし / 14%➾球速ダウン】

*トレーニング介入後の腕の角速度と肘のストレスに対しては変化なし。

*コントロール群 【13%➾利き手の外旋動作の筋力向上。トレーニング群は変化なし。】

*トレーニング群【肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大。コントロール群は変化なし。】

*トレーニング群【24%の選手がトレーニング中、もしくはシーズン中にケガと継続的に付き合う結果となった。トレーニング期間中ケガで離脱した2選手の肩関節の受動的外旋可動域拡大は非常に大きかった。(10° & 11°向上)コントロール群はケガなし。】

〇論文の内容を踏まえた上でのまとめ

近年、ウエイトボールを利用することで球速アップが期待されるといった内容のプログラムが注目されている。①腕振りのスピードアップと、②腕の筋力向上が球速アップを後押しすると考えられているものの、この研究では、トレーニング群では球速アップしたにも関わらず、①と②の両方とも変化しなかったということは興味深い。また、コントロール群は肩の筋力が向上したという点からも、現在期待されている理論(筋力アップが球速アップに影響を及ぼす)に反する結果となった。肩関節の受動的外旋可動域と球速との間には関連性が【トレーニング群➾肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大】あることから、今後も注目していく必要があると感じた。それと同時に、短期間(6週間)の急激な関節可動域の拡大がケガを誘発してしまう可能性については注視しておく必要がある。特に今回の被験者【13~18歳】のような発育段階においてまだ各関節の動的柔軟性がコントロールできていないカテゴリーにおいては、ウエイトボールを用いたトレーニング介入に関して慎重に考えていく必要があるのではないだろうか。

 

参考文献

Michael M. Reinold, PT, DPT, SCS, ATC, CSCS,*† Leonard C. Macrina, MSPT, SCS, CSCS, Glenn S. Fleisig, PhD, Kyle Aune, MPH, and James R. Andrews, MD§‖. Author information Copyright and License information Disclaimer Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates. Sports Health. 2018 Jul-Aug; 10(4): 327–333.

#51 モチベーションが高まる「ちょうどいい目標」とは??

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今年予定されていた東京オリンピックが来年に延期となってしまいました。選手のモチベーションへの影響が懸念されますが、「延期になってもモチベーションを保ち、その日に向けてやっていきたい」といった力強い選手のコメントもありました。

モチベーション(動機づけ)とは、「行動を開始させ、その行動を適切な方向へと導いていく過程」の総称です。

コーチが選手に動機づけを行う際には、目標を設定することが重要です。なぜなら目標は活動の方向と到達点を示し、選手の行動を適切な方向へと導くものだからです。

しかし、その目標があまりに高過ぎると、行動を開始する意欲が生まれません。逆に、目標が低過ぎても、その目標に進んで取り組む気持ちになれません。つまり、目標が高過ぎても低過ぎても、選手の行動を適切な方向に導くことができないのです。

そこで今回は、選手にとって「ちょうどいい目標」とは??のヒントを与えてくれる「目標の設定が立ち幅跳びの成績に及ぼす効果」(杉原と海野 1976)をご紹介します。

   

この実験では被験者に立ち幅跳びを行わせ、その跳躍距離を成績として評価しています。立ち幅跳びを行う際、被験者には「達成できる可能性の異なるいくつかの目標」を与えます。いくつかの目標とは、「自身の最大跳躍距離の100, 110, 120, 130%の跳躍距離」です。

その結果、下記の図のような結果が得られました。

それぞれの%目標(横軸)で記録された%最大跳躍距離(縦軸)を比較すると、最大跳躍距離の110%を目標にしたとき、立ち幅跳びの成績が最も良くなることが分かりました。

目標を設定せずに立ち幅跳びを行うと、目標を設定した場合よりも成績が悪いことも分かりました。)

最大跳躍距離の110%の目標とは、達成できる可能性が50%くらいのものです。

これらのことから、選手にとって「ちょうどいい目標」とは、自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標であると言えます。

ご紹介したような目標設定は、何回、何mのように明確かつ具体的な数値を設定できる場合に効果的です。サッカー選手のリフティング回数、野球選手の遠投距離、テニス選手のサーブ成功率などの目標設定を行う際に活用してみてはいかがでしょうか?

