#61 足を速くする方法とは!?【発育発達編】 Vol.2

発育発達とスプリント能力

 人は2歳ごろから走ることができるようになり、6、7歳ごろまでに成人と同じような走動作を獲得するとされています(宮丸,2002)。1歳から成人までの疾走能力の発達を追っていくと、下記のようなポイントにまとめられます(加藤,2004)。

【疾走速度】

男子:加齢に伴って17歳頃まで増大するが、その後停滞傾向を示す

女子:13歳頃まで増大し、以降停滞する

 

【ストライド】

男子:14〜15歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

女子:13〜14歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

 

【ピッチ】

男子:2〜14歳頃まで明確な変化はないが、15~17歳にかけて増大する

女子:2歳から成人まで明確な変化なし

 

以上の結果から、1歳半〜12歳までの疾走速度の増大は、男女ともにピッチよりもストライドの増大によるものであるが、男子の15歳〜17歳における疾走速度の増大は、ストライドよりもピッチによるものであるとし、思春期における疾走能力の発達に明確な男女差があることが分かっています。(加藤,2004)。また、横山ほか(2012)の報告によると、身長が一番伸びる時期は、女子は12歳頃、男子は14歳頃であり、身長の増加が停滞してくるのが女子は14歳頃、男子は16歳頃からであるとされています。よって、思春期前後までにおいては、身長が伸びて、筋量も増えていくことでストライドが増大し、その結果として疾走速度が増大していることが推察されます。以上より、発育発達に伴って疾走速度が自然とある程度増大していきますが、身長が伸びることでのネガティブな影響や、身長が伸びなくなってからのトレーニングで気をつけるべきポイントがあります。

まず、身長が伸びると、四肢が長くなっていくためモーメントアームが長くなり、高速で四肢を動かすためにはより高い筋力や神経系機能が必要になります。そのため、身長が急激に伸びると俊敏に動くクイックネスが低下する可能性があります。また、身長が伸びると骨と筋腱の成育に不均衡が生じ、筋腱の緊張が一時的に高くなることがあり、いわゆる身体の柔軟性が低下する可能性があります。よって、動的可動域の確保とケガ予防のために、柔軟性を維持する必要があります。以上のことを踏まえ、発育発達に応じたスプリントトレーニングを行う際の注意点は以下のようになります。

 

 ①クイックネスの維持・向上、ひいてはピッチの維持・向上のため、神経系機能トレーニング(SAQトレーニングなど)をしっかりと行う

 ②動的可動域の確保とケガ予防のために、ストレッチング(スタティック、ダイナミックともに)をしっかりと行う

 

 これらの内容に留意しながら、トレーニングで足を速くすることの楽しさを存分に味わってください!

図1 年齢にともなう疾走速度、ストライド、ストライド/身長、ピッチの変化

※宮丸(2002)より引用

 

関西福祉大学 講師 熊野陽人

 

[資料]

・加藤謙一(2004)走能力の発育発達. 金子公有・福永哲夫編, バイオメカニクス-身体運動の科学的基礎-. 杏林書院:東京, pp.179-180.

・宮丸凱史 (2002) 疾走能力の発達: 走り始めから成人まで. 体育学研究, 47: 607-614.

・横山徹爾, 加藤則子, 瀧本秀美, 多田裕, 増谷進, 田中敏章, 板橋家頭夫, 田中政信, 松田義雄, 山縣然太朗(2012)乳幼児身体発育評価マニュアル. 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業, 「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」, pp. 67.

 

 

 

#60 足を速くする方法とは!? Vol.1

 “速く走る”ことは様々なスポーツ種目において必要なことであり、パフォーマンスレベルにも大きくかかわる要素のひとつです。足を速くするためにはどんなことが必要なのか、本コラムで3回にわたって科学的知見を交えながら紹介していきます。

 

ピッチかストライドか

 陸上競技だけでなく、球技などの様々なスポーツにおいて、速く走る能力、つまりスプリント能力がパフォーマンスに強く関わってきます。スプリント能力は疾走速度によって評価されますが、疾走速度は「疾走速度(m/秒)=ピッチ(歩/秒)×ストライド(m)」という式で表されます。ピッチは、いわば脚の回転する速さのことで、一定時間内の歩数を表します。ストライドは、1歩の歩幅を表します。なお、ピッチとストライドという用語が一般的に用いられますが、「ストライド」という用語は,本来は「2歩(ある足の接地からもう一度同じ足が接地するまで)の歩幅」を表します。1歩(ある足の接地から逆側の足の接地まで)を意味する正しい用語は「ステップ」です。したがって、厳密に言うと「ピッチ」は1ステップの頻度である「ステップ頻度」、「ストライド」は1ステップの長さである「ステップ長」と表すのが正確です。しかし、理解しやすくするために、本コラムでは、一般的な用語であるピッチとストライドという表現に統一します。

 上述した式にあるように、疾走速度はピッチとストライドの積で決まるとすると、疾走速度を高めるには以下の5つの選択肢が考えられます。

 

 ①ピッチとストライドの両方を増加させる

 ②ピッチを維持して、ストライドを増加させる

 ③ピッチを犠牲にして、それ以上にストライドを増加させる

 ④ストライドを維持して、ピッチを増加させる

 ⑤ストライドを犠牲にして、それ以上にピッチを増加させる

 

