#52 重たいボールでトレーニングをしたら、球速はアップするが、ケガのリスクも増える?!

今回ご紹介する文献はこちら↓            

“Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates” 

簡単に説明すると、”通常より重たいボールを用いて6週間ピッチング練習を行うと球速、ピッチング時の腕のバイオメカニクス、可動域、ケガのリスクにどのような影響を及ぼすのか?”という内容です。

結論は、、

何名かの選手にとっては、球速があがるという点では効果があるかもしれないが、それと同時にケガのリスクも増える可能性がある。また、球速が上がった理由として肩の受動的外旋可動域の動きが関係している可能性がある。

〇背景

 ここ最近のメジャーリーグ平均球速が、2008年に90.9マイルだったのが、2017年には93.2マイルにまであがってきており、アマチュア野球においても同じような傾向【球速アップ】がみられる。インターネット上での”投手向け球速向上プログラム(投球動作、腕の筋力&スピードを向上させることで5マイル、もしくはそれ以上の球速アップを目指す)”などのマーケット拡大も大きく影響していると考えられる。いくつかの研究においても、重たいボールを用いたトレーニングプログラムが球速アップに効果があると示している。

球速アップと関連して、肘のストレスやケガの割合が増えることが示唆されており、近年はプロアマ問わず、尺骨側副靭帯の再建手術の数が増えてきているのが現状である。【ニューヨーク州においては、2002年から2011年にかけてユースの野球選手における尺骨側副靭帯再建手術の件数が193%に膨れ上がってきている】しかしながら、球速アッププログラムがケガに及ぼす影響について直接調べた報告は少ない。

〇実験方法

対象:38名【13歳~18歳】/過去12カ月以内にケガがなし。

コントロール群/19名【通常練習】、トレーニング群/19名【重たいボールを用いた練習】

測定項目:*他動的可動域(肩/ 肘)*筋力(肩) *球速(通常5オンスボールを使用)*投球動作(肘の内反トルク&肩内旋速度)

時期 & 頻度:オフシーズン【1~2月中の6週間】。 トレーニング頻度・週3日

トレーニング内容

両群ともオフシーズンの通常ストレングス&コンディショニングトレーニングは実施。

トレーニング群は、週3回、下記のトレーニングを実施。【*各トレーニングポジションで5つの異なるウエイトボール➾2,4,6,16,32オンスを使用。】

〇結果

*38名中トレーニング群の4人が離脱【2人が肘、残りの2人下肢のケガ】

*トレーニング群【80% ➾球速アップ / 8%➾変化なし / 12%➾球速ダウン】。

*コントロール群 【67%➾球速アップ / 19%➾変化なし / 14%➾球速ダウン】

*トレーニング介入後の腕の角速度と肘のストレスに対しては変化なし。

*コントロール群 【13%➾利き手の外旋動作の筋力向上。トレーニング群は変化なし。】

*トレーニング群【肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大。コントロール群は変化なし。】

*トレーニング群【24%の選手がトレーニング中、もしくはシーズン中にケガと継続的に付き合う結果となった。トレーニング期間中ケガで離脱した2選手の肩関節の受動的外旋可動域拡大は非常に大きかった。(10° & 11°向上)コントロール群はケガなし。】

〇論文の内容を踏まえた上でのまとめ

近年、ウエイトボールを利用することで球速アップが期待されるといった内容のプログラムが注目されている。①腕振りのスピードアップと、②腕の筋力向上が球速アップを後押しすると考えられているものの、この研究では、トレーニング群では球速アップしたにも関わらず、①と②の両方とも変化しなかったということは興味深い。また、コントロール群は肩の筋力が向上したという点からも、現在期待されている理論(筋力アップが球速アップに影響を及ぼす)に反する結果となった。肩関節の受動的外旋可動域と球速との間には関連性が【トレーニング群➾肩の他動的外旋可動域が4.3°拡大】あることから、今後も注目していく必要があると感じた。それと同時に、短期間(6週間)の急激な関節可動域の拡大がケガを誘発してしまう可能性については注視しておく必要がある。特に今回の被験者【13~18歳】のような発育段階においてまだ各関節の動的柔軟性がコントロールできていないカテゴリーにおいては、ウエイトボールを用いたトレーニング介入に関して慎重に考えていく必要があるのではないだろうか。

 

参考文献

Michael M. Reinold, PT, DPT, SCS, ATC, CSCS,*† Leonard C. Macrina, MSPT, SCS, CSCS, Glenn S. Fleisig, PhD, Kyle Aune, MPH, and James R. Andrews, MD§‖. Author information Copyright and License information Disclaimer Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates. Sports Health. 2018 Jul-Aug; 10(4): 327–333.

#51 モチベーションが高まる「ちょうどいい目標」とは??