   

数値目標を設定して練習を行う際には、選手に記録を伝えるフィードバックを行うことをオススメします。下記の図は、目標の設定やフィードバックの実施がパフォーマンスの改善に及ぼす影響を示したものです。

この図のポイントは、目標設定と共にフィードバックを実施したときのパフォーマンスの増加率が、目標設定のみの増加率とフィードバック実施のみの増加率の単純な足し算よりも大きいところです。

すなわち、目標の設定と共にフィードバックを実施することで、パフォーマンス改善への「相乗効果」を期待できるということです。

   

今回のブログでは、選手にとって「ちょうどいい目標」とは「自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標」とお伝えしました。

私の目標は「NAHAマラソンでのサブ4達成」ですが、日々の練習ではサブ4ぎりぎりのレースペースを目標に設定しています。もう少し挑戦的なペースを目標にしなければいけませんね…(汗)

   

参考文献

・松田岩男、杉原隆編著. 4. 運動と動機づけ, 新版 運動心理学入門, 大修館書店, 東京, 54-87, 1987.

・杉原隆. 8. 目標設定と目標志向性, 新版 運動指導の心理学, 大修館書店, 東京, 161-178, 2008.

お知らせ

5月14日現在.

沖縄県における緊急事態宣言解除に伴い、5月15日(金)から当施設内サポートを再開させて頂くこととなりましたのでご連絡差し上げます。

4月7日現在.

コロナウイルス感染拡大予防に伴う、当施設内サポート自粛に関してのご連絡。

自粛期間 4月7日(火)~

#50 STAY HOMEしながら筋肥大!?自重トレーニングでの筋肥大に必要な負荷とは??

 緊急事態宣言が延長され、もうしばらく外出自粛の生活が続きます。筋は活動が減少したり、かかる負荷が減少したりすると萎縮してしまうため、「うちトレ」で「アストレ」を行って筋量を維持しましょうと前回のブログでお話しました。

 「うちトレ」でダンベルやバーベルを使える人は少なく、多くの人は自身の体重を使って筋に負荷をかける自重トレーニングを行っていると思います。自重トレーニングで筋肥大を引き起こすような負荷を筋にかけることはできるのでしょうか?今回のブログでは、自重トレーニングで筋を肥大させるために必要な負荷について考えてみたいと思います。

   

筋肥大にはあるレベル以上の負荷が必要!!

 Tanimotoら(2006)はレッグエクステンションマシンを使って8回×3セットの膝伸展運動を週3回行うトレーニングを12週間継続させ、トレーニングによって膝伸展筋群の横断面積が変化するかを調べました。

 その結果、最大挙上重量(1RM)の~80%の高負荷で行ったトレーニングでは、膝伸展筋群の横断面積が増加することが分かりました。一方、~50%1RMの低負荷で行ったトレーニングでは、膝伸展筋群の横断面積が増加しないことが分かりました。これらの結果から、筋を肥大させるには、あるレベル以上の負荷を筋にかける必要があることが分かりました。

   

筋肥大を目的としたトレーニングに適した負荷とは??

 筋力トレーニングを行う目的は、筋力向上、筋肥大、筋持久力向上に大別されます。トレーニングの目的に応じて筋にかける負荷を変える必要がありますが、それぞれの目的に適した負荷は下の表のようになります。

 筋肥大を目的としたトレーニングでは、最大挙上重量(1RM)の67/70~85%という中程度の負荷が適しています。67/70%1RM、85%1RMの負荷で可能な最大反復回数は、それぞれ12回、6回となります。尚、筋肥大ではなく神経系の機能改善による筋力向上を目的としたトレーニングでは、85%以上の高負荷が適しています。また、筋持久力の向上を目的としたトレーニングでは、67%1RM以下の軽負荷が適しています。

   

得られるトレーニング効果はひとつだけじゃない!!