 果たして、疾走速度を高めるためには、ピッチとストライドのどちらが重要なのでしょうか?結論から言うと、ピッチのほうが重要であるとする説とストライドの方が重要であるとする説の両者が存在し、結論が出ていないのが現状です。また、トップアスリートの中でも、ピッチが特に高い者もいれば、ストライドが特に大きい者もいます。アスリート個人の中でのパフォーマンス変動をみても、パフォーマンスがピッチに依存する者もいればストライドに依存する者もいます(Salo et al., 2011)。つまり、ピッチが重要かストライドが重要か、個人の特性に大きく依存するため、ケースバイケースということになります。また、ピッチとストライドは、疾走速度がほぼ同じの場合、一方を高めればもう一方が低下するトレード・オフ関係にあるため (Hunter et al., 2004) 、どちらか一方のみを重要視することはあまり得策ではありません。以上のことを考えると、①・②・④の選択肢がベターであると言えます。

 では、ピッチやストライドに影響を与えるのはどんな要因でしょうか?Hunter et al. (2004) は,両者に大きく影響を及ぼすのは滞空時間であり、滞空時間が短いとピッチが高くなり、滞空時間が長いと滞空距離が大きくなることでストライドが大きくなる傾向にあると報告しています。高いピッチを獲得するためには、滞空時間を短くすることが重要になり、素早く脚を回復し接地しなければなりません。そのためには、脚の動作範囲を小さくすることや(阿江, 2001)、脚を素早く動かすために、股関節の屈曲伸展に関わる筋群(大殿筋、ハムストリングス、内転筋など)が大きな力を発揮することが必要になります。また、大きなストライドを獲得するためには、接地中に地面により大きな力を加えることで、滞空時間を長くすることが重要になります(山元, 2014)。そのためには、接地中に下肢の各関節が大きな力を発揮することが重要であると考えられます。以上のことから、ピッチを高めるにしてもストライドを高めるにしても、下肢で発揮できる力を大きくする必要があるため、下肢の筋力を高める必要があるでしょう。さらに、ピッチを高める場合には、脚をコンパクトに動かす、素早く動かすために神経系機能(神経-筋の協調性)も向上させる必要があると言えます。この辺りを意識してトレーニングを行うことが、疾走速度の向上には必要になってきます。

関西福祉大学 講師 熊野陽人

 

[資料]

・阿江通良 (2001) スプリントに関するバイオメカニクス的研究から得られるいくつかの示唆. スプリント研究, 11: 15-26.

・Hunter, J. P., R. N. Marshall, P. J. Mcnair. (2004) Interaction of step length and step rate during sprint running. Med. Sci. Sports Exerc., 36 (2) : 261-271.

・Salo, A. I. T., Bezodis, I. N., Batterham, A. M., and Kerwin D. G. (2011) Elite Sprinting: are athletes individually step-frequency or step-length reliant?. Med. Sci. Sports Exerc., 43(6): 1055-1062.

・山元康平 (2014) スプリント走におけるピッチとストライドに関係する要因. RIKUPEDIA 陸上競技の理論と実際: http://rikujo.taiiku.tsukuba.ac.jp/column/2014/14.html.

 

 

#59 サッカーとジュニア Vol.4

4:無酸素性トレーニング

 無酸素性のトレーニングは、スピードトレーニングとスピード持久力トレーニングに大別されます。さらに、スピード持久力トレーニングは、メンテナンストレーニングとプロダクショントレーニングに分けられます。

 4-1:スピードトレーニング

 スピードトレーニングは、瞬時に動作を起こす必要性のあるゲーム状況を認知する能力の向上、瞬時に動作を起こす能力の向上および高強度運動の中で素早く力を発揮する能力の向上を目的として行われます。スピードトレーニングの原則を表4に示します。スピードトレーニングを実施する際は、短い時間で全力を出し切ることが重要です。スピードトレーニングの例を図9に示します。

表4:スピードトレーニングの原則

    

図9:スピードトレーニング例(キャッチ)

 

4-2:スピード持久力トレーニング

 スピード持久力トレーニングは、無酸素性のエネルギー供給によって、瞬時にパワーとエネルギーを発生する能力を高めたり、パワーとエネルギーを持続的に発生し続ける能力を高めたりすることを目的として行われます。スピード持久力トレーニングの原則を表5に示します。スピード持久力トレーニングもスピードトレーニングと同様に主運動中は、極めて高い強度で実施する必要があります。メンテナンストレーニングの例を図10に、プロダクショントレーニングの例を図11に示します。

表5:スピード持久力トレーニングの原則

図10:スピード持久力メンテナンストレーニング例(アタッキング)

図11:スピード持久力プロダクショントレーニング例(ハンティング)

 スプリントパフォーマンスは、スピードトレーニングを実施することで向上することが期待できます。高強度運動パフォーマンスは、スピード持久力トレーニングや有酸素性高強度トレーニングを実施することで向上することが期待できます。

 

5:サッカーにおけるパワートレーニングの考え方

 サッカーでは、パワートレーニングを①基礎パワートレーニング②変換パワートレーニング③サッカーパワートレーニングの3つに分類して考えることができます(図12)。

図12:サッカーのパフォーマンスと3つに分類したパワートレーニングとの関連

 5-1:基礎パワートレーニング

 基礎パワートレーニングは、フリーウェイトや各種トレーニング機器を用いて高い外的負荷に対して動作を行います。スクワットやレッグプレスなどがトレーニング例です。

5-2:変換パワートレーニング

 変換パワートレーニングは、トレーニングを通して、ジャンプや急激な加速・減速、方向転換のように基礎的な筋力をサッカーに関連した動きの中で発揮する能力を高める内容です。ボックスジャンプやハードルジャンプなどがトレーニング例です。

