#21 箱根駅伝予選会における「乳酸ニーヨン(2, 4)ワクワク大作戦」とは??

明日10月13日(土)、第95回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会(箱根駅伝予選会)が開催され、本戦への出場枠11をかけて39の大学が競い合います。

各大学10~12名の選手がハーフマラソンを走り、上位10名の合計タイムによって順位を決めます。

よって、数名の選手が優れたタイムを出しても予選を突破することは難しく、10名の選手が好タイムを出す必要があります。

10名の選手が好タイムを出す確率を高めるため、箱根駅伝予選会では多くの大学が「集団走」を行っています。

数名で構成された集団には「ペースメーカー」となる選手が配置されており、その選手が集団を先導することで、集団内の選手が好タイムで走る確率を高めます。

集団のメンバー構成やレースペースは、予選会までの走タイムや当日の体調に基づいて決定されていると思われます。

走タイム以外にメンバー構成やレースペースの決定に役立つデータはないでしょうか??

各選手の血中乳酸濃度のデータがあれば、メンバー構成やレースペースの決定に役立つのではないでしょうか??

その根拠は「エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング」(八田秀雄著)にまとめられています。

そこで今回は、この参考書から考えられる箱根駅伝予選会における「乳酸ニーヨン(2, 4)ワクワク大作戦」(青山学院大学・原晋監督 風)をご紹介したいと思います。

 

「乳酸性作業閾値(LT)」とは??
まずは運動強度と血中乳酸濃度の関係を見てみましょう。

運動強度が高くなると血中乳酸濃度が高くなるという関係が示されています。

もっとよく見ると、血中乳酸濃度が急に高くなり始める運動強度があるのが分かります。

そのような運動強度を「乳酸性作業閾値(Lactate Threshold: LT)」と呼びます。

 

なぜLT強度から血中乳酸濃度が高くなるの??

LT強度から血中乳酸濃度が高くなるのは、運動の「主な」エネルギー供給源が脂肪から糖に変わるためです。

下の図のように、安静時に脂肪と糖の使われる比率はおよそ2:1ですが、LT強度ではおよそ1:1となり、さらに高い運動強度では糖の比率がさらに高くなります。

では、なぜ糖の利用比率が高くなると血中乳酸濃度が高くなるのでしょか?

下記の図は糖が利用される反応経路を示したものです。


糖(グルコース、グリコーゲン)が利用されるとピルビン酸ができます。

その後、ピルビン酸は酸化されて二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になります。

しかし、運動強度が高くなって糖の利用比率が高くなると、ピルビン酸を酸化する経路の処理能力を上回るピルビン酸ができてしまいます。

すると、酸化経路に入れなかったピルビン酸は、乳酸となって経路に入る順番待ちをします。

そのため、糖の利用比率が高まると血中乳酸濃度が高くなるのです。

 

一時的に乳酸となったピルビン酸はその後、ピルビン酸に戻って酸化され、二酸化炭素と水となります。

その際にはエネルギーの詰まった化学物質(アデノシン3リン酸: ATP)ができます。

ですので、乳酸は溜まるだけの老廃物ではなく利用可能なエネルギー源なのです。

 

箱根駅伝予選会における「乳酸ニーヨン(2, 4)ワクワク大作戦」とは??

LT強度で感じる運動のきつさは「(快調だけど)少しきついかな??」くらいです。

よって、NAHAマラソンでの目標が「完走」というあなたの場合、LT強度を保って走り続けるのが良いでしょう。

一方、マラソン選手はLT強度よりも高い運動強度で走っています。

LT強度での血中乳酸濃度は「2」ミリモルくらいですが、マラソン選手は血中乳酸濃度が「4」ミリモルくらいの運動強度で走っています。

血中乳酸濃度が4ミリモルとなるときの運動強度は「OBLA(Onset of Blood Lactate Accumulation)」と呼ばれ、マラソン選手のトレーニングやレースペースの検討に活用されています。

 

下の図のように、マラソンのレース序盤はOBLA強度がおおよそ同じ選手(A~C選手)が集団となって走っています。


しかし、レースが進むにつれてOBLA強度が低いB選手は集団のペースについていけなくなり、集団から脱落します。

また、OBLA強度が最も高いC選手が集団のペースを上げると、OBLAちょうどの強度で走っていたA選手もやがて集団から脱落します。

 

このことから、下記のような箱根駅伝予選会における「乳酸ニーヨン(2, 4)ワクワク大作戦」を考えてみました。

① OBLA強度が高いC選手がペースメーカーとして、OBLA強度が最も低いB選手が集団から脱落しないペースで集団を先導する。

➁ レース終盤、B選手が確実に好タイムでゴールできる距離まで到達したら、C選手はA選手がぎりぎりついて来れるところまでペースを上げる。

③ その後、A選手がついて来れなくなったところで、C選手はスパートをかけて単独でゴールを目指す。

このような集団走を実行できれば、すべての選手が好タイムでゴールすることでき、作戦大成功!!となるのではないでしょうか??

 

しかしこの大作戦、実際には「ミッション:インポッシブル」だと思われます。

LT強度やOBLA強度は体調の影響を受けやすいため、予選会当日の各選手の体調によって作戦が「机上の空論」となる可能性があるためです。

よって、箱根駅伝予選会での集団走の成功は、当日の選手の体調も考慮して集団のメンバー構成やレースペースを決定する監督の手腕に依るところが大きいでしょう。

 

P.S.

箱根駅伝予選会の季節ということは、あと何か月かで今年も終わりですね。

お正月に決意した私の「2018年ワクワク大作戦」って何でしたっけ??

 

参考文献

エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング,八田秀雄著,講談社サイエンティフィク,2004年

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