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今年予定されていた東京オリンピックが来年に延期となってしまいました。選手のモチベーションへの影響が懸念されますが、「延期になってもモチベーションを保ち、その日に向けてやっていきたい」といった力強い選手のコメントもありました。

モチベーション(動機づけ)とは、「行動を開始させ、その行動を適切な方向へと導いていく過程」の総称です。

コーチが選手に動機づけを行う際には、目標を設定することが重要です。なぜなら目標は活動の方向と到達点を示し、選手の行動を適切な方向へと導くものだからです。

しかし、その目標があまりに高過ぎると、行動を開始する意欲が生まれません。逆に、目標が低過ぎても、その目標に進んで取り組む気持ちになれません。つまり、目標が高過ぎても低過ぎても、選手の行動を適切な方向に導くことができないのです。

そこで今回は、選手にとって「ちょうどいい目標」とは??のヒントを与えてくれる「目標の設定が立ち幅跳びの成績に及ぼす効果」(杉原と海野 1976)をご紹介します。

   

この実験では被験者に立ち幅跳びを行わせ、その跳躍距離を成績として評価しています。立ち幅跳びを行う際、被験者には「達成できる可能性の異なるいくつかの目標」を与えます。いくつかの目標とは、「自身の最大跳躍距離の100, 110, 120, 130%の跳躍距離」です。

その結果、下記の図のような結果が得られました。

それぞれの%目標(横軸)で記録された%最大跳躍距離(縦軸)を比較すると、最大跳躍距離の110%を目標にしたとき、立ち幅跳びの成績が最も良くなることが分かりました。

目標を設定せずに立ち幅跳びを行うと、目標を設定した場合よりも成績が悪いことも分かりました。)

最大跳躍距離の110%の目標とは、達成できる可能性が50%くらいのものです。

これらのことから、選手にとって「ちょうどいい目標」とは、自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標であると言えます。

ご紹介したような目標設定は、何回、何mのように明確かつ具体的な数値を設定できる場合に効果的です。サッカー選手のリフティング回数、野球選手の遠投距離、テニス選手のサーブ成功率などの目標設定を行う際に活用してみてはいかがでしょうか?

   

数値目標を設定して練習を行う際には、選手に記録を伝えるフィードバックを行うことをオススメします。下記の図は、目標の設定やフィードバックの実施がパフォーマンスの改善に及ぼす影響を示したものです。

この図のポイントは、目標設定と共にフィードバックを実施したときのパフォーマンスの増加率が、目標設定のみの増加率とフィードバック実施のみの増加率の単純な足し算よりも大きいところです。

すなわち、目標の設定と共にフィードバックを実施することで、パフォーマンス改善への「相乗効果」を期待できるということです。

   

今回のブログでは、選手にとって「ちょうどいい目標」とは「自身の努力で達成できる可能性が五分五分くらいの挑戦的な目標」とお伝えしました。

私の目標は「NAHAマラソンでのサブ4達成」ですが、日々の練習ではサブ4ぎりぎりのレースペースを目標に設定しています。もう少し挑戦的なペースを目標にしなければいけませんね…(汗)

   

参考文献

・松田岩男、杉原隆編著. 4. 運動と動機づけ, 新版 運動心理学入門, 大修館書店, 東京, 54-87, 1987.

・杉原隆. 8. 目標設定と目標志向性, 新版 運動指導の心理学, 大修館書店, 東京, 161-178, 2008.

#50 STAY HOMEしながら筋肥大!?自重トレーニングでの筋肥大に必要な負荷とは??

 緊急事態宣言が延長され、もうしばらく外出自粛の生活が続きます。筋は活動が減少したり、かかる負荷が減少したりすると萎縮してしまうため、「うちトレ」で「アストレ」を行って筋量を維持しましょうと前回のブログでお話しました。

 「うちトレ」でダンベルやバーベルを使える人は少なく、多くの人は自身の体重を使って筋に負荷をかける自重トレーニングを行っていると思います。自重トレーニングで筋肥大を引き起こすような負荷を筋にかけることはできるのでしょうか?今回のブログでは、自重トレーニングで筋を肥大させるために必要な負荷について考えてみたいと思います。

   

筋肥大にはあるレベル以上の負荷が必要!!

 Tanimotoら(2006)はレッグエクステンションマシンを使って8回×3セットの膝伸展運動を週3回行うトレーニングを12週間継続させ、トレーニングによって膝伸展筋群の横断面積が変化するかを調べました。

 その結果、最大挙上重量(1RM)の~80%の高負荷で行ったトレーニングでは、膝伸展筋群の横断面積が増加することが分かりました。一方、~50%1RMの低負荷で行ったトレーニングでは、膝伸展筋群の横断面積が増加しないことが分かりました。これらの結果から、筋を肥大させるには、あるレベル以上の負荷を筋にかける必要があることが分かりました。

   

筋肥大を目的としたトレーニングに適した負荷とは??

 筋力トレーニングを行う目的は、筋力向上、筋肥大、筋持久力向上に大別されます。トレーニングの目的に応じて筋にかける負荷を変える必要がありますが、それぞれの目的に適した負荷は下の表のようになります。

 筋肥大を目的としたトレーニングでは、最大挙上重量(1RM)の67/70~85%という中程度の負荷が適しています。67/70%1RM、85%1RMの負荷で可能な最大反復回数は、それぞれ12回、6回となります。尚、筋肥大ではなく神経系の機能改善による筋力向上を目的としたトレーニングでは、85%以上の高負荷が適しています。また、筋持久力の向上を目的としたトレーニングでは、67%1RM以下の軽負荷が適しています。

   

得られるトレーニング効果はひとつだけじゃない!!

