#61 足を速くする方法とは!?【発育発達編】 Vol.2

発育発達とスプリント能力

 人は2歳ごろから走ることができるようになり、6、7歳ごろまでに成人と同じような走動作を獲得するとされています(宮丸,2002)。1歳から成人までの疾走能力の発達を追っていくと、下記のようなポイントにまとめられます(加藤,2004)。

【疾走速度】

男子:加齢に伴って17歳頃まで増大するが、その後停滞傾向を示す

女子:13歳頃まで増大し、以降停滞する

 

【ストライド】

男子:14〜15歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

女子:13〜14歳頃まで増大し、その後停滞傾向を示す

 

【ピッチ】

男子:2〜14歳頃まで明確な変化はないが、15~17歳にかけて増大する

女子:2歳から成人まで明確な変化なし

 

以上の結果から、1歳半〜12歳までの疾走速度の増大は、男女ともにピッチよりもストライドの増大によるものであるが、男子の15歳〜17歳における疾走速度の増大は、ストライドよりもピッチによるものであるとし、思春期における疾走能力の発達に明確な男女差があることが分かっています。(加藤,2004)。また、横山ほか(2012)の報告によると、身長が一番伸びる時期は、女子は12歳頃、男子は14歳頃であり、身長の増加が停滞してくるのが女子は14歳頃、男子は16歳頃からであるとされています。よって、思春期前後までにおいては、身長が伸びて、筋量も増えていくことでストライドが増大し、その結果として疾走速度が増大していることが推察されます。以上より、発育発達に伴って疾走速度が自然とある程度増大していきますが、身長が伸びることでのネガティブな影響や、身長が伸びなくなってからのトレーニングで気をつけるべきポイントがあります。

まず、身長が伸びると、四肢が長くなっていくためモーメントアームが長くなり、高速で四肢を動かすためにはより高い筋力や神経系機能が必要になります。そのため、身長が急激に伸びると俊敏に動くクイックネスが低下する可能性があります。また、身長が伸びると骨と筋腱の成育に不均衡が生じ、筋腱の緊張が一時的に高くなることがあり、いわゆる身体の柔軟性が低下する可能性があります。よって、動的可動域の確保とケガ予防のために、柔軟性を維持する必要があります。以上のことを踏まえ、発育発達に応じたスプリントトレーニングを行う際の注意点は以下のようになります。

 

 ①クイックネスの維持・向上、ひいてはピッチの維持・向上のため、神経系機能トレーニング(SAQトレーニングなど)をしっかりと行う

 ②動的可動域の確保とケガ予防のために、ストレッチング(スタティック、ダイナミックともに)をしっかりと行う

 

 これらの内容に留意しながら、トレーニングで足を速くすることの楽しさを存分に味わってください!

図1 年齢にともなう疾走速度、ストライド、ストライド/身長、ピッチの変化

※宮丸(2002)より引用

 

関西福祉大学 講師 熊野陽人

 

[資料]

・加藤謙一(2004)走能力の発育発達. 金子公有・福永哲夫編, バイオメカニクス-身体運動の科学的基礎-. 杏林書院:東京, pp.179-180.

・宮丸凱史 (2002) 疾走能力の発達: 走り始めから成人まで. 体育学研究, 47: 607-614.

・横山徹爾, 加藤則子, 瀧本秀美, 多田裕, 増谷進, 田中敏章, 板橋家頭夫, 田中政信, 松田義雄, 山縣然太朗(2012)乳幼児身体発育評価マニュアル. 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業, 「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」, pp. 67.

 

 

 

#59 サッカーとジュニア【無酸素トレーニング編】 Vol.4

4:無酸素性トレーニング

 無酸素性のトレーニングは、スピードトレーニングとスピード持久力トレーニングに大別されます。さらに、スピード持久力トレーニングは、メンテナンストレーニングとプロダクショントレーニングに分けられます。

 4-1:スピードトレーニング

 スピードトレーニングは、瞬時に動作を起こす必要性のあるゲーム状況を認知する能力の向上、瞬時に動作を起こす能力の向上および高強度運動の中で素早く力を発揮する能力の向上を目的として行われます。スピードトレーニングの原則を表4に示します。スピードトレーニングを実施する際は、短い時間で全力を出し切ることが重要です。スピードトレーニングの例を図9に示します。

表4:スピードトレーニングの原則

    

図9:スピードトレーニング例(キャッチ)

 

4-2:スピード持久力トレーニング

 スピード持久力トレーニングは、無酸素性のエネルギー供給によって、瞬時にパワーとエネルギーを発生する能力を高めたり、パワーとエネルギーを持続的に発生し続ける能力を高めたりすることを目的として行われます。スピード持久力トレーニングの原則を表5に示します。スピード持久力トレーニングもスピードトレーニングと同様に主運動中は、極めて高い強度で実施する必要があります。メンテナンストレーニングの例を図10に、プロダクショントレーニングの例を図11に示します。

表5:スピード持久力トレーニングの原則

図10:スピード持久力メンテナンストレーニング例(アタッキング)

図11:スピード持久力プロダクショントレーニング例(ハンティング)

 スプリントパフォーマンスは、スピードトレーニングを実施することで向上することが期待できます。高強度運動パフォーマンスは、スピード持久力トレーニングや有酸素性高強度トレーニングを実施することで向上することが期待できます。

 