5-3:サッカーパワートレーニング

 サッカーパワートレーニングは、基礎や変換パワートレーニングで養った能力をシュート、加速・減速、スプリントなどの強度の高い試合中の動きに還元できるようにする内容です。サッカーのパワートレーニングの例を図13に示します。

図13:サッカーパワートレーニング例(加速・減速・シュート)

 筋発揮パフォーマンスは、これらのパワートレーニングを参考に実施することで向上することが期待できます。

 

  4回にわたり、ブログを書きました。現代のエリートサッカー選手にはどのような能力が求められているのか、その能力はどのように客観的に評価することができるのか、そしてその能力はどのようなトレーニングで向上することができるのか、について誰かの参考になれば幸いです。

 

引用文献

・ヤン・バングスボ(2008)ゲーム形式で鍛えるサッカーの体力トレーニング.大修館書店・東京.

・ヤン・バングスボ,イェスペル・L・アナセン(2018)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手のパワートレーニング.大修館書店・東京.

・広瀬統一,菅澤大我(2016)サッカーボールを使ったフィジカルトレーニング.ベースボール・マガジン社・東京.

中京大学スポーツ科学部 准教授 大家 利之

#58 サッカーとジュニア Vol.3

 前回のブログでサッカー選手に特に必要な4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手の基準値について紹介しました。今回のブログでは、その体力的要素を向上させるトレーニング方法について紹介します。

 現代のサッカーでは、持久的パフォーマンス、高強度運動パフォーマンス、スプリントパフォーマンスおよび筋発揮パフォーマンスを高く発揮する能力がエリート選手には、特に重要であることを以前のブログで説明しました。これらの能力を向上させるためには、ウェイトトレーニングなどで基礎的な筋力を向上させたり、パワー発揮能力を向上させたりすることは大変重要なことです。

 基礎的なトレーニングについての詳細が知りたい方は、スポーツおきなわのスタッフにお問い合わせ頂くとして、本ブログでは持久的パフォーマンス、高強度運動パフォーマンスおよびスプリントパフォーマンス向上のために、サッカーボールを用いたトレーニング方法の原則およびトレーニング例について紹介します。また、筋発揮パフォーマンスのトレーニングについては、サッカーでどのように考えるべきかについての例を簡単に紹介します。

1:サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素

 ボールを用いたサッカーのトレーニング方法は無限に考えることができます。トレーニング内容を決定する上で重要なことは、サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素について理解することです。サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素は主に8つです(表1)。例えば、4対4のスモールサイドゲームを実施する場合、②のルール要素において、1回に触ることができる回数(タッチ数)に制限を設けることでフリータッチと比較して運動強度が上がり、⑦のストレス要素においてコーチの激励(コーチング)があることによってない場合と比較して運動強度が上がると報告されています(図1)。トレーニングの目的に応じて、これらの要素を変更し、トレーニング強度を決定することが重要です。

表1:サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素

要素

変更例

①ボール

数、サイズ、形、重さ

②ルール

禁止事項、条件設定

③ゴール

数、大きさ、設置する位置

④フィールド

面積、形(縦と横の比率など)

⑤選手(味方、相手)

それぞれの数、GKの有無

⑥トレーニング時間

長さ、反復回数

⑦ストレス

コーチからのコーチング、プレッシャー

⑧配球

どこから始めるか、どういうボールを出すか

図1:サッカーのトレーニング強度とトレーニング要素の変更との関係(ストレングス&コンディショニングジャーナル,Vol25,No.2,2018)

        

2:サッカーボールを用いた体力トレーニング

 サッカーの体力トレーニングについて、ここでは日本サッカー協会の指導者講習会で用いられている考え方を紹介します。日本サッカー協会の指導者講習会では、図2のように体力トレーニングを分類しています。ここでは、有酸素性および無酸素性トレーニングのことについて説明します。

図2:サッカーの体力トレーニングの分類

 

3:有酸素性トレーニング

 有酸素性トレーニングは、互いに重なりあった3つの領域に分類されます。低強度、中強度、高強度の3種です。有酸素性トレーニングの原則を表2に示します(最大心拍数を200拍/分と仮定した場合)。

表2:有酸素性トレーニングの原則

 3-1:有酸素性低強度トレーニング

 有酸素低強度トレーニングは、試合やトレーニング後の素早い回復を促すことを目的として行われます。図3は、ある有酸素性低強度トレーニングを40分間行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性低強度トレーニングは、持続的な運動または間欠的な運動のいずれで実施しても問題ありませんが、間欠的な運動として行う場合は、主運動の時間が5分以上になるようにトレーニング時間を設定する必要があります。

図3:有酸素性低強度トレーニング中の心拍数の変化例

 3-2:有酸素性中強度トレーニング

 有酸素性中強度トレーニングは、長時間にわたって運動を行う能力を向上させることを目的として行われます。図4はゲーム形式のスコアリングコーン(図5)を行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性中強度トレーニングも低強度トレーニングと同様に、持続的な運動または間欠的な運動のいずれで実施しても問題ありませんが、間欠的な運動として行う場合は、主運動の時間が5分以上になるようにトレーニング時間を設定する必要があります。