 最大反復回数の少ない高負荷のトレーニングは筋力向上、最大反復回数の多い軽負荷のトレーニングは筋持久力向上に効果的です。よって、高負荷のトレーニングの主な効果は筋力向上、軽負荷のトレーニングの主な効果は筋持久力向上となります。しかし、下の図に示したように、ある負荷で得られるトレーニング効果はひとつだけでなく、主なトレーニング効果に加えて補助的なトレーニング効果も得ることができます。例えば、最大反復回数の少ない高負荷のトレーニングで最も効果が得られるのは筋力向上ですが、筋肥大や筋持久力向上に関してもそれなりの効果が得られます。

   

自重トレーニングで筋を肥大させるためには??

 筋を肥大させるためには、あるレベル以上の負荷を筋にかける必要があります。ダンベルやバーベルを使わず、自身の体重を使って筋に負荷をかける自重トレーニングを「うちトレ」で行った場合、筋肥大に必要な負荷を筋にかけることはできるのでしょうか?

 筋肥大を目的としたトレーニングに適した負荷は、最大挙上重量(1RM)の67/70~85%の中程度の負荷と言われています。よって、筋肥大に必要な最低限の負荷は、最大挙上重量の67/70%の負荷であると考えられます。67/70%1RMの負荷を用いた場合、反復できる最大回数は12回と言われています。これらのことから、自重トレーニングの最大反復回数が12回以下であれば、筋肥大を期待できる負荷になっていると考えられます。よって、最大反復回数が12回以下の自重トレーニングを90秒前後の休息時間を挟みながら、3~6セット行うことで、筋肥大を目的としたトレーニングになると思われます。

   

おわりに

 今回のブログでは、自重トレーニングによって筋肥大を引き起こすために必要な負荷について考えてみました。具体的な自重トレーニングの方法は、下記のスポーツおきなわのYouTubeチャンネルでご紹介しています。是非ご覧下さい。

https://www.youtube.com/channel/UCxNx7HULFWehXu6FXdZGLwg/featured

 外出自粛期間中に行う「うちトレ」の目的を「コロナ太り防止」や「筋量減少の防止」から「筋肥大」に変えてみてはいかがでしょうか?外出自粛明けにムキムキボディで登場し、友達や同僚をザワつかせましょう!(笑)

   

参考文献

・Tanimoto M, Ishii N. Effects of low-intensity resistance exercise with slow movement and tonic force generation on muscular function in young men. J Appl Physiol 100(4): 1150-7, 2006.

・Sheppard JM, Triplett NT (篠田邦彦, 岡田純一監修). レジスタンストレーニングのためのプログラムデザイン. NSCA決定版ストレングストレーニング&コンディショニング 第4版, ブックハウス・エイチディ, 東京, 479-512, 2018.

・有賀誠司. 筋力トレーニングのプログラム作成. トレーニング指導者テキスト 実践編 改訂版, 大修館書店, 東京, 38-53, 2014.

#49 ストップ!コロナ太り 外出自粛の生活に「うちトレ」のススメ

 外出自粛の生活で運動や生活による活動量が減っていますが、みなさんの体重はどうなっていますか?体重は消費カロリーと摂取カロリーのバランスで変化しますから、消費カロリーがどうしても減ってしまう今の生活では、摂取カロリーが体重変化のポイントになるでしょう。Mayerら(1954)はラットを使って運動時間とカロリー摂取量や体重の関係を調べ、下図のような結果を発表しました。

 「正常な活動量」の範囲では、運動時間が減るとそれに合わせて摂取カロリーが減るため、体重は大きく変化していません。しかし、「正常な活動量」より運動時間が少ない「じっとした生活」では、運動時間が減るほど摂取カロリーが増え、体重が増えています。つまり、「正常な活動量」に満たない「じっとした生活」を送ると、必要以上のカロリーを摂取してしまい、体重の増加を引き起こしてしまうということです。一方、「疲労困憊」まで運動を行わせると摂取カロリーは減少し、体重の減少が引き起こされています。そのような状況は、部活動の合宿で連日疲労困憊まで練習を行ったときに似たものでしょう。

 外出自粛の生活でみなさんの活動量は減っていますが、それに合わせて食事量は減っているでしょうか?いつもより増えていないでしょうか?いつもより食事量が増えている場合は、外出自粛の生活が「正常な活動量」に満たない「じっとした生活」になっている可能性があります。外出自粛の生活が「正常な活動量」を満たすよう、お家でできるトレーニング「うちトレ」を外出自粛の生活に取り入れることをオススメします。「うちトレ」の成果を客観的に評価するため、体組成計を使って体重や体脂肪率の変化を測定することも大切です。体組成計の使用上の注意点を下記のブログで紹介しましたので、測定を行う際には参考にして下さい。

