先週の日曜日、東京マラソンが冷たい雨の降る中、開催されました。
日本記録保持者の大迫傑選手が出場しましたが、残念ながら途中棄権でしたね。
東京マラソンにはトップランナーだけでなく、市民ランナーもたくさん出場します。
最近では光学式心拍計やGPSが内蔵されたランニングウォッチが安価で購入できるようになり、市民ランナーの多くがランニングウィッチを着用しています。
ランニングウォッチは心拍数や距離、速度を測定できるだけでなく、最大酸素摂取量(VO2max)を推定することもできます。すごいですね~ w(゚o゚*)w
VO2max??(;・∀・)??
VO2maxって何か、わかるよねぇ~??
忘れてしまった方は過去のブログを確認して下さい。
https://sports-okinawa.org/top-soccer-players-vo2max/
実験室でVO2maxを測定する場合には、トレッドミルで速度を規定してランニングを行い、その際の呼気ガスを分析します。
一方、ランニングウォッチを用いてVO2maxを推定する場合には、速度を規定せずに屋外でランニングを行います。
ランニングウォッチがどうやってVO2maxを推定してるか、わかるよねぇ~??
そこで今回は、
「マラソン わかるよねぇ~?? シリーズ第3章・ランニングウォッチを用いたVO2maxの推定」
をご紹介します。
【手順1】ランニング中の心拍数や走速度のデータを取得する。
速度を規定せずに屋外で行ったランニングから信頼性の高いデータを得るには、
– 信号待ちをしているとき
– 急坂や軟らかい地面を走っているとき
– 長時間のランニングによって心拍数が高まっているとき
などの状況を判別し、それらの状況で取得したデータを除く必要があります。
GARMINやSUUNTOにアルゴリズムを提供しているFirstbeatでは、そのような状況を判別する特許技術を有しています。
【手順2】最大心拍数(HRmax)時の走速度を推定する。
手順1で取得した走速度[m/s]と心拍数[bpm]は下記の図のような直線関係を示します。
信頼性の高い走速度と心拍数の関係を得るため、平坦で硬いところを15分以上かけて走り、心拍数をHRmaxの75%以上まで上げて行くことが推奨されています。
HRmaxは220-年齢や210-(年齢×0.65)などから算出でき、その値を走速度-心拍数関係に当てはめることでHRmax時の走速度を推定することができます。
【手順3】HRmax時の走速度からVO2maxを推定する。
手順2で推定したHRmax時の走速度[m/s]を下記の式に当てはめることで、VO2max[ml/kg/min]を推定することができます。
VO2max=11.1×HRmax時の走速度+5.3333
ランニング中の瞬間的なVO2maxを連続的に表示するランニングウォッチでは、下記の式を用いてVO2max推定しています。
V02max=[-c1×HR/HRmax+(1+c1)]×[11.1×(c2×Angle+1)×走速度+5.3333)]
c1やc2は定数ですが、具体的な数値は公開されていません。
推定式にAngle[rad]を含めることによって、道の傾斜の影響を考慮しています。
おわりに
ウェアラブル端末の技術が発展したおかげで、ランニングウォッチを使って容易にVO2maxを推定できるようになりました。
下図のようにVO2maxが高いほどマラソンのタイムが良いという関係が見られます。
VO2max[ml/kg/min]からマラソンの記録を予測する式がいくつか報告されています。
– マラソンのタイム[秒]=13967-70.44×VO2max (山地ら 1990)
– マラソンのタイム[分]=435.58-3.85×VO2max (Foster 1983)
– マラソンのタイム[分]=370.9-2.65×VO2max (Haganら 1981)
– 平均走速度[km/h]=(VO2max-26.4)/2.686【男性】 (MaughanとLeiper 1983)
– 平均走速度[km/h]=(VO2max-32.3)/1.819【女性】 (MaughanとLeiper 1983)
それぞれの式から自身の推定タイムを求め、マラソンの目標タイムを決める際の参考にしてみてはいかがでしょうか??
参考資料
・ Automated Fitness Level (VO2max) Estimation with Heart Rate and Speed Data (Firstbeat社のWhite Paper)
https://assets.firstbeat.com/firstbeat/uploads/2017/06/white_paper_VO2max_30.6.2017.pdf
・METHOD AND SYSTEM FOR DETERMINING THE FITNESS INDEX OF A PERSON (Firstbeat社のPatent)
・山地啓司、池田岳子、横山泰行、松井秀治.最大酸素摂取量から陸上中長距離、マラソンレースの競技記録を占うことが可能か.ランニング学研究 1990, 1, 7-14
・Foster C. VO2max and training indices as determinants of competitive running performance. J Sports Sci 1983, 1, 13-22
・Hagan RD, Smith MG, Gettman LR. Marathon performance in relation to maximal aerobic power and training indices. Med Sci Sports Exerc 1981, 13, 185-189
・Maughan RJ, Leiper JB. Aerobic capacity and fractional utilisation of aerobic capacity in elite and non-elite male and female marathon runners. Eur J Appl Physiol Occup Physiol 1983, 52, 80-87