5:サッカーにおけるパワートレーニングの考え方

 サッカーでは、パワートレーニングを①基礎パワートレーニング②変換パワートレーニング③サッカーパワートレーニングの3つに分類して考えることができます(図12)。

図12:サッカーのパフォーマンスと3つに分類したパワートレーニングとの関連

 5-1:基礎パワートレーニング

 基礎パワートレーニングは、フリーウェイトや各種トレーニング機器を用いて高い外的負荷に対して動作を行います。スクワットやレッグプレスなどがトレーニング例です。

5-2:変換パワートレーニング

 変換パワートレーニングは、トレーニングを通して、ジャンプや急激な加速・減速、方向転換のように基礎的な筋力をサッカーに関連した動きの中で発揮する能力を高める内容です。ボックスジャンプやハードルジャンプなどがトレーニング例です。

5-3:サッカーパワートレーニング

 サッカーパワートレーニングは、基礎や変換パワートレーニングで養った能力をシュート、加速・減速、スプリントなどの強度の高い試合中の動きに還元できるようにする内容です。サッカーのパワートレーニングの例を図13に示します。

図13:サッカーパワートレーニング例(加速・減速・シュート)

 筋発揮パフォーマンスは、これらのパワートレーニングを参考に実施することで向上することが期待できます。

 

  4回にわたり、ブログを書きました。現代のエリートサッカー選手にはどのような能力が求められているのか、その能力はどのように客観的に評価することができるのか、そしてその能力はどのようなトレーニングで向上することができるのか、について誰かの参考になれば幸いです。

 

引用文献

・ヤン・バングスボ(2008)ゲーム形式で鍛えるサッカーの体力トレーニング.大修館書店・東京.

・ヤン・バングスボ,イェスペル・L・アナセン(2018)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手のパワートレーニング.大修館書店・東京.

・広瀬統一,菅澤大我(2016)サッカーボールを使ったフィジカルトレーニング.ベースボール・マガジン社・東京.

中京大学スポーツ科学部 准教授 大家 利之

#58 サッカーとジュニア Vol.3【体力をあげる!】

 前回のブログでサッカー選手に特に必要な4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手の基準値について紹介しました。今回のブログでは、その体力的要素を向上させるトレーニング方法について紹介します。

 現代のサッカーでは、持久的パフォーマンス、高強度運動パフォーマンス、スプリントパフォーマンスおよび筋発揮パフォーマンスを高く発揮する能力がエリート選手には、特に重要であることを以前のブログで説明しました。これらの能力を向上させるためには、ウェイトトレーニングなどで基礎的な筋力を向上させたり、パワー発揮能力を向上させたりすることは大変重要なことです。

 基礎的なトレーニングについての詳細が知りたい方は、スポーツおきなわのスタッフにお問い合わせ頂くとして、本ブログでは持久的パフォーマンス、高強度運動パフォーマンスおよびスプリントパフォーマンス向上のために、サッカーボールを用いたトレーニング方法の原則およびトレーニング例について紹介します。また、筋発揮パフォーマンスのトレーニングについては、サッカーでどのように考えるべきかについての例を簡単に紹介します。

1:サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素

 ボールを用いたサッカーのトレーニング方法は無限に考えることができます。トレーニング内容を決定する上で重要なことは、サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素について理解することです。サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素は主に8つです(表1)。例えば、4対4のスモールサイドゲームを実施する場合、②のルール要素において、1回に触ることができる回数(タッチ数)に制限を設けることでフリータッチと比較して運動強度が上がり、⑦のストレス要素においてコーチの激励(コーチング)があることによってない場合と比較して運動強度が上がると報告されています(図1)。トレーニングの目的に応じて、これらの要素を変更し、トレーニング強度を決定することが重要です。

表1:サッカーのトレーニング強度を変化させるために変更することができる要素

要素

変更例

①ボール

数、サイズ、形、重さ

②ルール

禁止事項、条件設定

③ゴール

数、大きさ、設置する位置

④フィールド

面積、形(縦と横の比率など)

⑤選手(味方、相手)

それぞれの数、GKの有無

⑥トレーニング時間

長さ、反復回数

⑦ストレス

コーチからのコーチング、プレッシャー

⑧配球

どこから始めるか、どういうボールを出すか

図1:サッカーのトレーニング強度とトレーニング要素の変更との関係(ストレングス&コンディショニングジャーナル,Vol25,No.2,2018)

        

2:サッカーボールを用いた体力トレーニング

 サッカーの体力トレーニングについて、ここでは日本サッカー協会の指導者講習会で用いられている考え方を紹介します。日本サッカー協会の指導者講習会では、図2のように体力トレーニングを分類しています。ここでは、有酸素性および無酸素性トレーニングのことについて説明します。

図2:サッカーの体力トレーニングの分類

 

3:有酸素性トレーニング

 有酸素性トレーニングは、互いに重なりあった3つの領域に分類されます。低強度、中強度、高強度の3種です。有酸素性トレーニングの原則を表2に示します(最大心拍数を200拍/分と仮定した場合)。

表2:有酸素性トレーニングの原則

 3-1:有酸素性低強度トレーニング

 有酸素低強度トレーニングは、試合やトレーニング後の素早い回復を促すことを目的として行われます。図3は、ある有酸素性低強度トレーニングを40分間行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性低強度トレーニングは、持続的な運動または間欠的な運動のいずれで実施しても問題ありませんが、間欠的な運動として行う場合は、主運動の時間が5分以上になるようにトレーニング時間を設定する必要があります。