 外出自粛の生活で体重が減っている場合、筋量の減少が心配です。なぜなら筋は活動が減少したり、かかる負荷が減少したりすると、萎縮してしまうためです。Akimaら(2000)は寝たきりの生活を20日間続けると下肢の筋がどのくらい減るかを調べました。その結果、寝たきりの生活によって膝関節の伸展筋群は7.5%、膝関節の屈曲筋群は10.5%、足関節の底屈筋群は14.0%の体積が減少することが分かりました。しかし、寝たきり生活の中で30回のレッグプレスを毎日実施することで、膝関節の伸展筋群の体積低下率を4.0%に抑えることができました。これらのことから、外出自粛の生活においても「うちトレ」で筋力トレーニングを行うことによって、筋量の減少を抑えられると考えられます。筋量の変化は徐脂肪体重の変化によって把握することができます。徐脂肪体重は体重から体脂肪の重さを除いた重さで、[体重-体重×(体脂肪率÷100)]によって求められます。徐脂肪体重の約50%が筋の重さであることから、徐脂肪体重を筋量の指標として用いることができます。

 「ストップ!コロナ太り」のため、「ストップ!筋量の減少」のため、外出自粛の生活の中に「うちトレ」を取り入れることをオススメします。どんな「うちトレ」をしたら良いか分からない方には、スポーツおきなわの「アストレ」をオススメします!!「アストレ」とは「アスリート向けのトレーニング」の略称ですが、やり方や回数を工夫することでアスリートでなくても行うことができます。具体的な方法はスポーツおきなわのYouTubeチャンネルでご紹介していますので、「うちトレ」を検討の際には是非ご覧下さい。

https://www.youtube.com/channel/UCxNx7HULFWehXu6FXdZGLwg

 外出自粛の生活で「うちトレ」で「アストレ」を行い、コロナ太りや筋量の減少に歯止めをかけて下さい。外出自粛の期間中「うちトレ」で「アストレ」を続けたら、外出自粛が終わる頃には完ぺきなアスリートボディに仕上がっているかも!?

   

参考文献

Mayer J, Marshall NB, Vitale JJ, Christensen JH, Mashayekhi MB, Stare FJ. Exercise, food intake and body weight in normal rats and genetically obese adult mice. Am J Physiol 177, 544-548, 1954.

Akima H, Kubo K, Kanehisa H, Suzuki Y, Gunji A, Fukunaga T. Leg-press resistance training during 20 days of 6 degrees head-down-tilt bed rest prevents muscle deconditioning. Eur J Appl Physiol 82, 30-38, 2000.

#47 トップのラグビー選手、ジュニア時代はこうだった !!6つのポイント その②

 ワールドカップラグビーは、南アフリカの勝利で幕を閉じました!日本がもし南アフリカと対戦していなければ、、なんて思ったファンの方も多かったのではないでしょうか? 改めてこれからの日本代表の活躍が楽しみになってきましたね!4年後が待ちきれません!! 今回は前回に続き、ワールドカップ熱でジュニアの競技人口が増えてきたであろうタイミングで指導者の方々にシェアさせて頂きたい内容をご紹介させて頂きます。

③スピードは13-15歳の間に伸び率が高くなる!

 スピードに関しては、エリート選手がその他の選手に比べて速く、全体的にはバックスの選手がフォワードの選手に比べて速いことが分かっています。年代別に比べてみると13歳と15歳のカテゴリーにおいて伸び率が高く、これは身長の伸び率や成長のタイミングがストライド長やピッチの向上に関係することが影響していると考えられます。60m走では、晩熟の選手が13-15歳の間に数値が向上し、16歳以上のカテゴリーでは、スピードトレーニングのトレーナビリティが低くなることもわかっています。これは身長の伸びが落ち着いた後に体重が増えてくるという成長要因が関係していると考えられます。このことから、16歳以上の選手は身長や体重などのコンディションをモニタリングしておくことは非常に重要だと考えられます。ある程度、年齢が低い時期には体重とスピードの両方を伸ばすことができるが、成長と共に体重が増えていく過程でいかにスピードを維持できるのかがシニアで活躍する為のポイントとなりそうです。

④方向転換能力は特異的な刺激が重要!

 ポジション別では、バックスとフォワード間において方向転換能力に関しては大差はなく(プロップを除く)、スピード同様年齢(特に13~15歳カテゴリーの伸び率が高い)と共に伸びることが分かっています。エリート選手とそれ以外の選手の5-0-5アジリティテストの数値を比較したデータもある為、ご参考頂けたらと思います。(エリートvs サブエリート 2.38±0.08秒 vs 2.68±0.08秒)プロップは、他のポジションに比べて方向転換能力が低いこともあり、キャリアが短くてもポジションに必要な能力が備わっていることでトップレベルで活躍できるチャンスは高い傾向にあるようです。(遅い時期でも他競技からタレント発掘が出来そうですね)方向転換能力はトップリーグで活躍する為に必要不可欠な能力となることから、ジュニア期はシンプルな方向転換能力以外にも競技特異的な刺激を含んだ方向転換能力を獲得しておくことが重要だと言えそうです。

まとめ

 スピードや方向転換能力(加速・減速を含む)は、大きく伸びる時期がある程度決まっているようなので、その時期までに如何に多くのスキルを身に着けることができるかがトップで成功する為のカギとなりそうです。成長と共に、パフォーマンスの伸び率に変化が起こるということを指導者が理解しておくことは、ジュニア期を指導する上で、戦術やスキル指導同様重要なことかもしれませんね。

P.S.