 

図4:有酸素性中強度トレーニング(スコアリングコーン)中の心拍数の変化例

図5:有酸素性中強度トレーニング例(スコアリングコーン)

3-3:有酸素性高強度トレーニング

 有酸素性高強度トレーニングは、長時間にわたって、高強度運動を行う能力を向上させることを目的として行われます。有酸素性高強度トレーニングは、間欠的な運動(インターバル方式)で行います。運動時間と休息時間の比率は表3の通りです。図7は、運動時間2分、休息時間1分の有酸素性高強度トレーニングを行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性高強度トレーニングの例を図8に示します。

表3:有酸素性高強度トレーニングの運動時間と休息時間の組み合わせ例

図7:有酸素性高強度トレーニング中の心拍数の変化例

図8:有酸素性高強度トレーニング例(5対5 マンツーマンボールキープ)

 持久的パフォーマンスは、有酸素性の中強度、高強度トレーニングを実施することで向上することが期待できます。表2および表3の原則を参考にして、トレーニングを実施して下さい。

 

最終vol.4へ続く。

 

 

引用文献

・ヤン・バングスボ(2008)ゲーム形式で鍛えるサッカーの体力トレーニング.大修館書店・東京.

・ヤン・バングスボ,イェスペル・L・アナセン(2018)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手のパワートレーニング.大修館書店・東京.

・広瀬統一,菅澤大我(2016)サッカーボールを使ったフィジカルトレーニング.ベースボール・マガジン社・東京.

#57 サッカーとジュニア Vol.2

 前回のブログでサッカー選手に特に必要な4つの体力的要素について説明しました。今回のブログでは、その体力的要素の測定方法とプロサッカー選手の基準値について紹介します。

①持久的パフォーマンス

 持久的パフォーマンスを発揮する能力を最も精度高く評価できる指標は、最大酸素摂取量です。最大酸素摂取量とは、1分間あたりで摂取される酸素摂取量の最大値のことで、この値が高い程持久的能力が高いと評価することができます。プロサッカー選手の最大酸素摂取量の平均値は、50~75ml/kg/minであり、あるJリーグチームの平均値は57.3 ml/kg/minであると報告されています。しかしながら、最大酸素摂取量の測定は、高額な機器が必要であり、また専門的な知識をもった測定者が必要です。最大酸素摂取量を測定したい人は、一度スポーツおきなわのスタッフに問い合わせてみてください。

 このように最大酸素摂取量を直接測定するためには、さまざまなコストがかかるため、一般的には、サッカー選手の持久的能力は、フィールドテストを行い、その結果から最大酸素摂取量を推定する方法が用いられます。代表的な測定としては、文部科学省の新体力テスト項目である20mシャトルランニングです。サッカーでは、YO-YO Endurance Testの結果から最大酸素摂取量を推定する方法を用いることもあります。YO-YO Testの詳細は下記から調べることができます。

http://sandcplanning.com/solution/category/detail/?cd=10

②高強度運動パフォーマンス

 高強度運動パフォーマンスを発揮する能力の測定には、YO-YO Intermittent Recovery Test(YOYOIR)が良く用いられます。YOYOIRの結果と、試合中の高強度ランニング距離との間には、有意な高い正の相関関係があると報告されています(図1)。

   

図1:YOYOIR level1の結果と試合中の高強度ランニング距離との関係

表1に、アンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手のYOYOIR level2の結果を示します。ポジションやその選手のプレーの特徴にもよりますが、プロサッカー選手(GKを除く)の基準値としては、男子であればYOYOIR level2の記録が1000m以上、女子であればYOYOIR level1の記録が1520m以上であると考えられえています。

表1:アンダーカテゴリー男子日本代表選手のスプリントテストおよびYOYOIR level2の結果

③スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。表1にアンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手の20mスプリントテスト時の結果を示します。このデータは、光電管システム(図2)を用いて測定しています。スタートは音や光刺激に反応するのではなく、選手の任意のタイミングで行ったデータです。スタートから10mと20m位置に光電管を設置し、スタートから10mと20mまでの記録が表1に示してあります。同じ測定方法で、ある年の男子日本代表サッカー選手(A代表)のスタートから10mまでのスプリントに要した時間の平均は1.73秒(GK除く)でした。競技レベルが高い程、10mのような短い距離を素早く走る能力に優れている傾向があります。

図2:アンダーカテゴリーの男子日本代表サッカー選手のスプリント測定で使用した光電管

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。サッカーでは主にスクワットジャンプ(SJ)、カウンタームーブメントジャンプ腕ふりなし(CMJ腕なし)、カウンタームーブメントジャンプ腕ふりあり(CMJ腕ふりあり)の3種類の測定項目が用いられます。ジャンプの測定方法は、ヤードスティックなどを用いたタッチ式、腰に専用ベルトを巻いてひもの伸びた長さによって測定するひも式、専用のマットスイッチ(図3)を用いて滞空時間からジャンプ高を推定する滞空時間式があります。その中でもサッカーでは滞空時間式でCMJの腕ふりなしの測定値を下肢のパワー発揮能力の指標として用いることが多いです。表2にエリートサッカー選手(プロサッカー選手)の滞空時間式で測定したCMJ腕ふりなしの基準値を示します。プロサッカー選手の基準値としては、男子であれば40~45cm、女子であれば30~35cmであると考えられています。

         

表2:エリートサッカー選手の基準値(マットスイッチを用いたCMJ腕ふりなし)

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素を向上させるトレーニングについて紹介したいと思います。

 

引用文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・ヤン・バングスボ,マグニ・モア(2015)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手の体力測定と評価.大修館書店・東京.