図3:有酸素性低強度トレーニング中の心拍数の変化例

 3-2:有酸素性中強度トレーニング

 有酸素性中強度トレーニングは、長時間にわたって運動を行う能力を向上させることを目的として行われます。図4はゲーム形式のスコアリングコーン(図5)を行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性中強度トレーニングも低強度トレーニングと同様に、持続的な運動または間欠的な運動のいずれで実施しても問題ありませんが、間欠的な運動として行う場合は、主運動の時間が5分以上になるようにトレーニング時間を設定する必要があります。

 

図4:有酸素性中強度トレーニング(スコアリングコーン)中の心拍数の変化例

図5:有酸素性中強度トレーニング例(スコアリングコーン)

3-3:有酸素性高強度トレーニング

 有酸素性高強度トレーニングは、長時間にわたって、高強度運動を行う能力を向上させることを目的として行われます。有酸素性高強度トレーニングは、間欠的な運動(インターバル方式)で行います。運動時間と休息時間の比率は表3の通りです。図7は、運動時間2分、休息時間1分の有酸素性高強度トレーニングを行った時のある選手の心拍数の変化を示しています。有酸素性高強度トレーニングの例を図8に示します。

表3:有酸素性高強度トレーニングの運動時間と休息時間の組み合わせ例

図7:有酸素性高強度トレーニング中の心拍数の変化例

図8:有酸素性高強度トレーニング例(5対5 マンツーマンボールキープ)

 持久的パフォーマンスは、有酸素性の中強度、高強度トレーニングを実施することで向上することが期待できます。表2および表3の原則を参考にして、トレーニングを実施して下さい。

 

最終vol.4へ続く。

 

 

引用文献

・ヤン・バングスボ(2008)ゲーム形式で鍛えるサッカーの体力トレーニング.大修館書店・東京.

・ヤン・バングスボ,イェスペル・L・アナセン(2018)パフォーマンス向上に役立つサッカー選手のパワートレーニング.大修館書店・東京.

・広瀬統一,菅澤大我(2016)サッカーボールを使ったフィジカルトレーニング.ベースボール・マガジン社・東京.

#56 サッカーとジュニア vol.1【1試合でどれだけ走る?】

 サッカーは、ルールが分かりやすく、用具をあまり必要としないことから世界的にも人気の高いスポーツです。老若男女問わず、レクリーエーションとして、競技スポーツとして、誰もが楽しめるスポーツです。その中でも本ブログでは、プロサッカー選手に必要な体力的要素やトレーニングについて3回にわたって紹介します。

 

  • サッカー選手は1試合(90分間)でどれくらい走るのか?

 最近では、測定機器が小型・軽量化したことや、競技規則の改正によりサッカー選手の試合中の動きをほぼリアルタイムで数値化することができるようになりした。サッカー選手の試合中の動きを測定するのに良く用いられるのは、GPS(Global Positioning System)を利用したパフォーマンス分析装置です(図1)。

図1 GPSパフォーマンス分析装置(https://archivetips.com/gpexe)

GPSパフォーマンス分析装置を使用したデータから、サッカー選手は、1試合で9km~12km走ると言われています(GKは4kmくらい)。ただし、ほぼ一定のペースで前向きに走る陸上の長距離走種目とは違い、サッカー選手はスプリント、ジャンプ、ターン、シュートやタックルなどさまざまな動き繰り返しながら90分間動き続ける体力が必要です。特に時速15km以上の高強度の動きを繰り返す能力は、シュートチャンスを生み出したり、防いだりする決定的な場面で必要です。高強度な動きを繰り返す能力は、現代サッカーでは特に選手に求められます。

 

  • サッカー選手に必要な体力的要素とは?

 サッカー選手の試合中のパフォーマンス発揮に影響する主な要素は、①心理的・社会的要素、②技術的要素、③戦術的要素、④体力的要素、の4つです。ここではサッカー選手が試合中に高いパフォーマンスを発揮するための体力的要素について説明します。

 サッカー選手に特に求められる体力的要素は、次に示す4つです。1)持久的パフォーマンス、2)高強度運動パフォーマンス、3)スプリントパフォーマンス、そして4)筋発揮パフォーマンスです。

1)持久的パフォーマンス

 先程も書きましたが、サッカー選手は試合中にさまざまな動きを行いながら、90分間走り続けます。したがって、サッカー選手に特に求められるのは、2)で示す高強度運動パフォーマンスを繰り返す能力です。しかしながら、一定強度の運動を持続的に行う基礎的な持久力が全く必要ないわけではありません。高強度運動と高強度運動のリカバリー時(回復時)の素早い回復と、この基礎的な持久力の高さは密接に関係しています。基礎的な持久力もサッカー選手には必要な体力的要素です。

 

2)高強度運動パフォーマンス

 スプリント、ジャンプやシュートなど試合中に高強度な運動を繰り返すことができる能力は現代のサッカー選手に特に求められます。イタリアのトップレベルの選手を対象にしたMohrらの研究によると、時速15km以上の高強度運動は1試合あたり平均2.43kmで、競技レベルが高い選手は低い選手と比較してその距離が長いことを報告しています。

 

3)スプリントパフォーマンス

 サッカーの試合中、1回のスプリントの時間は平均で2~4秒であり、距離にすると20m以下が多いです。20m以下の短い距離を素早く走る能力は、試合における決定的な場面で大変重要な体力要素です。試合の中で発揮されるスプリント能力とは、疾走能力だけでなく、認知能力や予測する能力も含まれます。

 

4)筋発揮パフォーマンス

 ジャンプなど下肢のパワーを瞬発的に発揮する能力は、スプリント能力と同様に試合における決定的な場面で重要な体力的要素です。

 

次回のブログでは、これらの4つの体力的要素の測定方法とプロサッカー選手になるためにはどれくらいの能力が必要かについて紹介したいと思います。

 

参考文献

・日本サッカー協会医学委員会(2019)コーチとプレイヤーのためのサッカー医学テキスト第2版.金原出版・東京.