次回は、ジュニア期の筋トレや有酸素運動に関してご紹介させて頂きます(^-^)。

参考文献 Kevin Till,Sean Scanthebury, Ben Jones. Anthropometric and Physical Qualities of Elite Male Youth Rugby League Players. Sports Med 47:2171-2186. 2017.

#46 トップのラグビー選手、ジュニア時代はこうだった !!6つのポイント その① 

我らが日本代表、残念ながら南アフリカに負けてしまいました。。しかしながら、南アフリカは準決勝でウェールズ代表を破り決勝にコマを進めてくれました!しかも、決勝の相手は名将エディー・ジョーンズ監督(前回大会の日本代表監督)率いるイングランドです。そんな盛り上がりをみせているラグビーですが、各地で開催されている子供向けのラグビー教室も人気のようで、将来ラグビー日本代表を夢見る子ども達が増加中とのこと。そこで、今回はこれからラグビーを始める子ども達と関わる指導者向けに参考になる情報をシェアさせて頂こうと思います。

 ジュニア期 (13-20歳)の選手がどういった体の特徴を持っていて、その後どのようにキャリアを積んでいったのかについて紹介している論文があったのでシェアさせて頂きます。データは、ヨーロッパのスーパーリーグやオーストラリアのナショナルラグビーリーグ(13人制)を基準としている為、今回のワールドカップラグビー(15人制)とは単純に比較できない部分はあるかとは思いますが参考になればと思います。

① 昔からサイズが大きかったわけではなかった!?

ジュニア期(13-20歳)は、身長・体重ともに年齢と共に増加傾向にあり、エリート選手がそれ以外の選手に比べ数値は高く、ポジション別にみるとフォワードの方がバックスに比べて身長が高い傾向にあるようです。13-15歳のカテゴリーにおいて、身長・体重の変化量が大きいことも分かっています。

16歳以下のカテゴリーにおいて、エリート選手とそれ以外の選手では、身長・体重ともに大きな違いがない (エリート178.8±5.9cm, 77.5±10.0kg, サブエリート 175.2±6.9cm, 72.3±11.7kg) ことが分かっており、リーグのレベルが高くなるにつれて、サイズの違いがより顕著となります。

実際に、プロになった選手とアマチュアになった選手が13-15歳以下のカテゴリーだった時期を比べてみると、身長・体重共に14歳では差がなかったという点に関しては興味深い内容だと言えます。しかしながら、同じサイズでも下半身に関しては将来プロになった選手の方がサイズが大きかったようです。この時期は、同じ体重であっても下肢がしっかりとしているかどうかが将来成功する為のカギを握っているかもしれませんね。ジュニア期に関して、身長・体重とタックルのスキルとはダイレクトに関係しない為、16歳以下までは体のサイズを積極的に大きくする必要はなさそうだということも今回の論文では言及されていました。

② 下肢の皮下脂肪が将来成功するカギを握っている!

 皮下脂肪に関しては、 エリート選手はそれ以外の選手に比べて低く、ポジション別にみるとバックスの選手がフォワードの選手 に比べて低いことがわかっています。身長と体重が成長と共に安定した後では、バックスの選手はアカデミーレベルとプロレベルの選手との間に大きな差がない (13.7±1.6kg vs 12.6 ±1.1kg) こともわかっています。しかしながら、フォワードに関しては、プロ選手はアカデミーレベルに比べ、皮下脂肪(アカデミーレベル 19.3±1.6kg vs プロ 15.4±1.1kg)や骨量に関して大きな違いがみられ、その中でも下肢の皮下脂肪に関しては顕著な差があったようです。13-15歳のカテゴリー時期においては、プロになった選手はアマチュアになった選手と比べ、皮下脂肪が低い(33.4±9.8mm, 41.6±18.2mm)傾向にあったということを踏まえると、皮下脂肪がつきづらく且つ筋肉量が増えやすいという身体的な特徴を持った選手がトップレベルに上がっていく可能性も高くなりそうですね。指導者側がリーグのレベルやポジションに応じた最適な体脂肪率を抑えておくことが質の高い強化に繋がっていきそうです。

まとめ

今回は、ラグビー選手のジュニア期に注目した論文をご紹介させて頂きましたがいかがでしたか? ジュニア期の成長特性やその後選手がどのレベルまで到達したのかを知っておくことは育成や強化の手助けとなります。指導者の方々にも是非ご参考頂ければ幸いです。 その②はスピード・加速・減速・方向転換に関してご紹介させて頂きます!

参考文献 Kevin Till,Sean Scanthebury, Ben Jones. Anthropometric and Physical Qualities of Elite Male Youth Rugby League Players. Sports Med 47:2171-2186. 2017.

#45 ラグビーワールドカップは得点源の”バックス”に注目!!

 #45では、ラグビーの“フォワード”のポジションについてご紹介させて頂きました。そして今回は、もう一つのポジション”バックス”について情報をシェアさせて頂こうと思います。

“バックス”ってどんなポジション?

