9月29日に開幕した2018女子バレーボール世界選手権、いよいよ10月19日から決勝ラウンドが始まり、日本代表はアメリカ代表との5位決定戦に挑みます!!
1次ラウンド、2次ラウンド、3次ラウンド…たくさんの試合でたくさんのスパイクを打ったと思います。
肩周りの筋はもちろんですが、着地の衝撃を受け止める足部の骨も大変だったと思います。
着地の衝撃に負けない強さがないと、バレーボール選手の足部の骨は務まりません。
運動に適応して骨が強くなることは、様々な研究によって明らかにされています。
そこで今回はTenfordeとFredericson (2011)を参考に、運動が骨の強さに及ぼす影響についてご紹介したいと思います。
まずは、体操や水泳が骨の強さに及ぼす影響を考えてみましょう。
Courteixら(1998)は女子小学生の体操選手や水泳選手と一般の女子小学生(対照群)の骨密度の比較を行いました。
その結果、体操選手は対照群よりも骨密度が高く、水泳選手と対照群の骨密度には違いが見られなかったと報告しています。
体操選手の骨はジャンプやタンブリング(マットでの回転運動)による瞬間的な強い衝撃によって強くなったと思われます。
一方、水泳選手はそのような強い衝撃のない水中で運動を行っているため、一般の女子小学生と変わらない骨密度であったと思われます。
バレーボールやサッカー、バスケットボールなどの球技では、ジャンプやスプリントによって様々な方向から強い衝撃が骨にかかります。
一方、マラソンのような長距離走では、軽い負荷が繰り返し足部の骨にかかります。
そのような球技や長距離走による衝撃は、骨の強さに影響を与えるのでしょうか?
Fredericsonら(2007)はサッカー選手、長距離選手、非競技者(いずれも成人男性)の骨密度を比較する研究を行っています。
その結果、サッカー選手は非競技者に比べて全身、腰椎、股関節、脚および踵の骨密度が高かったと報告しています。
一方、長距離選手は非競技者に比べて踵の骨密度だけが高かったと報告しています。
これらの結果は、骨は運動による衝撃に適応して強くなることを示しています。
様々な競技を下記のような5つのグループに分け、運動が脛骨(すねの骨)に及ぼす影響を検討した研究(Nikanderら 2010)があります。
その結果をまとめたものが下記の図です。
脛骨遠位部の骨塩量では、High impact、Odd impact、Repetitive low-impactグループが非競技者よりも高い値を示しています。
脛骨骨幹部の骨塩量では、High-impactやOdd-impactグループが非競技者よりも高い値を示しています。
また、脛骨の総横断面積や骨質部面積では、High-impact、Odd-impact、Repetitive low-impactグループが非競技者よりも高い値を示しています。
これらの結果から、骨に大きな衝撃や繰り返しの衝撃のかかる運動によって骨が強くなることが明らかになりました。
ここまでご紹介した研究以外にも、運動が骨の強さに及ぼす影響を検討した研究はたくさんあります。
TenfordeとFredericson (2011)はそれらの研究の結果を総合的に判断し、若年期に骨への「衝撃」が大きい運動を行うことで骨の強さを最大限に得ることができ、骨に「衝撃」のかからない運動を行っても骨は強くならないと結論づけています。
【追記】
TenfordeとFredericson (2011)では下記のようなことも紹介されていました。
・ 青年期の運動で強くなった骨は、将来的な骨折を予防する可能性があります。
青年期にサッカーやバスケットボールを行っていた20代の長距離選手は、疲労骨折の発生リスクが低かったという報告があります。
・ 骨を強く保つ上で運動を続けることが重要です。
運動で得られた骨の強さは、運動をやめると失われてしまうことが報告されています。
・ 骨の強さは運動の他に栄養や遺伝、ホルモンの影響を受けます。
若年期の選手にとってはバランスのよい食事、消費カロリーと摂取カロリーのバランスの取れた食事が重要となります。
【参考文献】
Tenforde, Fredericson (2011) Influence of Sports Participation on Bone Health in the Young Athlete: A Review of the Literature. PM & R: the journal of injury, function, and rehabilitation; 3: 861-867