・Mohr et al.(2003)Match performance of high-standard soccer players with special reference to development of fatigue. J Sports Sci; 21: 519-528.

プロフィール

大家利之【おおや としゆき】先生

中京大学スポーツ科学部 准教授

 

 

#51 モチベーションが高まる「ちょうどいい目標」とは??

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今年予定されていた東京オリンピックが来年に延期となってしまいました。選手のモチベーションへの影響が懸念されますが、「延期になってもモチベーションを保ち、その日に向けてやっていきたい」といった力強い選手のコメントもありました。

モチベーション(動機づけ)とは、「行動を開始させ、その行動を適切な方向へと導いていく過程」の総称です。

コーチが選手に動機づけを行う際には、目標を設定することが重要です。なぜなら目標は活動の方向と到達点を示し、選手の行動を適切な方向へと導くものだからです。

しかし、その目標があまりに高過ぎると、行動を開始する意欲が生まれません。逆に、目標が低過ぎても、その目標に進んで取り組む気持ちになれません。つまり、目標が高過ぎても低過ぎても、選手の行動を適切な方向に導くことができないのです。

そこで今回は、選手にとって「ちょうどいい目標」とは??のヒントを与えてくれる「目標の設定が立ち幅跳びの成績に及ぼす効果」(杉原と海野 1976)をご紹介します。

   

この実験では被験者に立ち幅跳びを行わせ、その跳躍距離を成績として評価しています。立ち幅跳びを行う際、被験者には「達成できる可能性の異なるいくつかの目標」を与えます。いくつかの目標とは、「自身の最大跳躍距離の100, 110, 120, 130%の跳躍距離」です。

その結果、下記の図のような結果が得られました。

それぞれの%目標(横軸)で記録された%最大跳躍距離(縦軸)を比較すると、最大跳躍距離の110%を目標にしたとき、立ち幅跳びの成績が最も良くなることが分かりました。

目標を設定せずに立ち幅跳びを行うと、目標を設定した場合よりも成績が悪いことも分かりました。)

最大跳躍距離の110%の目標とは、達成できる可能性が50%くらいのものです。

これらのことから、選手にとって「ちょうどいい目標」とは、自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標であると言えます。

ご紹介したような目標設定は、何回、何mのように明確かつ具体的な数値を設定できる場合に効果的です。サッカー選手のリフティング回数、野球選手の遠投距離、テニス選手のサーブ成功率などの目標設定を行う際に活用してみてはいかがでしょうか?

   

数値目標を設定して練習を行う際には、選手に記録を伝えるフィードバックを行うことをオススメします。下記の図は、目標の設定やフィードバックの実施がパフォーマンスの改善に及ぼす影響を示したものです。

この図のポイントは、目標設定と共にフィードバックを実施したときのパフォーマンスの増加率が、目標設定のみの増加率とフィードバック実施のみの増加率の単純な足し算よりも大きいところです。

すなわち、目標の設定と共にフィードバックを実施することで、パフォーマンス改善への「相乗効果」を期待できるということです。

   

今回のブログでは、選手にとって「ちょうどいい目標」とは「自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標」とお伝えしました。

私の目標は「NAHAマラソンでのサブ4達成」ですが、日々の練習ではサブ4ぎりぎりのレースペースを目標に設定しています。もう少し挑戦的なペースを目標にしなければいけませんね…(汗)

   

参考文献

・松田岩男、杉原隆編著. 4. 運動と動機づけ, 新版 運動心理学入門, 大修館書店, 東京, 54-87, 1987.

・杉原隆. 8. 目標設定と目標志向性, 新版 運動指導の心理学, 大修館書店, 東京, 161-178, 2008.

#48 トップのラグビー選手、ジュニア時代はこうだった !!6つのポイント 最終回

ワールドカップラグビーの決勝から2週間経ったにもかかわらず関わらず、その余韻を楽しむかのように多くのメディアに各選手が出演している姿を見かけます。先日、某局で放送されていた番組にプロップの稲垣選手が出演していたのですが、収録中全く笑わず、しまいには周りの出演者から笑い方を指導されていたのが非常に印象的でした(^-^)。その他にもうどんを1度に2kgたいらげた話や小学生時代に体育館の床に穴をあけてしまった話など稲垣選手のことがますます気になってきた今日この頃です。そんなトップの選手がジュニア期にどう過ごしていたのか気になりますよね? 今回も前回に引き続きラグビーのジュニア選手に関しての情報をシェアさせて頂きますね。

⑤トップで成功するカギはジュニア期の持久系能力にあり。

一般的に競技レベルが上がるにつれて、持久系の能力は高くなることが分かっており、バックスの選手がフォワードの選手に比べ高い傾向にあります。VO2max(ml/kg/min)という持久系の能力を評価する数値をみてみると、ジュニア期におけるトレーニング効果は、18歳の選手よりも15歳の選手の方が高かったというデータもあるようです。(トレーニング期間10-14週間)

将来プロ選手になった選手とそうでない選手が13~15歳当時どうだったのかを調べてみると、VO2max(ml/kg/min)は49.8±4.6 vs 47.6±5.6とプロ選手になった選手の方がそうでない選手に比べて高かったようです。

その他にも持久力に関して下記の情報があったのでシェアさせて頂きます。
エリート選手 vs それ以外の選手: マルチステージフィットネステスト(15歳期)
10.6±0.5 vs 8.0±0.6

持久系の能力は、激しい運動を繰り返したり、トーナメント中のリカバリーを早めるという点でも重要な役割を果たす為、ジュニア期からその能力をしっかりと養っておくことは将来トップレベルで成功する為に重要なポイントとなりそうです。

指導者の方々は持久系の能力が年齢やポジションにより変化し、それが将来のキャリアに影響することも抑えておく必要があります。ラグビーはコンタクト競技という特性上ケガのリスクも高い為、持久系能力を養う際には、ローイングや自転車エルゴメーターを積極的に利用することをおススメします。

⑥ジュニア期の筋力はどれくらい?