 “フォワード”は大柄で強いフィジカルが要求されると#44でお話させて頂きましたが、それに対して“バックス”はスリムで小柄な選手が多い傾向にあります。 フォワードが獲得したボールをいかに得点に繋げるかが大きな役割となり、スピード、敏捷性が要求されるポジションです。

“バックス”は“フォワード”に比べて小柄!!

実際に日本代表選手の身長/体重/BMI(身長体重比)をまとめてみると、“フォワード”で1番身長が高い選手はトンプソンルーク選手の196cm、最も体重が重たい選手は具智元選手の120kg、平均は身長186.7cm、体重109.4kg、BMIが31.46となっています。 “バックス”で1番身長が高い選手は山中亮平選手/ウイリアム・トゥポウ選手の188cm、最も体重が重たい選手はアタアタ・モエアキオラ選手の114kg、平均は身長178.4cm、体重889.6kg、BMIが28.03となっています。”バックス”は“フォーワード”に比べて、平均身長で-8.3cm、平均体重で-19.8kg、平均BMIは-3.43となり、全体的にサイズは小さくなることで、スピードや敏捷性を獲得できていると考えることができます。(手足が長すぎると振り回すのに余分にエネルギーを使い、体重が重すぎると移動するのに効率が悪い。)

“バックス” 5つのポジションをおさえておこう!!

  • 背番号9番 スクラムハーフ(SH)

 スクラムで密集した中から、味方に素早くボールをパス、もしくはキックするのがこのポジションの役割で、ボールをどこに展開していくのかという頭脳(戦略)と常にボールと共に動く為のスタミナも要求されます。流大選手や田中史郎選手がこのポジションとなります。

  • 背番号10番 スタンドオフ(SO)

 キックイメージが強いポジションですが、スクラムハーフからボールを受け取り、ラン/パス/キックのどの攻撃を選択するのかといった司令塔の役割を担う為、ラグビーIQ・スキルとも高いポジションとなります。みなさんもご存じ、現在得点王の田村優選手がこのポジションとなります。

  • 背番号12・13番 センター(CTB)

 攻撃では相手を振り払いながら敵陣へ切り込み、タックルをされながらパス(オフロードパス)を決めたり(スコットランド戦では倒れながらのオフロードパスが光っていました)、守備では体を張って相手を止める役割を担っています。

  • 背番号11・14番 ウィング(WTB)

 ウィング(翼)と名付けられるポジションだけあり、味方が繋いできてくれたボールを得点につなげるフィニッシャーの役割となります。鋭いカッティングでディフェンスの間を切り抜けるタイプとパワーでディフェンスをなぎ倒していく2タイプの選手がいます。福岡堅樹選手のスピード感あふれるフレーとトライには目を見張るものがあります!

  • 背番号15番 フルバック(FB)

もっとも後ろに位置するのがこのポジションで、最後の砦となりキックで陣地を挽回したり、最後尾からカウンターをしかけアタックしたりするのがこのポジションとなります。高速、松島幸太郎選手のカウンターに期待です!

まとめ

 今回は“バックス”(背番号9~15番)のポジションに関する基本情報をご紹介させて頂きましたが如何だったでしょうか?”バックス”の選手と“フォーワード”の選手との体格の違いや、各ポジションの特徴、あなたの好きなプレースタイルや選手をみつけることで、明日の南アフリカ戦を楽しんで頂けたら何よりです!!

P.S.

明日の試合では、日本代表の勝利 & 福岡・松島選手の高速トライに期待しています!

参考資料 
https://rugby-juku.com/rugbyworldcup-japanmember/#2HO
https://www.jsports.co.jp/rugby/about/guide_position/  https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00530/?pnum=1

#44 ラグビーワールドカップ、縁の下の力持ちは”フォワード”陣!!

 日本代表チームが歴史的勝利を重ね、ワールドカップラグビーも大盛りあがりです!憧れの選手をみて、自分もラグビーを始めたい!日の丸を背負ってがんばりたい!と思っているジュニア選手が増えたのではないでしょうか。今回は、ラグビーの基本情報をフィジカル面をあわせてご紹介しようと思います。

試合中の運動量は4~8km!!

 ラグビーの試合は前半40分・後半40分の合計80分となり、スプリント(高強度運動)の合間にジョグやリポジショニング(低強度運動)などを挟みながら、間欠的な運動が繰り返し行われています。試合中の移動距離はポジションにもよりますが、4000m~8000mとなり、そのうちの1000mは短い距離を速いスピードで移動すると同時にディフェンス時にはタックル、オフェンス時には相手からのコンタクトへの対応能力も要求されます。数値からみても、過酷なスポーツだということがわかります💦

ラグビーのポジションは大きく分けて2つ!!

 ラグビーは8人の“フォワード”と” 7人の“バックス”の2つのグループ(合計15人)から成り立っています。 “フォワード”は、主にスクラムを組んだり、ラインアウトで敵とボールを奪い合ったり、”バックス”が捕まればヘルプに向かうなど、身を削る役割が多いポジションとなります。 “バックス”は”フォワード“に比べスリムで、確保したボールを攻撃に結び付ける為にも俊敏性が必要なポジションとなります。

“フォワード” 5つのポジションをおさえておこう!!