 最大反復回数の少ない高負荷のトレーニングは筋力向上、最大反復回数の多い軽負荷のトレーニングは筋持久力向上に効果的です。よって、高負荷のトレーニングの主な効果は筋力向上、軽負荷のトレーニングの主な効果は筋持久力向上となります。しかし、下の図に示したように、ある負荷で得られるトレーニング効果はひとつだけでなく、主なトレーニング効果に加えて補助的なトレーニング効果も得ることができます。例えば、最大反復回数の少ない高負荷のトレーニングで最も効果が得られるのは筋力向上ですが、筋肥大や筋持久力向上に関してもそれなりの効果が得られます。

   

自重トレーニングで筋を肥大させるためには??

 筋を肥大させるためには、あるレベル以上の負荷を筋にかける必要があります。ダンベルやバーベルを使わず、自身の体重を使って筋に負荷をかける自重トレーニングを「うちトレ」で行った場合、筋肥大に必要な負荷を筋にかけることはできるのでしょうか?

 筋肥大を目的としたトレーニングに適した負荷は、最大挙上重量(1RM)の67/70~85%の中程度の負荷と言われています。よって、筋肥大に必要な最低限の負荷は、最大挙上重量の67/70%の負荷であると考えられます。67/70%1RMの負荷を用いた場合、反復できる最大回数は12回と言われています。これらのことから、自重トレーニングの最大反復回数が12回以下であれば、筋肥大を期待できる負荷になっていると考えられます。よって、最大反復回数が12回以下の自重トレーニングを90秒前後の休息時間を挟みながら、3~6セット行うことで、筋肥大を目的としたトレーニングになると思われます。

   

おわりに

 今回のブログでは、自重トレーニングによって筋肥大を引き起こすために必要な負荷について考えてみました。具体的な自重トレーニングの方法は、下記のスポーツおきなわのYouTubeチャンネルでご紹介しています。是非ご覧下さい。

https://www.youtube.com/channel/UCxNx7HULFWehXu6FXdZGLwg/featured

 外出自粛期間中に行う「うちトレ」の目的を「コロナ太り防止」や「筋量減少の防止」から「筋肥大」に変えてみてはいかがでしょうか?外出自粛明けにムキムキボディで登場し、友達や同僚をザワつかせましょう!(笑)

   

参考文献

・Tanimoto M, Ishii N. Effects of low-intensity resistance exercise with slow movement and tonic force generation on muscular function in young men. J Appl Physiol 100(4): 1150-7, 2006.

・Sheppard JM, Triplett NT (篠田邦彦, 岡田純一監修). レジスタンストレーニングのためのプログラムデザイン. NSCA決定版ストレングストレーニング&コンディショニング 第4版, ブックハウス・エイチディ, 東京, 479-512, 2018.

・有賀誠司. 筋力トレーニングのプログラム作成. トレーニング指導者テキスト 実践編 改訂版, 大修館書店, 東京, 38-53, 2014.

#49 ストップ!コロナ太り 外出自粛の生活に「うちトレ」のススメ

 外出自粛の生活で運動や生活による活動量が減っていますが、みなさんの体重はどうなっていますか?体重は消費カロリーと摂取カロリーのバランスで変化しますから、消費カロリーがどうしても減ってしまう今の生活では、摂取カロリーが体重変化のポイントになるでしょう。Mayerら(1954)はラットを使って運動時間とカロリー摂取量や体重の関係を調べ、下図のような結果を発表しました。