 16~17歳頃に筋力が大きく伸びているというデータがあり、それは体の成熟と共に筋力トレーニングの介入が影響しているではないかという推測があります。

プロ選手のジュニア期の筋力を振り返ってみると、1回挙上(1RM)できる重さはスクワット:134.3±12.8(17歳時)/ベンチプレス:115.4±15.4(18歳時)/プローンロウ:107.4+10.8(19歳時)というデータがあります。

筋力は、スピードやパワーとの関連があり下肢の筋力強化がタックルやボール運びの能力を引き上げることと、筋力を向上させることは走力やコンタクト能力の向上、筋疲労の軽減などにも繋がります。

フォワード選手はバックス選手に比べて大きな力を生みだす必要がありますが、挙上重量を体重比でみると大差がないことが分かっています。(例えば、体重100kgのフォワード選手が200kgのスクワットを実施した場合と体重70kgのバックスの選手が140kgのスクワットを実施した場合、挙上した重量の絶対値は異なれど、挙上した重さを体重で除すると、それぞれ体重の2倍と等しくなります。) その他、バックスはフォワードの選手に比べて、カウンタームーブメントジャンプ(反動を用いたジャンプ)とスプリント能力が高く、この点に関しては、バックスの選手がフォワードの選手に比べて体重や体脂肪率が低いことが影響していると考えられます。

筋力は年齢と共に増加し、しかるべきタイミングでレジスタンストレーニングを導入することで向上し、レベルやポジションによって特性が異なることも抑えておく必要があるでしょう。

アンダー18歳カテゴリーに比べアンダー15歳のカテゴリーにおいて、下肢のパワーの伸び率が高いことがわかってはいるものの、伸び率が高いからといって負荷をどんどんかけても良いということにはならないので、選手の成長度合いを見ながらコーチがしっかりとコントロールしてあげる必要があります。

まとめ

今回で、ラグビー選手のジュニア期の特徴に関しての情報は最終回となりますがいかがだったでしょうか? ジュニア期を指導する監督・コーチの方々が、各年代における成熟度や体力レベルを把握しておくことで、選手の可能性を最大限に引き出してあげられるのではないでしょうか。

#47 トップのラグビー選手、ジュニア時代はこうだった !!6つのポイント その②

 ワールドカップラグビーは、南アフリカの勝利で幕を閉じました!日本がもし南アフリカと対戦していなければ、、なんて思ったファンの方も多かったのではないでしょうか? 改めてこれからの日本代表の活躍が楽しみになってきましたね!4年後が待ちきれません!! 今回は前回に続き、ワールドカップ熱でジュニアの競技人口が増えてきたであろうタイミングで指導者の方々にシェアさせて頂きたい内容をご紹介させて頂きます。

③スピードは13-15歳の間に伸び率が高くなる!

 スピードに関しては、エリート選手がその他の選手に比べて速く、全体的にはバックスの選手がフォワードの選手に比べて速いことが分かっています。年代別に比べてみると13歳と15歳のカテゴリーにおいて伸び率が高く、これは身長の伸び率や成長のタイミングがストライド長やピッチの向上に関係することが影響していると考えられます。60m走では、晩熟の選手が13-15歳の間に数値が向上し、16歳以上のカテゴリーでは、スピードトレーニングのトレーナビリティが低くなることもわかっています。これは身長の伸びが落ち着いた後に体重が増えてくるという成長要因が関係していると考えられます。このことから、16歳以上の選手は身長や体重などのコンディションをモニタリングしておくことは非常に重要だと考えられます。ある程度、年齢が低い時期には体重とスピードの両方を伸ばすことができるが、成長と共に体重が増えていく過程でいかにスピードを維持できるのかがシニアで活躍する為のポイントとなりそうです。

④方向転換能力は特異的な刺激が重要!

 ポジション別では、バックスとフォワード間において方向転換能力に関しては大差はなく(プロップを除く)、スピード同様年齢(特に13~15歳カテゴリーの伸び率が高い)と共に伸びることが分かっています。エリート選手とそれ以外の選手の5-0-5アジリティテストの数値を比較したデータもある為、ご参考頂けたらと思います。(エリートvs サブエリート 2.38±0.08秒 vs 2.68±0.08秒)プロップは、他のポジションに比べて方向転換能力が低いこともあり、キャリアが短くてもポジションに必要な能力が備わっていることでトップレベルで活躍できるチャンスは高い傾向にあるようです。(遅い時期でも他競技からタレント発掘が出来そうですね)方向転換能力はトップリーグで活躍する為に必要不可欠な能力となることから、ジュニア期はシンプルな方向転換能力以外にも競技特異的な刺激を含んだ方向転換能力を獲得しておくことが重要だと言えそうです。

まとめ

 スピードや方向転換能力(加速・減速を含む)は、大きく伸びる時期がある程度決まっているようなので、その時期までに如何に多くのスキルを身に着けることができるかがトップで成功する為のカギとなりそうです。成長と共に、パフォーマンスの伸び率に変化が起こるということを指導者が理解しておくことは、ジュニア期を指導する上で、戦術やスキル指導同様重要なことかもしれませんね。

P.S.