  • 背番号1・3番 プロップ/PR

   スクラムの柱で、スクラムでゴリゴリ押しまくったり、モールで相手を押し込んだりと泥臭い仕事をこなす為にもパワーと忍耐が必要となるポジションで体重も高重量となります。あの”決して笑わない男 ” と言われている稲垣啓太選手がこのポジションとなります。

  • 背番号2番 フッカー/HO

 スクラムのど真ん中で、足でボールを後ろに送ったり、スクラム全体をコントロールしたりと非常に重要なポジションとなります。ラインアウトではボールを良く投げ入れることもある為、パワーと器用さの両方が求められます。
堀江翔太選手がこのポジションとなります。

  • 背番号4・5番 ロック(LO)

 ラインアウト時に空中でボールをキャッチする為、長身で大柄なのがこのポジションの特徴です。地上では、大柄な体格を活かし、仲間をサポートしたり、ボールをもって突進したりします。

  • 背番号6・7番 フランカー(FL)

 スクラムでは、サイドに位置しいつでも飛びだせるポジション。攻撃ではボールに絡み、守備ではタックルした相手からボールを奪う(ジャッカル)ことから、強さと速さとそれを持続させる能力が求められ、とにもかくにも運動量が豊富なポジションとなります。 我らが日本代表キャプテン・リーチマイケル選手がこのポジションとなります。

  • 背番号8番 ナンバーエイト(NO8)

 スクラムの一番後ろから”フォワード”に的確な指示を送る役割。攻守にわたり活躍することから総合的なスキルや体力が要求されるポジションです。

まとめ 

背番号1~8番の選手は”フォワード”と呼ばれ、コンタクトや衝突も多いことから大柄且つフィジカルの高さが要求されます。彼らが体を張って敵とボールを奪い合い、味方が捕まれば駆けつけて身を削りボールを死守する姿は正に縁の下の力持ち!!各ポジションの役割や特徴を知ることでより試合を楽しむことができると思います! 次回は“バックス” についてご紹介させて頂きますね(^_-)-☆

P.S.

次の南アフリカ戦は、勝利は勿論、我らが日本代表キャプテン・リーチマイケル選手のジャッカルにも期待です!!

参考資料 
https://rugby-juku.com/rugbyworldcup-japanmember/#2HO  
https://www.jsports.co.jp/rugby/about/guide_position/

#42 目指せNBA選手!ジャンプ力を上げる3つの秘策とは!? その②

最近は、日本人選手がNBAに挑戦する機会が増え、バスケットボールファンのみなさんにとって、来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックが待ち遠しくて仕方ないのでは!? ちなみに私の知人はバスケットボール男子決勝のチケットが当選した!!!!!とのこと。羨ましい限りです(;’∀’) さぁ、あなたも2020年の東京に向け、モチベーション、ジャンプ力共にあげていきましょう!

前回のブログ内容では、高くジャンプできる選手の体のバランスを把握しましょう!という点についてお話しましたが、今回は具体的にどのようなトレーニングを行っていくとジャンプ力があがるのか!?について情報をシェアさせて頂きます。

ジャンプをする際に反動動作を使った方が、より高く飛べる!という経験をお持ちのアスリートは多いのではないでしょうか!? イメージとしては、弾力のある輪ゴムを引き延ばすことでより遠くまで飛ぶという現象に似ていて、筋肉も伸ばした後に縮めることで筋の長さが変化していない状態から縮めるよりも、大きな力やパワーを発揮できるようになっています。これは、筋肉が急激に伸張されることで、伸張反射( 脊髄反射の一つで、骨格筋が受動的に引き伸ばされると、その筋が収縮する現象 )が起こることなどが関係しています。この様に、短時間で筋が伸ばされ素早く収縮するような運動を専門用語で”伸張-短縮サイクル (Stretch-Shortening Cycle:SSC)運動と呼んでおり、SSCを利用したトレーニングのことをプライオメトリクストレーニングと呼んでいます。代表的なプライオメトリクストレーニングのエクササイズとして、スクワットジャンプ / リバウンドジャンプ/ ボックスジャンプ / バウンディングなどが挙げられます。

プライオメトリクストレーニングを行うことで、上肢・下肢共にパワー発揮が向上し、バスケットボールのスキルでいうところのチェストバスのスピード、方向転換を伴うフットワークやダッシュのスピード、ジャンプ力などの向上などが期待できます。

その他、プライオメトリクストレーニングのメリットとして、以下2つのことが挙げられます。①つ目は、体の使い方を覚えるという点で力発揮の効率が悪かった選手にとっては、動きを改善することで割と早い段階で効果が出やすいというメリットがあります。②つ目は、筋力トレーニングなどに比べて、筋肥大がおこりずらいというメリットがあり、階級制その他体のバランスを崩さずにパフォーマンスを向上させたい選手にとってはおススメのトレーニング法となります。但し、プライオメトリクストレーニングを行う際にはある程度のテクニックが必要なことや強度(体にかかる負担)やボリューム(種目・回数・セット・頻度)をうまくコントロールしながら実施しなければならない為、無理はせずに、足首・膝・手首・肩、その他の関節に痛みが起こらない強度とボリュームでスタートするようにしましょう。