中京大学スポーツ科学部 准教授 大家 利之

#56 サッカーとジュニア vol.1

 サッカーは、ルールが分かりやすく、用具をあまり必要としないことから世界的にも人気の高いスポーツです。老若男女問わず、レクリーエーションとして、競技スポーツとして、誰もが楽しめるスポーツです。その中でも本ブログでは、プロサッカー選手に必要な体力的要素やトレーニングについて3回にわたって紹介します。

 

  • サッカー選手は1試合(90分間)でどれくらい走るのか?

 最近では、測定機器が小型・軽量化したことや、競技規則の改正によりサッカー選手の試合中の動きをほぼリアルタイムで数値化することができるようになりした。サッカー選手の試合中の動きを測定するのに良く用いられるのは、GPS(Global Positioning System)を利用したパフォーマンス分析装置です(図1)。

図1 GPSパフォーマンス分析装置(https://archivetips.com/gpexe)

GPSパフォーマンス分析装置を使用したデータから、サッカー選手は、1試合で9km~12km走ると言われています(GKは4kmくらい)。ただし、ほぼ一定のペースで前向きに走る陸上の長距離走種目とは違い、サッカー選手はスプリント、ジャンプ、ターン、シュートやタックルなどさまざまな動き繰り返しながら90分間動き続ける体力が必要です。特に時速15km以上の高強度の動きを繰り返す能力は、シュートチャンスを生み出したり、防いだりする決定的な場面で必要です。高強度な動きを繰り返す能力は、現代サッカーでは特に選手に求められます。

 

  • サッカー選手に必要な体力的要素とは?

 サッカー選手の試合中のパフォーマンス発揮に影響する主な要素は、①心理的・社会的要素、②技術的要素、③戦術的要素、④体力的要素、の4つです。ここではサッカー選手が試合中に高いパフォーマンスを発揮するための体力的要素について説明します。

 サッカー選手に特に求められる体力的要素は、次に示す4つです。1)持久的パフォーマンス、2)高強度運動パフォーマンス、3)スプリントパフォーマンス、そして4)筋発揮パフォーマンスです。

1)持久的パフォーマンス

 先程も書きましたが、サッカー選手は試合中にさまざまな動きを行いながら、90分間走り続けます。したがって、サッカー選手に特に求められるのは、2)で示す高強度運動パフォーマンスを繰り返す能力です。しかしながら、一定強度の運動を持続的に行う基礎的な持久力が全く必要ないわけではありません。高強度運動と高強度運動のリカバリー時(回復時)の素早い回復と、この基礎的な持久力の高さは密接に関係しています。基礎的な持久力もサッカー選手には必要な体力的要素です。

 

2)高強度運動パフォーマンス

 スプリント、ジャンプやシュートなど試合中に高強度な運動を繰り返すことができる能力は現代のサッカー選手に特に求められます。イタリアのトップレベルの選手を対象にしたMohrらの研究によると、時速15km以上の高強度運動は1試合あたり平均2.43kmで、競技レベルが高い選手は低い選手と比較してその距離が長いことを報告しています。

 

3)スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。20m以下の短い距離を素早く走る能力は、試合における決定的な場面で大変重要な体力要素です。試合の中で発揮されるスプリント能力とは、疾走能力だけでなく、認知能力や予測する能力も含まれます。

 

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。

 

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手になるためにはどれくらいの能力が必要かについて紹介したいと思います。

 

参考文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・Mohr et al.(2003)Match performance of high-standard soccer players with special reference to development of fatigue. J Sports Sci; 21: 519-528.

プロフィール

大家利之【おおや としゆき】先生

中京大学スポーツ科学部 准教授

 

 

#55 心拍数でゴルフのスコアを伸ばす!

今回のタイトルのヒントとなる論文はこちら↓

Heart Rate Variability Biofeedback as a Strategy for Dealing with Competitive Anxiety: A Case Study.

今回の論文内容を簡単に説明すると、

”心拍変動と呼吸について理解し、Heart Rate Variability (HRV)  Biofeedback (BFB) トレーニングを実施することで、競技中の不安やストレスが軽減され、それが競技のパフォーマンスにも影響するのかどうか?を調べたケーススタディとなります。

*Heart Rate Variability(HRV)  Biofeedback (BFB) とは、かなりざっくりですが、自分の心拍変動を確認【モニターなどを確認】しながら、複式呼吸を実施したり、心拍変動と呼吸を合わせていくなどのトレーニング方法。【さらに詳しく知りたい方は、参考文献をご参考下さい。】

今回、この内容を調べようと考えた経緯として、#53 ゴルフは、手足が長いと有利?! の内容の中で、有酸素性能力とゴルフのスコアには相関があるという内容をご紹介させて頂いたのですが、”有酸素性能力が高い➾息があがりずらい➾パフォーマンスに心拍数が関係しているのでは?”という素朴な疑問から今回の論文に辿り着くこととなりました。

