#51 モチベーションが高まる「ちょうどいい目標」とは??

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今年予定されていた東京オリンピックが来年に延期となってしまいました。選手のモチベーションへの影響が懸念されますが、「延期になってもモチベーションを保ち、その日に向けてやっていきたい」といった力強い選手のコメントもありました。

モチベーション(動機づけ)とは、「行動を開始させ、その行動を適切な方向へと導いていく過程」の総称です。

コーチが選手に動機づけを行う際には、目標を設定することが重要です。なぜなら目標は活動の方向と到達点を示し、選手の行動を適切な方向へと導くものだからです。

しかし、その目標があまりに高過ぎると、行動を開始する意欲が生まれません。逆に、目標が低過ぎても、その目標に進んで取り組む気持ちになれません。つまり、目標が高過ぎても低過ぎても、選手の行動を適切な方向に導くことができないのです。

そこで今回は、選手にとって「ちょうどいい目標」とは??のヒントを与えてくれる「目標の設定が立ち幅跳びの成績に及ぼす効果」(杉原と海野 1976)をご紹介します。

   

この実験では被験者に立ち幅跳びを行わせ、その跳躍距離を成績として評価しています。立ち幅跳びを行う際、被験者には「達成できる可能性の異なるいくつかの目標」を与えます。いくつかの目標とは、「自身の最大跳躍距離の100, 110, 120, 130%の跳躍距離」です。

その結果、下記の図のような結果が得られました。

それぞれの%目標(横軸)で記録された%最大跳躍距離(縦軸)を比較すると、最大跳躍距離の110%を目標にしたとき、立ち幅跳びの成績が最も良くなることが分かりました。

目標を設定せずに立ち幅跳びを行うと、目標を設定した場合よりも成績が悪いことも分かりました。)

最大跳躍距離の110%の目標とは、達成できる可能性が50%くらいのものです。

これらのことから、選手にとって「ちょうどいい目標」とは、自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標であると言えます。

ご紹介したような目標設定は、何回、何mのように明確かつ具体的な数値を設定できる場合に効果的です。サッカー選手のリフティング回数、野球選手の遠投距離、テニス選手のサーブ成功率などの目標設定を行う際に活用してみてはいかがでしょうか?

   

数値目標を設定して練習を行う際には、選手に記録を伝えるフィードバックを行うことをオススメします。下記の図は、目標の設定やフィードバックの実施がパフォーマンスの改善に及ぼす影響を示したものです。

この図のポイントは、目標設定と共にフィードバックを実施したときのパフォーマンスの増加率が、目標設定のみの増加率とフィードバック実施のみの増加率の単純な足し算よりも大きいところです。

すなわち、目標の設定と共にフィードバックを実施することで、パフォーマンス改善への「相乗効果」を期待できるということです。

   

今回のブログでは、選手にとって「ちょうどいい目標」とは「自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標」とお伝えしました。

私の目標は「NAHAマラソンでのサブ4達成」ですが、日々の練習ではサブ4ぎりぎりのレースペースを目標に設定しています。もう少し挑戦的なペースを目標にしなければいけませんね…(汗)

   

参考文献

・松田岩男、杉原隆編著. 4. 運動と動機づけ, 新版 運動心理学入門, 大修館書店, 東京, 54-87, 1987.

・杉原隆. 8. 目標設定と目標志向性, 新版 運動指導の心理学, 大修館書店, 東京, 161-178, 2008.

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