 「正常な活動量」の範囲では、運動時間が減るとそれに合わせて摂取カロリーが減るため、体重は大きく変化していません。しかし、「正常な活動量」より運動時間が少ない「じっとした生活」では、運動時間が減るほど摂取カロリーが増え、体重が増えています。つまり、「正常な活動量」に満たない「じっとした生活」を送ると、必要以上のカロリーを摂取してしまい、体重の増加を引き起こしてしまうということです。一方、「疲労困憊」まで運動を行わせると摂取カロリーは減少し、体重の減少が引き起こされています。そのような状況は、部活動の合宿で連日疲労困憊まで練習を行ったときに似たものでしょう。

 外出自粛の生活でみなさんの活動量は減っていますが、それに合わせて食事量は減っているでしょうか?いつもより増えていないでしょうか?いつもより食事量が増えている場合は、外出自粛の生活が「正常な活動量」に満たない「じっとした生活」になっている可能性があります。外出自粛の生活が「正常な活動量」を満たすよう、お家でできるトレーニング「うちトレ」を外出自粛の生活に取り入れることをオススメします。「うちトレ」の成果を客観的に評価するため、体組成計を使って体重や体脂肪率の変化を測定することも大切です。体組成計の使用上の注意点を下記のブログで紹介しましたので、測定を行う際には参考にして下さい。

 外出自粛の生活で体重が減っている場合、筋量の減少が心配です。なぜなら筋は活動が減少したり、かかる負荷が減少したりすると、萎縮してしまうためです。Akimaら(2000)は寝たきりの生活を20日間続けると下肢の筋がどのくらい減るかを調べました。その結果、寝たきりの生活によって膝関節の伸展筋群は7.5%、膝関節の屈曲筋群は10.5%、足関節の底屈筋群は14.0%の体積が減少することが分かりました。しかし、寝たきり生活の中で30回のレッグプレスを毎日実施することで、膝関節の伸展筋群の体積低下率を4.0%に抑えることができました。これらのことから、外出自粛の生活においても「うちトレ」で筋力トレーニングを行うことによって、筋量の減少を抑えられると考えられます。筋量の変化は徐脂肪体重の変化によって把握することができます。徐脂肪体重は体重から体脂肪の重さを除いた重さで、[体重-体重×(体脂肪率÷100)]によって求められます。徐脂肪体重の約50%が筋の重さであることから、徐脂肪体重を筋量の指標として用いることができます。

 「ストップ!コロナ太り」のため、「ストップ!筋量の減少」のため、外出自粛の生活の中に「うちトレ」を取り入れることをオススメします。どんな「うちトレ」をしたら良いか分からない方には、スポーツおきなわの「アストレ」をオススメします!!「アストレ」とは「アスリート向けのトレーニング」の略称ですが、やり方や回数を工夫することでアスリートでなくても行うことができます。具体的な方法はスポーツおきなわのYouTubeチャンネルでご紹介していますので、「うちトレ」を検討の際には是非ご覧下さい。

https://www.youtube.com/channel/UCxNx7HULFWehXu6FXdZGLwg

 外出自粛の生活で「うちトレ」で「アストレ」を行い、コロナ太りや筋量の減少に歯止めをかけて下さい。外出自粛の期間中「うちトレ」で「アストレ」を続けたら、外出自粛が終わる頃には完ぺきなアスリートボディに仕上がっているかも!?

   

参考文献

Mayer J, Marshall NB, Vitale JJ, Christensen JH, Mashayekhi MB, Stare FJ. Exercise, food intake and body weight in normal rats and genetically obese adult mice. Am J Physiol 177, 544-548, 1954.

Akima H, Kubo K, Kanehisa H, Suzuki Y, Gunji A, Fukunaga T. Leg-press resistance training during 20 days of 6 degrees head-down-tilt bed rest prevents muscle deconditioning. Eur J Appl Physiol 82, 30-38, 2000.