個人的に期待していたのは、有酸素性能力が高いことで疲れづらくショットが安定しパフォーマンスがあがるのでは?という点だったのですが、今回の内容は少し違う視点でとらえられていたので、みなさんも宜しければご参考下さい。

〇心拍変動と呼吸との関係を知る。

みなさんもご存じの通り、心拍変動には自律神経が関係しており、交感神経が優位になると心拍数は上がり、副交感神経が優位になると心拍数は下がります。心拍変動に影響を及ぼす要因としては、呼吸や感情、体や行動の変化などが挙げられます。また、心拍数は体の内部【神経、内分泌、免疫 etc】を正常且つ一定に保つための恒常性にも影響を及ぼします。

 

〇ケーススタディ内容

 対象:14歳/高校1年生のゴルフ選手【競技歴:7歳~】

    HRV BFBトレーニング前のスコア:平均スコア91【試合】平均スコア70【練習】

〇試合と練習とのスコアにギャップが、、

 本人曰く、競技中のストレスや不安をマネジメントすることが出来ず、パニックになることがある。体の反応としては、呼吸が浅くなる、心拍が速くなる、汗をかく。などが上げられる。これらが原因で、練習通りのスコアが試合で出せないと考えられる。

〇実際のトレーニング

10週間、HRV BFB トレーニングを実施。【合計10セッション, 45-60分/回】

➾1,4,7,10セッションは情報を記録【気分、不安、生理学的指標(ECG,呼吸)etc】/ 2,3,5,6,9 セッションは記録せず。セッション中の呼吸は深すぎないゆっくりとお腹を意識した呼吸を実践。その他にも、毎日20分”ストレスイレイザー”というディバイスを用いて呼吸練習を実施。毎週の試合のスコアを記録。その他にも、心理学的指標として、”The Profile of Mood States (POMS)”や “The Competitive State Anxiety Inventory (CSAI-2) “を用いて、怒り・混乱・落ち込み・疲れ・テンション・活力など6つの気分、自信や冷静さなどを数値化。

”ストレスイレイザー”イメージ写真

 

〇結果

試合時の平均スコアが91から75に向上【-15】

 

合計10セッションのトレーニング終了時には、落ち込みや疲れ等、気分的にマイナスとなるような数値が改善。自信を示す数値に関しては、4ポイント から 26ポイントへと大幅に向上【高校男子アスリートの平均24.5, SD = 5.52】 。

 

まとめ

日頃、無意識に行っている呼吸に意識を向けトレーニングを積むことで効率よくストレスを軽減でき、自信やパフォーマンス向上にも繋がる可能性があるのは面白い視点だと感じました。特に今回のように精神的に未成熟なジュニア選手に対しての取り組みは貴重な情報となる為、今後の指導にも活かしていこうと思います。

また、n=1【被験者】ではあったものの、今回の論文以外にも、HRV BFBトレーニングをおこなうことでレスリングの選手のリアクションタイムやリカバリー時間の短縮、野球のバッティングのパフォーマンスがあがったなどの報告があるようなので、今後も注視していこうと考えています。

P.S. 

タイガーウッズがガムを噛んでいるのは心拍数を落ち着かせる為かな?! 複式呼吸で、吐く息を長く&ガムを噛みながらプレーすると、、

ゴルフのスコアが伸びるかも?!!

Leah Lagos, Evgeny Vaschillo, Bronya Vaschillo, Paul Lehrer, Marsha Bates, and Robert Pandina. Heart Rate Variability Biofeedback as a Strategy for
Dealing with Competitive Anxiety: A Case Study. Applied Psychophysiology & Biofeedback. Volume 36, Issue 3, pp. 109–115, 2008.

Heart Rate Variability(HRV)  Biofeedback (BFB)トレーニング詳細⇩

Lehrer, Vaschillo, and Vaschillo. Resonant Frequency Biofeedback Training to Increase Cardiac Variability: Rationale and Manual for Training. Applied Psychophysiology and Biofeedback 25(3):177-91, 2000.

 

 

#54 テニスのサーブが速くなる秘策は回転と〇〇の前方への移動!

今回のテーマのヒントになる論文はこちら↓

“Professional tennis players’ serve: correlation between segmental angular momentums and ball velocity” 

タイトルをそのまま、訳してみると、”プロテニス選手のサーブ時の体の各部位における角運動量とボール速度との関係について。” となります。なにやら、難しいタイトルですね(;’∀’)。

現代のテニス競技は男女問わずサーブ時のスピードがより重要視されています。勝つための秘訣はサーブのスピードにあり!! ということで、今回はサーブのスピードをアップさせるためのヒントについてご紹介させて頂きます。

 

さっそく、今回の内容をまとめてみると、

テニスのサーブが速くなる秘訣は、体の回転動作【回旋】& 体幹の押し出し【側屈】を大きく素早く行うこと!