次回は、ジュニア期の筋トレや有酸素運動に関してご紹介させて頂きます(^-^)。

参考文献 Kevin Till,Sean Scanthebury, Ben Jones. Anthropometric and Physical Qualities of Elite Male Youth Rugby League Players. Sports Med 47:2171-2186. 2017.

#34 大坂なおみ選手の強さの秘密は強い1stサービス??

大坂なおみ選手の昨年からの躍進は目覚ましく、今年の1月にはついに女子テニス協会(Women’s Tennis Association: WTA)のランキング1位に立ちました。

大坂選手と言えばインタビューでの「なおみ節」もチャーミングですが、最大の魅力は試合での強烈なサービスではないでしょうか??

そこで今回は、WTAランキングトップ100の女子テニス選手のサービスの傾向を検討した村田(2018)の概要をご紹介します。

 

サービスに関するスタッツ

女子テニス協会(Women’s Tennis Association: WTA)ランキング100位内の選手を対象に、公式ホームページから下記のスタッツを取得しました。

・サービスエース数(エース数)

・ダブルフォルト数

サービス時の総ポイント取得率(総ポイント取得率)

・1stサービスが入った確率(1st成功率)

・1stサービスが入った際のポイント取得率(1st取得率)

・2ndサービスが入った際のポイント取得率(2nd取得率)

 

また、取得したスタッツから下記のスタッツを算出しました。

・1stサービスでポイントを取得した確率 = 1st成功率 × 1st取得率

・2ndサービスでポイントを取得した確率 = (1-1st成功率) × 2nd取得率

尚、1stサービスでのポイント取得率と2ndサービスでのポイント取得率の和が、上述の総ポイント取得率となります。

 

ランキングとキープ率の関係

ランキングが高い選手ほどキープ率が高く、トップ20の選手では70%程度、100位付近の選手では60%程度でした。

 

総ポイント取得率と1st/2ndサービスでのポイント取得率の関係

サービス時の総ポイント取得率が高い選手は、どちらのサービスでも高い確率でポイントを取得しており、特に1stサービスでのポイント取得率が高いことが分かりました。

 

総ポイント取得率と1st/2ndサービスが入った際のポイント取得率の関係

サービス時の総ポイント取得率が高い選手は、どちらのサービスが入っても高い確率でポイントを取得していましたが、1stサービスが入った際のポイント取得率が特に高いことが明らかになりました。

女子選手の場合、1stサービスが入った際のポイント取得率は60%程度、2ndサービスが入った際のポイント取得率は40~55%程度と報告されていますが、この研究の取得率も同様でした。

尚、男子選手の場合、1stサービスが入った際は70~80%程度、2ndサービスが入った際は40~60%程度の確率でポイントを取得することが報告されています。

 

総ポイント取得率と1stサービスの成功率の関係

1stサービスの成功率は50~70%程度でしたが、サービス時の総ポイント取得率とは関係がないことが分かりました。

上図のように2ndサービスが入った際には40~50%の確率でポイントを取得できることから、1stサービスが入らなくても総ポイント数には影響しなかったようです。

 

ダブルフォルト数とキープ率の関係

1試合あたりのダブルフォルト数は、キープ率にほとんど影響しないことが分かりました。

よって、ダブルフォルトを犯すことよりも、ダブルフォルトを恐れて1stサービスの成功率を低下させたり、弱いサービスを打って1st/2ndサービスが入った際のポイント取得率を低下させたりする方がキープ率を低下させると考えられます。

 

エース数とキープ率の関係

1試合あたりのエース数が多い選手ほどキープ率が高いことが分かりました。

ただし、ほとんどの選手のエース数が6本以下でした。

ストレートで勝った場合のサービスゲームは6回ですから、女子選手が各ゲームで1本以上のエースを取る確率はかなり低いようです。

 

エース数と1st/2ndサービスが入った際のポイント取得率の関係

1試合あたりのエース数が多い選手は、1stサービスが入った際にポイントを取得する確率が高いことが分かりました。

「エース数の多い選手」とは「強いサービスを打てる選手」と考えられます。

よって、エース数が多かった選手は強い1stサービスでラリーの主導権を握り、3球目以降の攻撃でポイントを取得する確率を高めていたと推察されます。

一方、2ndサービスが入った際のポイント取得率は、エース数によらず概ね一定でした。

 

まとめ

・1試合あたりのダブルフォルト数はキープ率にほとんど影響しませんでした。

・サービス時の総ポイント取得率が高い選手は、1stサービスが入った際のポイント取得率が特に高いことが分かりました。

・1試合あたりのエース数が多い選手は、1stサービスが入った際にポイントを取得する確率が高いことが明らかになりました。

これらの結果から、近年のWTAランキングトップ100の選手では1stサービスでのポイント取得率が重要なため、ある程度のリスクを許容して強い1stサービスを打っていると推察されます。

強いサービスを打ってもエースを取れる確率は低いようですが、ラリーの主導権を握ることができると思われます。

今後大坂選手の試合を見る際には、そのような観点から1stサービスとその後のラリーを見てはいかがでしょうか??