#48 トップのラグビー選手、ジュニア時代はこうだった !!6つのポイント 最終回

ワールドカップラグビーの決勝から2週間経ったにもかかわらず関わらず、その余韻を楽しむかのように多くのメディアに各選手が出演している姿を見かけます。先日、某局で放送されていた番組にプロップの稲垣選手が出演していたのですが、収録中全く笑わず、しまいには周りの出演者から笑い方を指導されていたのが非常に印象的でした(^-^)。その他にもうどんを1度に2kgたいらげた話や小学生時代に体育館の床に穴をあけてしまった話など稲垣選手のことがますます気になってきた今日この頃です。そんなトップの選手がジュニア期にどう過ごしていたのか気になりますよね? 今回も前回に引き続きラグビーのジュニア選手に関しての情報をシェアさせて頂きますね。

⑤トップで成功するカギはジュニア期の持久系能力にあり。

一般的に競技レベルが上がるにつれて、持久系の能力は高くなることが分かっており、バックスの選手がフォワードの選手に比べ高い傾向にあります。VO2max(ml/kg/min)という持久系の能力を評価する数値をみてみると、ジュニア期におけるトレーニング効果は、18歳の選手よりも15歳の選手の方が高かったというデータもあるようです。(トレーニング期間10-14週間)

将来プロ選手になった選手とそうでない選手が13~15歳当時どうだったのかを調べてみると、VO2max(ml/kg/min)は49.8±4.6 vs 47.6±5.6とプロ選手になった選手の方がそうでない選手に比べて高かったようです。

その他にも持久力に関して下記の情報があったのでシェアさせて頂きます。
エリート選手 vs それ以外の選手: マルチステージフィットネステスト(15歳期)
10.6±0.5 vs 8.0±0.6

持久系の能力は、激しい運動を繰り返したり、トーナメント中のリカバリーを早めるという点でも重要な役割を果たす為、ジュニア期からその能力をしっかりと養っておくことは将来トップレベルで成功する為に重要なポイントとなりそうです。

指導者の方々は持久系の能力が年齢やポジションにより変化し、それが将来のキャリアに影響することも抑えておく必要があります。ラグビーはコンタクト競技という特性上ケガのリスクも高い為、持久系能力を養う際には、ローイングや自転車エルゴメーターを積極的に利用することをおススメします。

⑥ジュニア期の筋力はどれくらい?

 16~17歳頃に筋力が大きく伸びているというデータがあり、それは体の成熟と共に筋力トレーニングの介入が影響しているではないかという推測があります。

プロ選手のジュニア期の筋力を振り返ってみると、1回挙上(1RM)できる重さはスクワット:134.3±12.8(17歳時)/ベンチプレス:115.4±15.4(18歳時)/プローンロウ:107.4+10.8(19歳時)というデータがあります。

筋力は、スピードやパワーとの関連があり下肢の筋力強化がタックルやボール運びの能力を引き上げることと、筋力を向上させることは走力やコンタクト能力の向上、筋疲労の軽減などにも繋がります。

フォワード選手はバックス選手に比べて大きな力を生みだす必要がありますが、挙上重量を体重比でみると大差がないことが分かっています。(例えば、体重100kgのフォワード選手が200kgのスクワットを実施した場合と体重70kgのバックスの選手が140kgのスクワットを実施した場合、挙上した重量の絶対値は異なれど、挙上した重さを体重で除すると、それぞれ体重の2倍と等しくなります。) その他、バックスはフォワードの選手に比べて、カウンタームーブメントジャンプ(反動を用いたジャンプ)とスプリント能力が高く、この点に関しては、バックスの選手がフォワードの選手に比べて体重や体脂肪率が低いことが影響していると考えられます。

筋力は年齢と共に増加し、しかるべきタイミングでレジスタンストレーニングを導入することで向上し、レベルやポジションによって特性が異なることも抑えておく必要があるでしょう。

アンダー18歳カテゴリーに比べアンダー15歳のカテゴリーにおいて、下肢のパワーの伸び率が高いことがわかってはいるものの、伸び率が高いからといって負荷をどんどんかけても良いということにはならないので、選手の成長度合いを見ながらコーチがしっかりとコントロールしてあげる必要があります。