体の回転動作【回旋】①体幹➾②上半身➾③腕➾④ラケットへと体の連動【順番】を抑える。

特に、肘が最大限に曲がったポジション (MEF) からボールインパクト (BI) までの”体の各部位の回転動作”と、インパクト(BI)時に力発揮を高める”体幹の前方への移動【側屈】”が重要なポイントとなります。

MEF, BI に関しては下記の図を参照。

また、押し出し【体幹を前方に倒す】をうまく行う為には、ボールを真上ではなく斜め上方向へ投げるのもサーブ速度を上げる為のテクニックの一つと考えられます。

その他にも、インパクト前の肘伸びきるスピード、肩関節の内旋動作、手首使い方などもサーブの球速に影響しているようなのでそちらに関しては、また別の機会にご紹介できたらと思います。

以下は、今回の論文の詳細となりますが、、

如何せん、バイオメカニクスは専門でない為 うまくまとめることができず(;’∀’)。

とりあえず、まとめてみたのでご興味のある方は参考程度に確認してみて下さい💦

 

〇対象選手

プロテニス選手 10名 【年齢25.1±5, 身長187cm±6cm, 体重79.4kg±7.4kg】シングルス ATP  ランキング 【 17th, 88th, 118th, 147th, 287th, 522nd, and 921st】  ダブルス ATP ランキング 【35th, 48th,and 210th】

〇測定方法

フラットサーブをターゲットエリア【1.5m×1.5m】に打ち込んだ際の”体の各部位の角運動量”と”サーブの球速”との関係を測定。

サーブの動きを5つのポジションに分類。

BT: ボールトス(ball toss)

MEF: 肘が最大に曲がったポジション(maximal elbow flexion)

RLP: ラケットが最大に下がったポジション (racket lowest point)

MER: 肩が最大に外旋したポジション (maximal shoulder external rotation)

BI: ボールインパクト(ball impact).

〇結果

  1. ①肘が大きく曲がる (MEF) ②ラケットが下がっている (RLP) ③肘が外旋している (MER) ポジションにおいて、体幹のx軸における角運動量がサーブの速度に大きく関わっている。
  2. ②ラケットがさがっている (RLP) ③肘が外旋している (MER) ポジションにおいて、上半身のx軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  3. ③肘が外旋している (MER) ④ボールインパクト (BI) のポジションにおいて、腕のx軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  4. ①肘が大きく曲がる (MEF) ④ボールインパクト (BI)のポジションにおいて、体幹をy軸における角運動量がサーブ速度に大きく関わっている。
  5. その他、省略。

まとめ

 ①”体の各部位”と”サーブ速度”とのポジションごとにおける相関関係の変化、②体の中心【体幹】から末端【手首やラケット】への力の連動、③体幹の前方移動など、今後のトレーニング指導のヒントになりそうです。

P.S.

バイメカは基礎知識がないと難しい。。今後は、色々な先生方にも情報配信をお願いしてみよう!と改めて感じさせられた今日この頃です。

参考文献

Caroline Martin a, Richard Kulpa a, Paul Delamarche a& Benoit, Bideau. Professional tennis players’ serve: correlation between segmental angular momentums and ball velocity. Sports Biomechanics, iFirst article, 1–13, 2013.

#53 ゴルフは、手足が長いと有利?!

今回のお題のヒントになる論文がこちら↓

“PHYSIOLOGICAL CORRELATES OF GOLF PERFORMANCE”

ざっくりと説明すると、生理学的指標とゴルフのパフォーマンスとの関係について調べた論文で、下記の項目がそれぞれの指標として用いられていました。

〇人体測定

➾年齢 体重 身長 BMI【Body mass index】 座高 手足の長さ

〇フィットネステスト

➾柔軟性 バランス パワー 筋力 筋持久力 有酸素性能力【推定】

〇ゴルフパフォーマンス

➾ドライバーのボールスピード&飛距離 5番アイアンのボールスピード&飛距離 スコア パーオン チップショット後のパターの平均距離 サンドショット後のパターの平均距離 パット数

対象:カナダのナショナルチームメンバー24名【男子15名女子9名】

 

手足が長いとゴルフは有利?! 結果は、

手が長いと飛距離アップという点では有利!!!

【足の長さはパフォーマンスとの関係に相関なし】

これに関しては、手が長い【レバーが長い】選手はスイングが大きくなる分、よりボールに力を与えることができます。勿論、長い手をコントロールする筋力が備わっていることも条件ではありますが。

しかしながら、スコア、サンドショット後のパターの平均距離、パット数など手の長さと負の相関があることから、より正確性が求められるショットにおいては手の長さがデメリットとなる可能性があることもわかりました。

座高に関しても、手の長さと同じ傾向がみられました。

また、筋力という点では腹筋と懸垂の方がパフォーマンスとの相関が高いという点も触れておく必要がありそうです。体前面においては腹筋、後面は背中、ゴルフ特有の回旋動作を考えるとパフォーマンスに影響することは勿論、これらの筋力のバランス【表と裏のバランス】をとることも障害予防の点から考えると非常に重要な要素だと考えられます。

その他にも、興味深いと感じたのが有酸素性能力とゴルフのパフォーマンスとの関係には相関があるということです。パワフルなショットを打つ為には筋力強化が必要ですが、有酸素運動は時に筋力強化の妨げとなることや、マラソンランナーのように持続的に力発揮を行うことがないことから、必要性を見いだせないというのが多くの方が意見ではないでしょうか。

可能性として、ゴルフの競技は1日で10km程度も移動することから、有酸素性能力の低い選手はリカバリー効率が悪く、気づかないうちにショットの精度が落ちているのかもしれません。いずれにせよ、有酸素性能力が高い選手が、ゴルフのパフォーマンスが高いという結果になったことを踏まえると、他の選手に比べ明らかにその能力が低い選手は持久力を高める為のトレーニングを取り入れる必要がありそうです。

まとめ

手の長さがパフォーマンスとの間に相関があると同時に、メリットとデメリットについてもゴルフ特有の飛距離&正確性という点から考えると収穫だったのではないでしょうか。今回の論文から、”心拍数とゴルフのパフォーマンスとの間に相関はあるのか?”というまたべつの疑問が浮かび上がってきたので実際に調べてみようと思います(^^♪。

 

参考文献

GREG D. WELLS, MARYAM ELMI, AND SCOTT THOMAS. PHYSIOLOGICAL CORRELATES OF GOLF PERFORMANCE. Journal of Strength and Conditioning Research. VOLUME 23, NUMBER 3, MAY 2009.