 

おわりに

この研究はランキング100位以内のすべての選手の1試合あたりのスタッツをまとめて分析し、WTAランキングトップ100位以内の選手の全体的なサービスの傾向を明らかにしたものです。

よって、選手ごとやセット/ゲームごとのスタッツを分析すると、この研究とは異なるサービスの傾向が見られる可能性があります。

この研究で用いられている方法で、ご自身や担当する選手のサービスの傾向を明らかにするのはいかがでしょうか??

サービスの戦略を再構築する良いきっかけになるかも知れません。

 

参考資料

WTA トーナメントにおけるトップ100 位選手の2018 年サービスの傾向.村田宗紀.スポーツパフォーマンス研究, 10巻, 354-363ページ, 2018年

http://sports-performance.jp/paper/1844/1844.pdf

#30 目指せ山川穂高選手!!大きな打球を飛ばすスイングとは??

球春到来!!プロ野球の春季キャンプがついにスタートしました。

沖縄県では広島(沖縄市)、ヤクルト(浦添市)、巨人(那覇市)、DeNA(宜野湾市)、中日(北谷町)、阪神(宜野座村)、日本ハム(名護市、国頭村)、ロッテ(石垣市)、楽天(久米島町、金武町)と多くのチームがキャンプを行います。

昨シーズン、セ・パ両リーグ最多となる47本の本塁打を放った中部商出身・山川穂高選手の打撃練習を生で見て、飛距離の大きな打球を飛ばすスイングを学ぶチャンスです!!

と思ったら、

山川選手が所属する西武ライオンズのキャンプ地は… 宮崎県と高知県 (泣)

そこで今回は、山川選手も行っていると思われる飛距離の大きな打球を飛ばすためのスイングについて話題提供します。

 

飛距離の大きな打球を飛ばすためのスイングとは??

打球の飛距離には「打球速度」と「打球角度」が影響します。

「打球速度」が最大になるのは、投球の軌道とスイングの軌道が一致し、バットとボールが正面衝突したときです(下図参照)。

しかし、ボールとバットが正面衝突した場合、打球は無回転となるため、打球には揚力の効果を得ることができません。

揚力の効果を得て打球の飛距離を伸ばすためには、ボールの中心より少し下側をバットでとらえ、打球にバックスピンをかける必要があります。

ボールとバットの衝突をシミュレートした研究によると、直球を打つ場合には19度上向きのスイング軌道で、ボールの中心の6ミリ下側をバットでとらえると飛距離を最大化することができるそうです(下図参照)。

すなわち、アッパー気味の軌道でボール中心のやや下側を狙ったスイングが、飛距離の大きな打球を飛ばすスイングということになります。

 

打率.500、長打率1.500を超える「打球速度」と「打球角度」とは??

2015年のメジャーリーガーのデータを使って打率.500、長打率1.500を超える「打球速度」と「打球角度」の組み合わせを示した「バレルゾーン」という指標があります。

打球の飛距離には「打球速度」と「打球角度」が影響しますので、「バレルゾーン」を通過した打球の飛距離は大きく、大半が長打となります。

 

下の図がバレルゾーンを示したものです。

バレルゾーンを実現するためには、98 mph(158キロ)以上の「打球速度」(Exit Velocity)と26~30度の「打球角度」(Launch Angle Range)が必要です。

また、「打球速度」が大きくなると、バレルゾーンを実現できる「打球角度」が広がります。

 

バレルゾーンを通過する「打球角度」を実現するには、スイング軌道やインパクト位置といった技術的な要素が大きく関係します。

一方、158キロ以上の「打球速度」を実現するには、そのような「打球速度」を実現できるスイング速度が求められ、スイングの発生源である筋量(筋力)が重要となります。

スイング速度と「打球速度」の関係を検討した研究によると、スイング速度が大きくなると「打球速度」は大きくなり、128キロのスイング速度によって158キロの「打球速度」を実現することができます。

また、筋量の指標である除脂肪体重が大きいほどスイング速度が大きいという研究結果があり、65キロの除脂肪体重があれば128キロのスイング速度を実現できると推定されます。

これらのことから、65キロの除脂肪体重がバレルゾーンを通過する打球を打つ条件であると考えられます。

中高生にとって65キロの除脂肪体重という条件はハードルが高く、中高生の野球選手が158キロ以上の「打球速度」を実現するのは難しいでしょう。

したがって、今は打球に角度をつけて打ち上げても、外野フライにしかならないかも知れません。

映画メジャーリーグ式の練習だった場合、腕立て伏せ10回のペナルティーが科せられますね (笑)

しかし、成長やトレーニングによって筋量が増加して「打球速度」が大きくなれば、長打を量産できる打者に成長する可能性があります。

よって、筋量が「打球速度」の条件を満たすときに備えて、バレルゾーンを通過する「打球角度」を実現できる技術(スイング軌道、インパクト位置など)を身につける練習を行うのも良いかも知れません。

 

まとめ

飛距離を大きな打球を飛ばすスイングとは、

① 打球に角度(20~35度)をつける。

➁ 打球にバックスピンをかける。

③ 打球速度を低下させない。

3つの条件を最適なバランスで実現したスイングである。

 

P.S.

山川選手は一部で「おかわり2世」と呼ばれていますが、初代おかわり君・中村剛也選手に匹敵する日本を代表する長距離打者になりましたね。

今後、沖縄から「山川2世」と呼ばれるスケールの大きな長距離打者が現れることを期待しています!!