まとめ

今回で、ラグビー選手のジュニア期の特徴に関しての情報は最終回となりますがいかがだったでしょうか? ジュニア期を指導する監督・コーチの方々が、各年代における成熟度や体力レベルを把握しておくことで、選手の可能性を最大限に引き出してあげられるのではないでしょうか。

#47 トップのラグビー選手、ジュニア時代はこうだった !!6つのポイント その②

 ワールドカップラグビーは、南アフリカの勝利で幕を閉じました!日本がもし南アフリカと対戦していなければ、、なんて思ったファンの方も多かったのではないでしょうか? 改めてこれからの日本代表の活躍が楽しみになってきましたね!4年後が待ちきれません!! 今回は前回に続き、ワールドカップ熱でジュニアの競技人口が増えてきたであろうタイミングで指導者の方々にシェアさせて頂きたい内容をご紹介させて頂きます。

③スピードは13-15歳の間に伸び率が高くなる!

 スピードに関しては、エリート選手がその他の選手に比べて速く、全体的にはバックスの選手がフォワードの選手に比べて速いことが分かっています。年代別に比べてみると13歳と15歳のカテゴリーにおいて伸び率が高く、これは身長の伸び率や成長のタイミングがストライド長やピッチの向上に関係することが影響していると考えられます。60m走では、晩熟の選手が13-15歳の間に数値が向上し、16歳以上のカテゴリーでは、スピードトレーニングのトレーナビリティが低くなることもわかっています。これは身長の伸びが落ち着いた後に体重が増えてくるという成長要因が関係していると考えられます。このことから、16歳以上の選手は身長や体重などのコンディションをモニタリングしておくことは非常に重要だと考えられます。ある程度、年齢が低い時期には体重とスピードの両方を伸ばすことができるが、成長と共に体重が増えていく過程でいかにスピードを維持できるのかがシニアで活躍する為のポイントとなりそうです。

④方向転換能力は特異的な刺激が重要!

 ポジション別では、バックスとフォワード間において方向転換能力に関しては大差はなく(プロップを除く)、スピード同様年齢(特に13~15歳カテゴリーの伸び率が高い)と共に伸びることが分かっています。エリート選手とそれ以外の選手の5-0-5アジリティテストの数値を比較したデータもある為、ご参考頂けたらと思います。(エリートvs サブエリート 2.38±0.08秒 vs 2.68±0.08秒)プロップは、他のポジションに比べて方向転換能力が低いこともあり、キャリアが短くてもポジションに必要な能力が備わっていることでトップレベルで活躍できるチャンスは高い傾向にあるようです。(遅い時期でも他競技からタレント発掘が出来そうですね)方向転換能力はトップリーグで活躍する為に必要不可欠な能力となることから、ジュニア期はシンプルな方向転換能力以外にも競技特異的な刺激を含んだ方向転換能力を獲得しておくことが重要だと言えそうです。

まとめ

 スピードや方向転換能力(加速・減速を含む)は、大きく伸びる時期がある程度決まっているようなので、その時期までに如何に多くのスキルを身に着けることができるかがトップで成功する為のカギとなりそうです。成長と共に、パフォーマンスの伸び率に変化が起こるということを指導者が理解しておくことは、ジュニア期を指導する上で、戦術やスキル指導同様重要なことかもしれませんね。

P.S.

次回は、ジュニア期の筋トレや有酸素運動に関してご紹介させて頂きます(^-^)。

参考文献 Kevin Till,Sean Scanthebury, Ben Jones. Anthropometric and Physical Qualities of Elite Male Youth Rugby League Players. Sports Med 47:2171-2186. 2017.