プライオメトリクストレーニングの一般的なボリュームとして、初心者は 50-80コンタクト(足が地面と接地する回数)から始め、80-100コンタクトに増やし、ある程度のレベルの選手は120-140コンタクト前後で行い、強度の高い種目を行う際には1回のセッションあたりで200コンタクトは超えないように注意をする必要があります。休息に関しては個人差もありますが、セッションの間は48-72時間程度とることを基本とし、チームの練習内容や自身の体調と相談しながら、負担のない範囲内で実施することをおススメします。

PS

東京オリンピック・男子バスケットボールも楽しみですが、女子の3×3では沖縄県出身選手の伊集選手の活躍にも期待です(^^)/

参考資料 
https://us.humankinetics.com  
George Davies, Bryan L. Riemann,FNATA,and Robert Manske. CURRENT CONCEPTS OF PLYOMETRIC EXERCISE. Int J Sports Phys Ther. 2015 Nov; 10(6): 760–786.
https://www.jpnsport.go.jp

#40 ウォーミングアップにおける3つのポイントが選手を大きく育てる!!

最近、指導の流れからウォーミングアップはどうしたら良いですか?とよく聞かれることがあります。

そして、私達も何がベストな方法だろうかと日々、模索しながら活動しているのですが、ウォーミングアップ対しての考え方をまとめてみたのでご紹介させて頂きます。

すばり、ウォーミングアップにおける3つのポイントとは!!

⇒ ルーチン(ルーティン)化に伴うリスクを頭にいれておく

⇒ 個に合わせて組み立てる

⇒ 適度にこだわる

ルーチン化に伴うリスクを頭にいれておく

冒頭で書いた通り、指導先でウォーミングアップを作成して頂けますか?と相談を受けることがあります。勿論、教育及び、情報共有として一通りのウォーミングアップをお伝えさせて頂きますが、あくまでも各エクササイズは方法論であって、必ず実施しなければならないものではありません。とお話をさせて頂きます。具体的には、“ワールズグレーティストストレッチ” https://youtu.be/TVItENA9mEAを紹介したからといって、その選手がその時に必要がないと判断した場合は行う必要はないですよと話します。勿論、ルーチン化することでうっかり忘れを未然に防いだり、エクササイズを学習している段階では覚えるのに効果的かもしれませんが、それと同時にウォーミングアップ本来の目的を忘れてしまうリスクがあることにも目を向ける必要があります。つまり、ウォーミングアップをすることが目的になってしまわないようにパフォーマンス向上の為に今何が必要なのかを常に考えて内容を組み立てる必要があるという考え方です。

個に合わせて組み立てる

これは文字通りの意味で、各選手の年齢・性別・性格・ポジション・可動域・柔軟性・スピード・パワー・筋力 etcは様々でそれぞれに合ったウォーミングアップがあるという発想です。チームスポーツの場合には、フォーメーションのすり合わせ等で全員一緒に行う方が良い内容もありますが、全員で行うことで逆に効率を下げてしまっている可能性もあるます。今現在なんとなく行っている(昔から実施している。それが良いと思い込んでいる。Etc)ものについて再度考え直してみると新しい発想が生まれるかもしれませんね!

適度にこだわる

これについては、ルーチンの話と関連があるのですが、ルーチンを決めてしまった時点で、ウォーミングアップに要する時間も決まってしまいます。しかしながら、現実はどうでしょう、前の試合時間や天候の影響で開始時刻が延びたり、ウォームアップエリアの混雑や渋滞の影響で予定よりも悪い環境下で準備をしなければならなかったり、想定外のことが起こり得る可能性があります。予定のルーチンを実行できなかったことでイライラが募ると試合に集中できる確率も下がります。すべてのことを完璧にこなすことよりも、与えられた環境の中で最低限必要なことに優先順位をつけ、それ以外に関しては適度にこだわるというスタンスも必要かもしれません。

理想のウォーミングアップとは?

その日の体調、天候、試合スケジュール(時間)等、与えられた環境は目まぐるしく変化します。

そんな中、自身の状態(コンディション)に合った最適なウォーミングアップについて自問自答し、実行できる選手は成長し続け、最終的に成功する確率が高まると思います。結局のところ理想のウォーミングアップは存在せず、その日のパフォーマンスが良ければ、それが結果的に良いウォーミングアップだったということになり、そのウォーミンアップが明日も使えるかどうかはわからないということです。

まとめ

ウォーミングアップには様々な考え方があって良いと思います。但し、それ自体が目的にならないことが重要で、教育や情報提供として様々な引き出しを与えつつも、方法論に囚われずに自分自身の目標や目的から逆算して、今やるべきことを明確にし、それを実行できる選手が育つ環境を整えることが指導者/コーチの果たすべき役割の一つだと感じる今日この頃です。

PS

今日は何々をしま~す。前回は15分、今回は10分あげるから自分でアップしてみて!(動けなかったら自己責任で。。)というアプローチを使ったりします。

勿論、色々な方法論は伝えた上でですが(^^;