 

参考資料

・ 森下義隆 (2018) 飛距離を上げるスイング軌道とスイングスピードの獲得.ベースボール・クリニック10月号 20-23ページ

・ 神事努 (2019) 打者の可能性を広げるバレルゾーン.ベースボール・クリニック1月号 20-21ページ

・ ベースボール・ギークス.フライボール革命は本当に日本人には不可能なのか?データで検証

・ Major League Baseball オフィシャルサイト.What is a Barrel?

#25 友達と練習は裏切らない?? バッティング練習を科学する

昨日で「2018年日米野球」が終わり、プロ野球はシーズンオフに入りました。

オフはファンにとって寂しい期間ですが、選手にとっては来シーズンに向けた練習を行う重要な期間です。

11月7日には「新語・流行語大賞」のノミネート語が発表され、「ダサかっこいい/U.S.A.」「(大迫)半端ないって」などと共に「筋肉は裏切らない」がノミネートされました。

「筋肉は裏切らない」は谷本道哉准教授が筋トレ指導を行うときのキメ台詞で、「筋トレを行えば筋肉は裏切らずに強く大きくなってくれる」ということです。

ただ、目的や方法を理解せずに筋トレを行ってしまうと、筋肉に裏切られてしまうかもしれません。

練習についても筋肉と同じことが言えるでしょう。

つまり、目的や方法を理解して行った質の高い練習は裏切らず、その成果が試合で発揮されます。

そこで今回は、少年野球選手のスイングに続いて「科学する野球」(平野祐一著)から「練習スイングを科学する」をご紹介します。

 

素振りの質を高めるために意識するべきこととは??

下の図は素振りを行ったとき(左)と実際の投球を打ったとき(右)に足が地面を押す力を測定したものです。

 右足と左足の力を足し合わせ、その力を右打者の前後(腹側-背側)、左右(投手側-捕手側)、上下の方向に分けて示してあります。

時間は左から右に経過していて、バットのたわみからスイングの開始やインパクトの瞬間を決めています。つまり、点線の間でスイングが行われています。

 

素振りと実際の投球を打ったときの足の力の振れ幅はよく似ています。

しかし、素振りは実際の投球を打ったときに比べて、スイング前やスイング中の力の振れ幅が小さいことが分かります。

このことから、この選手は実際の投球を打つときに似た素振りを行っていますが、より質の高い素振りを行うためには実際の投球を意識する必要があると思われます。

スイング前に足踏みをしてタイミングを取ったり、スイング中にしっかり足を踏み込んだりして素振りを行うのが良いでしょう。

 

素振りを行う目的は「スイングの回数を増やしてスイングスピードを高めること」です。

「インパクトしようとする位置にバットの芯を運ぶこと」を目的に素振りを行うこともあります。

そのような目的で素振りを行う場合には、どのコースへの投球をどの方向に打ち返すかを意識することが大切です。

 

ティーバッティング、フリーバッティングの質を高めるためには??

下の図は打撃の振るわない高校野球チームを対象にスイングスピードを測定した結果です。

横軸に素振りのスイングスピード、縦軸にティーバッティング(■)と実際の投球を打ったとき(〇)のスイングスピードが示してあります。

また、横軸と縦軸のスイングスピードが同じになるときのラインが図内の太線で示してあります。

この太線よりも■や〇が下に集まっていることから、素振りに比べてティーバッティングや実際の投球を打ったときのスイングスピードが低いことが分かります。

さらに、■に比べて〇が下に集まっていることから、ティーバッティングに比べて実際の投球を打ったときのスイングスピードが低いことも分かります。

 

ティーバッティングではボールの位置に合わせてスイングを行わなければならず、実際の投球を打つときにはタイミングも合わせなければなりません。

注意するポイントが増えた、すなわち求められる技術レベルが高くなった結果、スイングスピードが低くなってしまったと考えられます。

ティーバッティングや実際の投球に対するバッティングのスイングスピードを素振りのスイングスピードに近づけるためには、バッティングの技術レベルを高める必要があるでしょう。

そのためには、失敗を恐れず強く振ることを意識して、ティーバッティングやフリーバッティングを繰り返すことが大切だと思われます。

 

映像を活用してバッティング練習の質を高める

足が地面を押す力やスイングスピードを測定できれば良いのですが、そのために必要な測定機器は安価で手に入るものではありません。

しかし、最近ではスマートフォンを活用することで、スイング動作を撮影することは容易に行うことができます。

スマートフォンで撮影したスイング映像を活用することで、バッティング練習の質を高めることができます。

 

具体的には、まずは試合での理想的な自身のスイング映像を入手します。

他の選手のスイングを参考にする場合には、その選手のスイング映像を入手します。

インターネットや衛星放送の発展のおかげで、最近ではメジャーリーガーの映像でさえ容易に入手できるようになりましたね。

その後、練習での素振り、ティーバッティング、フリーバッティングのスイング動作を撮影し、試合でのスイング動作と比較します。

試合と練習のスイング動作の違いを見つけ、試合でのスイングに近づけるよう意識してバッティング練習を行います。

このようにスイング映像を活用することで、バッティング練習の質を高めることができるでしょう。

 

まとめ

試合を意識したスイング、試合に近いスイングを行うことでバッティング練習の質を高めることができ、そのような練習を繰り返すことで「練習は裏切らない」と言える成果が得られるでしょう。

 

P.S.

スポーツおきなわのトレーニングもあなたを裏切りません!!ᕙ(*´ω`*)ᕗ

 

参考資料

BBMスポーツ科学ライブラリー 科学する野球 バッティング&ベースランニング、平野祐一著、ベースボール・マガジン社