#23 少年野球選手のスイング動作とその練習法を科学する

先週末からSMBC日本シリーズ2018(福岡ソフトバンクホークス‐広島東洋カープ)が始まりました。

先週は木曜日にドラフト会議も行われ、未来の日本プロ野球界のスター候補104名が指名されました。

もっと未来のプロ野球界のスター候補である子供たちは、「もっと野球が上手くなりたい!」と毎日の練習を頑張っていると思います。

そこで今回は「科学する野球 バッティング&ベースランニング」(平野祐一著)から、少年野球選手のスイング動作の特徴とその改善方法をご紹介したいと思います。

 

少年野球選手の身長と腰、肩、バットの回転速度の関係

下記の図は、少年野球選手が下手トスで投げられたボールを打った時の腰、肩、バットの回転速度(角速度)の最大値を示したものです。

(横軸を年齢ではなく身長としたのは、成長の早い/遅いを見るためです。)


回転速度の最大値は回転の起こる順番、すなわち腰、肩、バットの順に大きくなりますが、腰の回転速度(□)は身長が高くなってもあまり変わっていません。

一方、肩の回転速度(-)は身長が高い選手ほど大きいことが分かります。

身長が高い少年野球選手ほど腰の回転を肩に上手く伝達できたこと、体幹の筋を上手く使えたことが要因と考えられます。

また、バットの回転速度(◆) すなわちスイング速度も身長が高い選手ほど大きいことが分かります。

身長が高い少年野球選手ほど肩(体幹)の回転をバットに上手く伝達でき、腕の筋を上手く使えたため、このような傾向が見られたのではないでしょうか?

 

次に、バットの回転速度(◆)が平均値(曲線)よりも優れている選手(破線矢印)と劣っている選手(実線矢印)に着目します。

肩とバットの回転速度の差(-と◆の差)に特徴が見られますが、分かるでしょうか?

バットの回転速度が優れている選手は肩とバットの回転速度の差が大きく、

バットの回転速度が劣っている選手は肩とバットの回転速度の差が小さくなっています。

このような特徴は、肩(体幹)の回転を「腕」で上手く使えたか?「腕」の筋を上手く使えたか?によって生じた考えられます。

これらのことから、スイングの遅い少年野球選手は「腕」の使い方に問題があるようです。

 

少年野球選手の球速、スイング速度の一年間の変化

少年野球選手の球速(ボールスピード)やスイング速度(バットスピード)が一年間でどれだけ変化するかを調べたものが下記の図になります。


身長は最初の年の測定で計測し、ボールスピード(〇)とバットスピード(●)は最初の年の測定と1年後の測定で2回測定して変化量を調べています。

その結果、1年間で変化が大きかったのは、ボールスピードについては身長の低い選手、バットスピードについては身長の高い選手であることが分かりました。

身長の低い選手はおそらく筋力も低いと思われますが、筋力の低い選手にはボールよりも重いバットのスピードを高めることが難しかったと思われます。

 

少年野球選手のスイングを改善するトレーニングとは??

上述した2つの結果から、筋力の低い少年野球選手の場合、軽いバットで練習を行うことで腕を上手く使えるようになり、スイングを改善できる可能性があります。

そこで、小学校2~4年生の少年野球選手に通常の練習に加えて、通常使っているバットより60~80%程度軽いバットを使って6週間の素振りをしてもらいました。

その結果、腰の回転速度には影響がなく、腰に対する肩の回転速度は小さくなり、肩に対するバットの回転速度は大きくなりました。

つまり、軽いバットを使った練習でスイングに対する体幹の貢献は小さくなり、腕の貢献は大きくなったということです。

この結果は「手打ちになって、体幹を使ってバットを振れなくなった」と解釈することもできるでしょう。

よって、軽いバットを使った練習には長所と短所があることを理解し、腕を上手く使えていない少年野球選手のスイングを改善する1つの方法として考えるのが良いでしょう。

 

おわりに

今回ご紹介した内容は「科学する野球 バッティング&ベースランニング」(平野祐一著)の一部をまとめたものです。

本書の「はじめに」には少年野球選手の指導について下記のような記述がありました。

子供に限らず、指導者の果たす役割は「『また今度も野球をやりたい』と選手が思うようにすること」と私は思っている。

選手がそう思う中には「上手くできた」「今度は上手くできそうだ」「今度こそ上手くなる」という野球の技術や戦術に対する気持ちが強い。

そう思うようにと技術や戦術を懸命に指導するのだが、時に行き過ぎてしまって選手の気持ちがついていけない、さらには故障してしまうという事態が生じている。

これでは「また今度も」という気持ちにはとてもなれない。

その上で著者は本書の目的を‟選手が「また今度も」という気持ちになるために役立つこと” ‟指導者が指導に役立つ知見を増やすための踏み台になること”としています。

 

指導者の皆さまには子供たちが「また今度も」という気持ちになれる指導を心がけて頂きたいと思います。

私たちは皆さまが「また今度も読みたい」という気持ちになれるブログを書きたいと思っています!!

 

参考資料

BBMスポーツ科学ライブラリー 科学する野球 バッティング&ベースランニング、平野祐一著、ベースボール・マガジン社

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