#52 重たいボールでトレーニングをしたら、球速はアップするが、ケガのリスクも増える?!

今回ご紹介する文献はこちら↓            

“Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates” 

簡単に説明すると、”通常より重たいボールを用いて6週間ピッチング練習を行うと球速、ピッチング時の腕のバイオメカニクス、可動域、ケガのリスクにどのような影響を及ぼすのか?”という内容です。

結論は、、

何名かの選手にとっては、球速があがるという点では効果があるかもしれないが、それと同時にケガのリスクも増える可能性がある。また、球速が上がった理由として肩の受動的外旋可動域の動きが関係している可能性がある。

〇背景

 ここ最近のメジャーリーグ平均球速が、2008年に90.9マイルだったのが、2017年には93.2マイルにまであがってきており、アマチュア野球においても同じような傾向【球速アップ】がみられる。インターネット上での”投手向け球速向上プログラム(投球動作、腕の筋力&スピードを向上させることで5マイル、もしくはそれ以上の球速アップを目指す)”などのマーケット拡大も大きく影響していると考えられる。いくつかの研究においても、重たいボールを用いたトレーニングプログラムが球速アップに効果があると示している。

球速アップと関連して、肘のストレスやケガの割合が増えることが示唆されており、近年はプロアマ問わず、尺骨側副靭帯の再建手術の数が増えてきているのが現状である。【ニューヨーク州においては、2002年から2011年にかけてユースの野球選手における尺骨側副靭帯再建手術の件数が193%に膨れ上がってきている】しかしながら、球速アッププログラムがケガに及ぼす影響について直接調べた報告は少ない。

〇実験方法

対象:38名【13歳~18歳】/過去12カ月以内にケガがなし。

コントロール群/19名【通常練習】、トレーニング群/19名【重たいボールを用いた練習】

測定項目:*他動的可動域(肩/ 肘)*筋力(肩) *球速(通常5オンスボールを使用)*投球動作(肘の内反トルク&肩内旋速度)

時期 & 頻度:オフシーズン【1~2月中の6週間】。 トレーニング頻度・週3日

トレーニング内容

両群ともオフシーズンの通常ストレングス&コンディショニングトレーニングは実施。

トレーニング群は、週3回、下記のトレーニングを実施。【*各トレーニングポジションで5つの異なるウエイトボール➾2,4,6,16,32オンスを使用。】

〇結果

*38名中トレーニング群の4人が離脱【2人が肘、残りの2人下肢のケガ】

*トレーニング群【80% ➾球速アップ / 8%➾変化なし / 12%➾球速ダウン】。

*コントロール群 【67%➾球速アップ / 19%➾変化なし / 14%➾球速ダウン】

*トレーニング介入後の腕の角速度と肘のストレスに対しては変化なし。

*コントロール群 【13%➾利き手の外旋動作の筋力向上。トレーニング群は変化なし。】

*トレーニング群【肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大。コントロール群は変化なし。】

*トレーニング群【24%の選手がトレーニング中、もしくはシーズン中にケガと継続的に付き合う結果となった。トレーニング期間中ケガで離脱した2選手の肩関節の受動的外旋可動域拡大は非常に大きかった。(10° & 11°向上)コントロール群はケガなし。】

〇論文の内容を踏まえた上でのまとめ

近年、ウエイトボールを利用することで球速アップが期待されるといった内容のプログラムが注目されている。①腕振りのスピードアップと、②腕の筋力向上が球速アップを後押しすると考えられているものの、この研究では、トレーニング群では球速アップしたにも関わらず、①と②の両方とも変化しなかったということは興味深い。また、コントロール群は肩の筋力が向上したという点からも、現在期待されている理論(筋力アップが球速アップに影響を及ぼす)に反する結果となった。肩関節の受動的外旋可動域と球速との間には関連性が【トレーニング群➾肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大】あることから、今後も注目していく必要があると感じた。それと同時に、短期間(6週間)の急激な関節可動域の拡大がケガを誘発してしまう可能性については注視しておく必要がある。特に今回の被験者【13~18歳】のような発育段階においてまだ各関節の動的柔軟性がコントロールできていないカテゴリーにおいては、ウエイトボールを用いたトレーニング介入に関して慎重に考えていく必要があるのではないだろうか。

 

参考文献

Michael M. Reinold, PT, DPT, SCS, ATC, CSCS,*† Leonard C. Macrina, MSPT, SCS, CSCS, Glenn S. Fleisig, PhD, Kyle Aune, MPH, and James R. Andrews, MD§‖. Author information Copyright and License information Disclaimer Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates. Sports Health. 2018 Jul-Aug; 10(4): 327–333.