#46 トップのラグビー選手、ジュニア時代はこうだった !!6つのポイント その① 

我らが日本代表、残念ながら南アフリカに負けてしまいました。。しかしながら、南アフリカは準決勝でウェールズ代表を破り決勝にコマを進めてくれました!しかも、決勝の相手は名将エディー・ジョーンズ監督(前回大会の日本代表監督)率いるイングランドです。そんな盛り上がりをみせているラグビーですが、各地で開催されている子供向けのラグビー教室も人気のようで、将来ラグビー日本代表を夢見る子ども達が増加中とのこと。そこで、今回はこれからラグビーを始める子ども達と関わる指導者向けに参考になる情報をシェアさせて頂こうと思います。

 ジュニア期 (13-20歳)の選手がどういった体の特徴を持っていて、その後どのようにキャリアを積んでいったのかについて紹介している論文があったのでシェアさせて頂きます。データは、ヨーロッパのスーパーリーグやオーストラリアのナショナルラグビーリーグ(13人制)を基準としている為、今回のワールドカップラグビー(15人制)とは単純に比較できない部分はあるかとは思いますが参考になればと思います。

① 昔からサイズが大きかったわけではなかった!?

ジュニア期(13-20歳)は、身長・体重ともに年齢と共に増加傾向にあり、エリート選手がそれ以外の選手に比べ数値は高く、ポジション別にみるとフォワードの方がバックスに比べて身長が高い傾向にあるようです。13-15歳のカテゴリーにおいて、身長・体重の変化量が大きいことも分かっています。

16歳以下のカテゴリーにおいて、エリート選手とそれ以外の選手では、身長・体重ともに大きな違いがない (エリート178.8±5.9cm, 77.5±10.0kg, サブエリート 175.2±6.9cm, 72.3±11.7kg) ことが分かっており、リーグのレベルが高くなるにつれて、サイズの違いがより顕著となります。

実際に、プロになった選手とアマチュアになった選手が13-15歳以下のカテゴリーだった時期を比べてみると、身長・体重共に14歳では差がなかったという点に関しては興味深い内容だと言えます。しかしながら、同じサイズでも下半身に関しては将来プロになった選手の方がサイズが大きかったようです。この時期は、同じ体重であっても下肢がしっかりとしているかどうかが将来成功する為のカギを握っているかもしれませんね。ジュニア期に関して、身長・体重とタックルのスキルとはダイレクトに関係しない為、16歳以下までは体のサイズを積極的に大きくする必要はなさそうだということも今回の論文では言及されていました。

② 下肢の皮下脂肪が将来成功するカギを握っている!

 皮下脂肪に関しては、 エリート選手はそれ以外の選手に比べて低く、ポジション別にみるとバックスの選手がフォワードの選手 に比べて低いことがわかっています。身長と体重が成長と共に安定した後では、バックスの選手はアカデミーレベルとプロレベルの選手との間に大きな差がない (13.7±1.6kg vs 12.6 ±1.1kg) こともわかっています。しかしながら、フォワードに関しては、プロ選手はアカデミーレベルに比べ、皮下脂肪(アカデミーレベル 19.3±1.6kg vs プロ 15.4±1.1kg)や骨量に関して大きな違いがみられ、その中でも下肢の皮下脂肪に関しては顕著な差があったようです。13-15歳のカテゴリー時期においては、プロになった選手はアマチュアになった選手と比べ、皮下脂肪が低い(33.4±9.8mm, 41.6±18.2mm)傾向にあったということを踏まえると、皮下脂肪がつきづらく且つ筋肉量が増えやすいという身体的な特徴を持った選手がトップレベルに上がっていく可能性も高くなりそうですね。指導者側がリーグのレベルやポジションに応じた最適な体脂肪率を抑えておくことが質の高い強化に繋がっていきそうです。

まとめ

今回は、ラグビー選手のジュニア期に注目した論文をご紹介させて頂きましたがいかがでしたか? ジュニア期の成長特性やその後選手がどのレベルまで到達したのかを知っておくことは育成や強化の手助けとなります。指導者の方々にも是非ご参考頂ければ幸いです。 その②はスピード・加速・減速・方向転換に関してご紹介させて頂きます!

参考文献 Kevin Till,Sean Scanthebury, Ben Jones. Anthropometric and Physical Qualities of Elite Male Youth Rugby League Players. Sports Med 47:2171-2186. 2017.